東京弐拾伍時『TOKYO 25:00』インタビュー

東京弐拾伍時×DJ HAZIME座談会 DABO「時代や世代によってラップすべきことは違う」

DABO「時代や世代によってラップすべきことは違うと思うんだ」

 

HAZIME:「時間ヨ止マレ」に参加してもらったMUROくんに関しては、当初BACH LOGICとの共同プロデュースをお願いしていたんですよ。でも途中で「『時間ヨ止マレ』はこういう曲にしたいね」とみんなで話したときに、ここ数年の間でマキくん(キエるマキュウのMAKI THE MAGIC)が亡くなり、ヒロシちゃん(DJ HIROnyc)や、マンハッタンレコードの創業者である平川(雅夫)さんも亡くなって……「時間ヨ止マレ」は追悼の意を込めた曲にしたいということをMUROくんに伝えて。
 そうしたらMUROくんもラッパーとして曲に参加することになって、そのさなかにDEV LARGEが亡くなってしまって。MUROくんがスタジオに入るまで、どんなリリックになっているかわからなかったけど、レコーディングが始まったらDEV LARGEに対するヴァースになっていたんですよ。

――「時間ヨ止マレ」こそ、今のみなさんだからこそラップできる内容になっていると感じました。一緒にシーンで切磋琢磨してきた先輩や仲間が逝去するという出来事も増えてきたと思うのですが。各々どんな思いでこの曲を?

S-WORD:年を重ねるに連れて、こういう出来事に直面することも増えてきてるのは確かだよね。亡くなった人たちが作り上げてきたものは、僕らのなかではすごく熱いものとして残っているけど、世の中にその事実に触れていない人たちもたくさんいる。それは、残っている人間ができる限り伝えていかなきゃっいけないし、それが生きている間にしかできないことだと思う。

MACKA-CHIN:トラックを聴いてインスピレーションを頼りにペンを進ませるというスタイルとは違い、事前にテーマが決まっていて、すごく大切に言葉を磨いて作る曲だったから、すごく難しかった。
 音楽、特にヒップホップは生モノだと思っていて、等身大の今現在の自分を落とし込む音楽だと思うんですよ。俺たちはもうリアルに40歳だし、その40の人間が思う等身大のカテゴリのひとつとして〈生と死〉が存在する。長く生きている人たちにとっては、自然と出てくるトピックになったのかもしれませんね。

SUIKEN:僕の場合、東日本大震災が起こって、その後すぐに嫁の妊娠がわかった。世の中不安だらけの中、子供は無事に産まれてきてくれた。そんな喜んでいる時に母親が亡くなってね。しかも嫁が産後に心不全で危ない状況で入院したり、もういろいろありすぎてね。人の生死に関して。

MACKA-CHIN:ちなみにこの曲のMUROさんの「天まで飛ばそう、そう、そう……」ってリリックは、BUDDHA BRAND「人間発電所」のDEV LARGEの“人力ディレイ”のオマージュで、HAZIMEがMUROくんに「そこも再現しましょう」ってお願いしたエピソードもあります。

――なるほど。それぞれ、NITRO MICHROPHONE UNDERGROUNDとしてデビューしたのが1998年で、当時から17年が経過しているわけですが、「時間ヨ止マレ」然り、かつてニトロとしてラップしてきた内容と今作とでは、全体の質感がまったく異なると感じました。いうなれば、大人の男性のラップがこれなのか、と。そういう世代感は意識されましたか?

DABO:基本的に今回のアルバムはそんな感じかな。でも、それは4人とも無意識に出ちゃったんだと思う。今回の企画に関して、HAZIMEは本当に何も考えてないらしいの。だから、作品に伴う意味付けは俺たちが勝手に付けていった感じとも言える。

S-WORD:ようやく日本語ラップの歴史に厚みが出てきて、上は50歳くらいの人たちも現役で残っている。サウンド面に関しても、昔の焼き直しをしても、当時を知っている人がいれば、昔を知らずに今、初めて知るリスナーもいるし、日本語ラップもやっとここまでたどり着いたのかなって思いますね。

DABO:「この気持ちを曲にしたことないな」という作品が録れた、という感覚はある。3.11の震災時には、「エンジョイしようぜ!」みたいなラップには気持ちが着いていけなかった。考えることも増え、楽しんでいるだけじゃダメなんだと思うこともあって、「今、聴きたいのはこういうんじゃないんだよな」みたいな。そういう心境の変化もあるよね。つまり、時代や世代によってラップすべきことは違うと思うんだ。

関連記事