東方神起、東京ドーム公演で披露した10年の集大成 7万5000人のファンと再会誓う
恒例となった中盤のロングMCでは、どぶろっくの「もしかしてだけど」や、8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」など、日本のギャグを織り交ぜた軽妙なトークで観客を笑顔に。この日はチャンミンが「Forever Love」を一節歌う場面もあった。
その後は、「Calling」「Duet」「どうして君を好きになってしまったんだろう?」「Chandelier」とタイプの異なるバラードを次々に歌い、女性ファンを酔わせていく。特に、帰る場所を見つけた喜びと幸せを歌った「Chandelier」での2人の歌唱は実にエモーショナル。星空のようなステージから放射される極細の多彩なレーザーライトが温かくも切ない曲の世界観を助長する幻想的な空間を作り出していた。
終盤の「Humanoids」からはアップナンバーの連続。テーマは “パーティールーム、東京ドームへようこそ!”といった感じだ。「Break up the shell」では2人がトロッコに乗り込み、客席にカラーボールやフリスビーを投げ入れながら周回。「High Time」では2人の衣装と色を揃えたカラーテープが噴射され、「I just can‘t quit myself」では93人のダンサーが登場し、ステージを華やかに盛り上げる。そうして会場の熱気と一体感が高まったところで間髪入れず、東方神起史上最大規模のスケールを誇る壮大なバラード「Love in the Ice」を絶唱。前曲とのギャップで静けさが際立つ会場の隅々にまで、新たに織りなされた美しいコーラスが響き渡った。
その後のバンド/ダンサー紹介パートは、普段あまり見ることのできないバックステージにカメラが潜入。2人が楽屋通路を歩きながら、歌いながら、メンバー名を呼ぶと、そのメンバーが本ステージで演奏/踊るという構成で、そのときの演奏曲は、「Catch Me ?If you wanna-」「SURI SURI[Spellbound]」「One More Thing」「Sweat」「呪文 ?MIROTIC-」のスペシャルメドレーという、2人のサービス精神が伺える粋な演出になっていた。
本編を締めくくる「MAXIMUM」「Rising Sun」は、剛勇で華美でアグレッシブ。特に20本もの火柱が吹き上がった「Rising Sun」は映画のワンシーンを見ているかのような大迫力のスペクタクル。壮絶・圧巻のパフォーマンスだった。
アンコールでは、「今の2人にも当てはまる物語だと思います」というチャンミンの言葉から最新シングル「サクラミチ」を披露。続けて「With Love」のイントロが流れると、光るリストバンドによって「TOHOSHINKI 10YEARS」という大きな文字がスタンド客席後方に浮かび上がり、正面スクリーンには10周年を祝福&応援するファンやスタッフからのメッセージと写真が次々に投影された。このサプライズに感極まったユンホは歌いながら大粒の涙を流し、その姿を見たファンも涙。歌い終わり、顔を手で覆って号泣するユンホの肩をやさしく抱き寄せたチャンミンの目にも涙が光っていた。
一呼吸置き「今日は本当に幸せでした」と切り出したユンホ。その後、彼の口からはこの日の観客が予想しながらも耳にしたくなかった言葉が続く。「このことをいつ言うか悩んでいたんですが、単独ライブツアーではしばらくみなさんと会えなくなります。でもすぐに2人で戻ってくるから、元気で待っていてください。僕が『ただいま』と言ったら『おかえり』と言ってください」と思いを告げると、悲鳴にも似た絶叫が会場のあちこちから上がった。だが、ユンホはその悲鳴を遮るように、自分の立っている足下を指さし、「必ずここで会いましょう!約束だからね」と笑顔で指切りポーズの手を高く突き上げた。
続けてチャンミンも「またここ、東京ドームで再会できたら嬉しいです」とメッセージ。「みなさんに巡り会えたことが僕の人生でいちばん大切なプレゼントです」と、10年間を支えてきたファンとスタッフに心からの感謝を述べると、会場から温かい拍手が送られた。
この日はファイナルということで、トリプルアンコールに応えて「時ヲ止メテ」を特別に披露。胸につかえていた思いをはき出せたこともあるのだろう。目の前に広がるこの場所、この空気、この瞬間を噛みしめながら、どこか安らいだ雰囲気で歌う2人の表情が印象的だった。
東方神起とファン、両者の胸にこみ上げる10年間の感謝と惜別の念が入り交じり、感動以上の何かが会場をつつんだこの日の夜。ステージの去り際に、ユンホがとてもやわらかな表情で、しかし決意を感じさせるトーンで放った言葉「また会いましょう」。いつか「おかえり」と言える日をファンは待っている。
(文=猪又孝(DO THE MONKEY))