Alfred Beach Sandalと王舟が2マンライブで披露した、鮮烈なバンドアンサンブル

 

 そして、王舟のMCは、この日もいつもどおり飄々としていた。何の脈絡もなく「JR止まったそうですね、大丈夫でした?」と急に観客へ問いかけると、客席は肯定も否定もせずにただ笑い声だけが響く。字面で見ると一見冷たいように思えるが、このゆるい繋がりが彼らと観客の良い関係性で、場所が変われど、会場の空気は彼らが初めて共演した八丁堀・七針と対して変わらないと感じさせた。

 後半は、潮田と2人で弾き語ったピーター・ポールアンドマリー「500 miles」のカバーから、7インチシングルの表題曲「Ward」を披露し、そこから彼の代表曲である「Thailand」へ。音源では王舟が伸びやかに歌っている同曲だが、バンドアンサンブルの勢いに合わせ、彼の歌もエモーショナルなものへと変化していた。そして最後はABSがカバーした際に出来たフレーズを王舟がアルバムの音源に使ったというファンク調の「瞬間」を披露し、ステージを後にした。

 

 その後登場したABSは、初夏にピッタリな爽やかさを纏った「Coke, Summertime」、「Dynamo Cycle」「Night Bazaar」を立て続けに演奏。コントラバスを持った大男・岩見継吾(コントラバス・ベース/ex. ミドリ、Zycos、Oncenth Trioなど)と、光永渉(ドラム/チムニィ、ランタンパレード、ceroなど)の緻密なドラム捌きによるアンサンブルは、先日のインタビューでABSこと北里彰久が「この3人だから完成している空気感がある」と述べたように、見るごとにその一体感が強まっているように思えた。「Rainbow」の最後で鳴らす口笛も、それぞれが長く鳴らそうとして観客を笑わせたりと、共有している独特なノリもあり、もはやサポートという概念では括れないものになっていることがわかる。(参考:【特別対談】Alfred Beach Sandalと王舟が語り合うソロ活動のスタンス 「自然に開けていたら一番いいなと思う」

 「殺し屋たち」が終わった後のMCで、北里は「王舟と知り合って6年くらいだけど、当時は阿佐ヶ谷にあった居酒屋『めんそーれ』(現在は閉店)で、ひどい時は週5で飲みながら実のない話をしてた。そういう『めんそーれ』での2マンがQUATTROでの2マンになりました」と感慨深げに語ったあと、照れ隠しのように「王舟はデリカシーがないから普段こういうことは絶対言わないんですけど」とメッセージを送り、「ビールの王冠」と三拍子のバラード調の新曲を演奏した。

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