『POKER FACE vol.2』インタビュー
アイドルとファッションの接点はどこにある? 新感覚のスタイルブック『POKER FACE』の挑戦
女性アーティストが毎週登場し、スタイリッシュな写真や読み応えのあるインタビュー記事などが楽しめるポートフォリオアプリ『POKER FACE』から生まれたスタイルブック『POKER FACE Vol.2』が、シンコーミュージック・エンタテイメントより4月15日に発売された。同ムックには、アイドルや女性アーティストが各ページに合わせた衣装を着て登場し、普段とは異なる表情を見せている。
昨年12月に発売された『POKER FACE Vol.1』では、乃木坂46の若月佑美を表紙に迎え、Berryz工房(現在は無期限活動休止中)の菅谷梨沙子、PASSPO☆の増井みおなどが登場。今回はHKT48の穴井千尋・兒玉 遥が表紙となり、沙田瑞紀(ねごと)、PORIN&ユキエ(Awesome City Club)、三戸なつめ、トミタ栞といったアイドルシーン以外の女性アーティストも出演。また、X-girlやRNA、WEGOといった人気ブランドのアイテムを使用し、前号よりさらにファッション色を濃くしていることも特徴だ。数々のアイドルコンテンツが生み出されているいま、同ムックはどんな狙いで編まれたのか。編集を手がけた上野拓朗氏に話を聞いた。
「海外ティーンアイドル誌を作って、アイドルとファッションという切り口に気付いた」
ーーもともとこの本はアプリの『POKER FACE』から生まれたとのことですが、なにがきっかけでこういうコンテンツを作ろうと思ったのですか。
上野:僕はもともと音楽雑誌の編集からキャリアをスタートしていて、『Rolling Stone日本版』などを制作していたのですが、2010年頃にたまたま『DC STARS』というディズニー・チャンネル スターズの公式ムックを作ることになったんです。その本ではマイリー・サイラスとか、セレーナ・ゴメスといった海外のティーンアイドルを特集していて、海外ドラマが好きな同世代の女の子にいかに読んでもらえるかを意識して作りました。たとえば海外ドラマで出てくるような衣装の世界を日本で販売している服で表現したら、どんなスタイリングになるかとか、メイクならどうなるかとか、そういうディティールについて、女性スタッフを交えて作りこんでいったんですね。それがまず体験としてあって、その後しばらくしてから、今度は『Rolling Stone日本版』でSUPER☆GiRLSを取材することになって。僕は洋楽畑の人間なので、アイドルのページを作れるかはわからなかったのですが、『DC STARS』を作った経験があったので、ともかくそれと同じ方向性で作ってみようと、「なりきりケイティ・ペリー」みたいな企画を立てて海外誌の雰囲気で撮りおろしをしてみたんです。そしたらそれに彼女たちがすごく喜んでくれて、本人たちが楽しんでくれたからか、読者の評判もよかった。そこで「こういう喜ばれ方もあるんだ」と気付いて、何かテーマを決めてアイドルの着せ込みをするという切り口を思いつきました
ーーなるほど、海外のティーンアイドル雑誌の延長線上で新しい切り口に気付いたと。それをアプリで展開しようと思ったのはなぜでしょう。
上野:SUPER☆GiRLSのページは、本人たちも喜んでくれたし、ファンの方にも買っていただけたんですけど、当然それ以上の広がりはなかったんですね。内容としては女の子向けのコンテンツに寄っているけど、SUPER☆GiRLSと同世代の女の子には届かなかった。じゃあ、どうやって裾野を広げるか考えたときに、アプリという形ならもっと広く伝わるんじゃないかと思ったんです。それで2012年くらいからそのアイデアを色んな人に話すなかで、たまたまいまの会社の社長が「面白そうだから、まずはビジネスではなく趣味がてら始めてみたら」と、声をかけてくれたんです。その後、コンセプトを「女性アーティストのスタイリッシュな撮りおろし写真とインタビューをアプリで見てもらう」とシンプルに固めて、2014年からスタートしました。マネタイズに関しては、『Rolling Stone日本版』での一連のアイドルの取材を通して、ファッションが得意なカメラマンに他では見れないような写真を撮ってもらえば、出演してくれるアーティストさんも喜んでくれるし、ファンの方もそこにお金を払っていただけることがわかったので、200~300円ならアプリでも“写真とインタビュー”を買っていただけるだろうと思いました。でも、これが見事に撃沈して(笑)。アプリ自体も潤沢な予算があるわけでもないし、プロモーションをバンバンできるわけでもなかったので、とにかく全然ダメだったんですよ。ただ、まったくあきらめるつもりはなくて。
ーー次の一手を打ったと。
上野:はい。前に編集を務めていた『CROSSBEAT』の元編集長に話をして、このアプリを書籍化できないか相談したんです。そうしたら「じゃあ、うちから出してみたら」と言ってくださって。あくまでもアプリの販促のための本、という位置付けにすることによって会社からもOKが出ました。それで『POKER FACE Vol.1』を作ることになったんです。『Rolling Stone日本版』での体験をさらに発展させて、これまでの音楽雑誌の編集のスキルを活かしつつ、かっこいい写真とインタビューで構成して、アーティストブックっぽい仕上がりをイメージしたんです。たくさんのアイドルの方に登場していただいて、結果としてはそれなりに話題になりました。しかし、やはりファン層以外までは届かなかった。