岡島紳士のアイドル最新マッピング 第17回 Maison book girl

プロデューサー・サクライケンタが語る、Maison book girlの音楽的仕掛け 「アイドルポップスとして成り立つギリギリをやりたい」

 

コショージがメンバーの中で一番ブクガの世界観を理解してくれている

コショージメグミ。

――歌詞についてですが、抽象的で、悲しみなどネガティブな気持ちを表現するものが多いですよね。

サクライ:自然体で書くとそうなります。なのでそれが僕の作る世界観なんだと思います。無理して書いてるわけじゃないので。

――具体的に言うと、基本的には「いなくなった少女や手が届かない少女」に対し「僕」が「孤独や絶望を思う」という世界観で統一されてるように思います。また「少女」「森」「煙」「ホテル」などがモチーフとして頻出します。「僕」はサクライさんですよね?

サクライ:はい、全部僕の視点だとは思います。

――そこはこだわりがあるんですか?立場を変えて書く人も多いと思うんですが。

サクライ:そんな器用なことはできないので、その時に書きたいことを書くだけです。外部に楽曲提供をする場合は考えるけど、自分がやってるグループに関しては、素直なことしか書きたくないというのがあって。

――自分の気持ちを女の子に歌わせることに意図はありますか?

サクライ:笑顔で踊って歌うとか、自分にできないことをやってくれるので。それにより、自分の表現したいことがメンバーの力で増幅できたらとは思います。おっさんの僕にはできないので。

――女の子に歌って貰うことによって、浄化されたり、救われるような気持ちにはなるんですか?

サクライ:それは全くないです。伝える媒介として彼女たちの存在があります。そして、それは必要不可欠だと思います。

――いずこねこ時代からの続きを感じさせる歌詞が多いように思いました。

サクライ:続きっていう意識をしてるわけではなくて、ただ自然に書いています。いずこねことブクガは違うものだと思っています。ただやりたいことをやってるというだけで。「snow irony」にいずこねこの「rainy irony」からの歌詞の引用はありますが、特に意図的な繋がりはないです。

maison book girl / snow irony / MV

――今年3月にライブ会場限定で「white」「black」という2種のシングルがリリースされました。収録されている4曲の音源は、今回のアルバムではどう変わりましたか?

サクライ:メンバーが1人変わっています。それと、ミックスとマスタリングをゼロからやっています。僕のミックスって、中低音域あたりが極端にないんですよね。そこを増やしたり、それと歌も前よりは一般的な、なじみやすいものになったかなと思います。

――ラストにポエトリーの曲「water」が入っています。

サクライ:アルバムとして通して聴いて欲しいというのがすごくあったので、節目のようなものを入れたかったんです。作詞はコショージが担当しました。先に歌詞を書いて貰ってメンバーの声を録って、それを僕が好きなように編集して、BGMをつける形で作りました。

――コショージさんが作詞することになったのは何故でしょうか。

サクライ:「作詞がしたい」って言われて「じゃあいいよ」っていう、それくらいのノリです。直しはほぼなかったですね。コショージはメンバーの中で一番ブクガの世界観的なものを理解してくれてる気がしますね。

地下アイドルの曲は、正直そんなに面白いと思っていないところがある

井上唯。

――独特な曲を作るサクライさんの立場から、アイドルポップス全体を見て思うことはありますか?

サクライ:AKBとかハロプロとか、メジャーな存在として確立されてるものは、それはそれで確立されていて良いと思うんですよ。ただそれより下の地下アイドルに関しては、正直そんなに面白いと思ってないところがあります。新しいグループもたくさん出て来てますけど、去年くらいから出てきたアイドルの中で、面白い音楽をやっていると思うアイドルは自分の中ではほぼいないですね。

――ブクガはアイドルでありたいんでしょうか?それともアイドルであることにこだわりはないんでしょうか?

サクライ:アイドルっていう括りで今はやってますけど、特にアイドルが好きじゃないっていう人でも気に入ってくれる音源だと思うので。そこに異常にこだわってるということではないですね。

――アイドルじゃなくなるかもしれないですか?

サクライ:それは神のみぞ知る、です。まだ分からないです。

――ブクガ以外にやりたいことはありまうすか?

サクライ:いつかですけど、もう1個くらいグループかソロのアイドルを作りたいなと思ってます。もちろん女の子です。男は面白くないじゃないですか。女の子にはこだわりはあるかもしれないですね。少女性というものが、自分の中で音楽と密接に結びついてる気がします。声が男だとなんか違う気がします。あと、彼女が欲しいですね!

――ちなみに好きな女性のタイプは?

サクライ:自由に答えていいですか? タイプは、新品ですね。

<次ページはメンバーからのコメント>

(撮影=竹内洋平)

■岡島紳士(おかじま・しんし)
1980年生まれ
アイドル専門ライター。著書、共著に「グループアイドル進化論」「AKB48最強考察」「アイドル10年史」「アイドル楽曲ディスクガイド」など。埼玉県主催「メディア/アイドルミュージアム」のメインアドバイザーを担当。アイドルカルチャーサイト&DVDマガジン「IDOL NEWSING」を手掛けている。
オフィシャルサイト(http://idolnewsing.com/
オフィシャルTwitter(https://twitter.com/ok_jm

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