GLIM SPANKY・松尾レミの歌がクリエイターに注目される理由は? ドラマプロデューサーが分析
忌野清志郎やチバユウスケ(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、The Birthday)、越智志帆(Superfly)などのように、一度聴いただけで印象に残る歌声を持つボーカリストがいる。そんな系譜を受け継いでいると感じさせるのが、GLIM SPANKYのボーカル・松尾レミだ。
GLIM SPANKYは、2007年に結成された松尾レミ(Vo、Gu)と亀本寛貴(Gu)によるロックユニット。2014年6月にミニアルバム『焦燥』でメジャーデビューし、ロックとブルースを基調とした楽曲でオーセンティック・ロックの旗手として音楽シーンで注目を集めている。そのボーカルの松尾は「ジャニス・ジョプリンの再来」「10年に1人の歌声」と称される強烈な歌声の持ち主。正月に放送されていた箱根駅伝を観ていた方も多いと思うが、そのCM中大量にO.A.されていた「SUZUKIワゴンRスティングレー」のCMで流れていたジャニス・ジョプリンの「MOVE OVER」を歌っていたのが彼女だ。
他にも、栗山千明が出演していた「AEON MALL FES! GW」や「AEON MALL 2014 秋」のCMソングを歌ったこともある彼女。そのしゃがれた、どこか影のある色気を持つ歌声に、様々なクリエイターが注目しているようだ。現在では毎週月曜日の深夜にO.A.されているテレビ東京系ドラマ「太鼓持ちの達人 ~正しい××のほめ方~」の主題歌にGLIM SPANKYの「褒めろよ」が起用されている。前述のドラマの主題歌にGLIM SPANKYを起用したプロデューサーの濱谷晃一氏は、松尾の歌唱が多くのCM曲に起用されている理由をこのように語る。
「誰ともかぶらない、あの力強くて切迫感のある歌声がとても耳に残りやすいことがCM起用の理由ではないでしょうか。同時に何か退廃的で反骨的な危うさも共存していると感じています。それはウッドストックのころのロックがそうだったように。60~70年代のロックへのリスペクトを持った若い女性ボーカルというのは僕らより上の世代にとっては懐かしく好感が持てますし、若い世代にとっても新鮮に感じるのではないかなと思います」
ジャニス・ジョプリンが好きな同氏は、CMで流れていた「MOVE OVER」のカバーを聞いて松尾の声に痺れたという。それをきっかけに他の楽曲やPVも観て松尾の媚びないちょっとミステリアスな雰囲気が「夢は夜ひらく」のころの藤圭子のように感じたとも語っていた。
一方、ポップさや聞き馴染みの良さを追い求めるJ-POPシーンの中で、かなり異色の存在であることも確かだ。濱谷氏も「今のJ-POPのヒットに必要であろう、キラキラ感や前向き感とGLIM SPANKYがどうやって折り合いをつけていくのか非常に興味があります。ただ単に古き良きロックをトレースする方向に走っても、きっと多くの若者には届かないだろうし、かといってGLIM SPANKYらしさを消してしまうと意味がない」と問題提起する。ただ、「古き良きロックと、現代の音楽シーンを掛け合わせた、新しいジャンルになればいいなと思います。松尾さんの誰ともかぶらない歌声は、それを可能にする大きな武器だと思います」とコメントした。
その期待値も込めて、濱谷氏はGLIM SPANKYにドラマ主題歌のオファーをしたのかもしれない。ドラマは「褒める」という処世術をテーマにした内容であるが、そのテーマに縛られず出来上がったのが「褒めろよ」という楽曲だ。
「疾走感があるメロディーに、力強い松尾さんのボーカルの魅力が凝縮され、本当に素晴らしい楽曲に仕上がったと思います。歌詞には“褒める”という行為の向こう側にある、自分の譲れない部分や野望が描かれており、“褒める”というドラマのテーマをGLIM SPANKYというフィルターで鮮やかに変換してくれた。GLIM SPANKYらしさは残しつつも、その殻を突き破る痛快な曲になったと思います」(濱谷氏)
まずは『褒めろよ』で、松尾レミの唯一無二の歌声に触れていただきたい。
(文=高木智史)
■リリース情報
『褒めろよ』
発売:2月18日
TYCT-30040 ¥1,300(税抜)
01. 褒めろよ
02. サンライズジャーニー
03. 踊りに行こうぜ
04. MOVE OVER
05. 夜が明けたら ※iTunes限定ボーナストラック
■ライブ情報
「『褒めろよ』 発売記念インストアイベント」
2月20日(金) タワーレコード新宿店
2月28日(土) タワーレコード難波店
3月1日(日) タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
※アコースティックライブは観覧無料
「『褒めろよ』リリースツアー」
3月8日(日) 宮城・仙台enn3rd
3月14日(土) 大阪・梅田シャングリラ
3月15日(日) 愛知・池下CLUB UPSET
「『褒めろよ』リリースツアーファイナルワンマン“Velvet Theater in 東京キネマ倶楽部”」
5月17日(日) 東京キネマ倶楽部
■オフィシャルHP
http://www.glimspanky.com/