『Music Factory Tokyo』スペシャルインタビュー
Flowerや乃木坂46、リトグリなど手掛ける人気作家・Carlos K.が語る“自身の原点”と音楽遍歴
「キックの音だけを聴くようにして、レイヤーを重ねて音作りに励んだ」
――その後、日本に戻って大学生活を再び始めるわけですが、ここでもまたバンドを組んだそうですね。
Carlos K:はい。今度はコンポーザー兼ボーカルとしてバンド活動をしつつ、一度離れていた宅録の環境を整え、DTMを始めるようになりました。元々はテクノやハウスを作っていたのですが、当時アルバイトをしていた飲食店にR&Bシンガーの女の子がいて、彼女に「音楽で食べていきたいならトラックメイカーになればいいじゃん」と言われたんです。ここで初めて“音楽作家”というものがあることを知り、当時ラッパーをやっていたその子の彼氏にトラックメイクをして、初めて自分の音楽でお金を貰いました。そこから口コミでどんどん広がって、レゲエのアーティストやR&Bシンガーからも依頼を頂けるようになったんです。自分の周りだけじゃなくて、ネットを通じてメールや電話で依頼が来るようにもなりました。
――楽曲制作はなにを参考に学びましたか?
Carlos K:最初は、ラッパー側から「こんな風に」とYouTubeのURLが送られてきたので、HIPHOP初心者ながらにそれを見て、サンプリングやトラックの作り方を覚えました。歌にはあまり取り組まなくなって、この頃はずっと作家活動に没頭していました。
――では、この頃はひたすらトラックを作っていた、と。
Carlos K:はい。この期間はかなりビートを研究していて、どうやったら太いビートが作れるのかを突き詰めていました。キックの音だけを聴くようにして、レイヤーを重ねて音作りに励んだことは、後のキャリアにすごく役立ちました。それがあったうえで、もともとクラシックやテクノ、ハウスやJ-POPが得意だったので、メロディを付けるにあたってこれらの音楽性をミックスしてみたら、思っていた以上に好評でした。この頃はバイトをしながらトラックメイクして、あとはストリートでバンド活動を行ってと、並行して色々なことをやっていました。
――プロとしての第一歩はどんな形で踏み出しましたか?
Carlos K:初めてコンペで通ったのは、『ヘルシアスパークリング』のCMですね。この時はフリーだったのですが、たまたま縁のあった他の作家事務所を介して決まりました。そこから遊助さんの『ミツバチ』に収録されている「今日の花」という曲で、初めてメジャーアーティストへ楽曲提供をすることができました。ちなみに、遊助さんには「ダチ」という曲も作らせて頂いたのですが、これはブラジルに居た時の経験を活かせるようなボッサ・サンバ風の楽曲で。この曲を収録したシングルの表題曲が「VIVA! Nossa Nossa」というブラジル人歌手のカバーだったので、何かの縁を感じましたね(笑)。また、同時並行でKyleeの「Everlasting」も決まって、この曲が『機動戦士ガンダムUC episode 2 赤い彗星』のエンディングテーマになったりと、好調な出だしだったと思います。
――遊助さんのお仕事に関しては、レゲエや民族音楽の経験が活きてきたと思うのですが、そこからJ-POP的なサウンドをより追求するようになったのは?
Carlos K:Kyleeの「Everlasting」が2010年だったので、早い段階でJ-POPのスイッチは入っていましたよ。板野友美さんの「Dear J」はダンスミュージックとしてカッコいいものを作ったつもりだし、そこからAKB48関係の楽曲もいただけるようになってと、徐々になんでも出来るようになっていったんです。アイドルソングに関しては、ライブに行って、ファンの盛り上がりをみたときに、「こういう感じなんだ、こういうところでみんなが盛り上がるんだ」と、現場の温度感や観客のノリが理解できました。そのうち、現場のノリに合わせて作るというイメージができるようになりましたね。
【後編】「人の気持ちに寄り添える音楽を作るために、自分の人生を豊かにする」 Carlos K.が制作において重要視していることとは?
(取材・文=中村拓海/写真=竹内洋平)