「宗像明将の現場批評〜Particular Sight Seeing」第16回『バンドじゃないもん! ワンマンライブ Vol.4「カサナルイズム!カナデルリズム!~君の笑顔で世界がやばい編~」』

バンドじゃないもん!が内包する強烈なスリルとは? Zeppワンマン徹底レポート

 

 「アンコールいくぞ!」という掛け声が2階席にまで聴こえた。TO(トップオタの意)の女の子の声だ。

 アンコールは衣装を替えての「プリズム☆リズム」と、イントロがライブ仕様に変更された「ツナガル!カナデル!MUSIC」。「ツナガル!カナデル!MUSIC」はインディーズになってからのシングルだが、オリコン週間シングルランキングで14位を獲得した楽曲でもあり、同時に歌割りも含めて完璧なポップスだ。

 

 アンコールが終わると、「ゼップダイバーシティいくぞ!」と再びTOの女の子の声がした。その場のファンのそれぞれの思いが響くかのように再びアンコールが叫ばれた。

 2度目のアンコールは、再び衣装を替えての「君の笑顔で世界がやばい」。みさこはMCで「もっと上に行きたい」と明言した。サビで激しく動かされるもんスターたちの手がコマ送りのように見えて、不思議な感覚で眺めていた。

 バンドじゃないもん!が全員でバンド演奏をしたとき、「ああ、これではそこらのロックバンドは勝てない」とすら思った。凡庸なロックバンドが「『ロック』しましょう」などと言うときほど鼻白むものはない。先日発売された「宝島AGES」No.3では、BELLRING少女ハートのディレクターの田中紘治が「ロックの若いバンドやシンガーはプライドで整理させるけど、アイドルは整理しない」と指摘し、だからこそロックなフィーリングが出るのではないか、という主旨の発言をしている。これは示唆に富んだ重要な発言だ。

 アイドルという形式の「拘束」と、その拘束の外部に生まれるフィーリング。Zepp DiverCity Tokyoでのバンドじゃないもん!は、特殊な編成を最大限に活用して、独自のスリルを生み出していた。それは、みさこが神聖かまってちゃんという、いまだに「危うさ」を持ち続けているロックバンドのメンバーであることとも関係しているかもしれない。また、バンドじゃないもん!が4年間の活動を経て集めた現在の6人のメンバーの、その個性の絶妙なバランスの上に成立しているスリルなのかもしれない。

 

 現在のバンドじゃないもん!は、強烈なスリルを内包しているアイドルグループなのだ。それをわかりやすく「ロック」だ、と言い換えても別にいいかもしれない。

 2011年に初めてバンドじゃないもん!を見てから4年以上が経つが、数々のライブを振り返ってもなおZepp DiverCity Tokyoは「過去最高のライブだった」と断言できるものだった。100点満点で言えば98点を献上するレベルだ。今後は「100点」だと言わざるをえなくなるようなライブを見せてくれることを楽しみにしたい。おそらく、その日は遠からず来るはずだ。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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