1月3日、4日『新春日本武道館公演』レポート

エレファントカシマシ新春武道館ライヴに見た、新しき音楽世界

 

 その一方で、ユニバーサル移籍以来の傾向であるストリングスを加えたスケールの大きな楽曲たちも近年のエレカシの大きな特徴となっている。「笑顔の未来へ」「新しい季節へキミと」「桜の花、舞い上がる道を」等、プロデューサー・アレンジャーの亀田誠治や蔦谷との共同作業から生み出された楽曲たちは新しいエレカシのスタンダード・ナンバーとなっただけでなく、宮本の生み出す楽曲の方向性にも大きな影響を及ぼした。その後も「明日への記憶」「彼女は買い物の帰り道」、ストリングスは入っていないものの壮大なテーマと曲調の「大地のシンフォニー」といった曲にその傾向が顕著となっている。このように曲のタイプが明確に分かれてきているのが現在のエレカシの姿といえる。

 新春の武道館ライヴでも、おなじみの金原千恵子ストリングスチームが参加して多くの楽曲で彩りを加えていたが、驚かされたのが「なからん」(仮)に続き演奏された新曲「雨の日も」(仮)だ。この曲ではストリングスがド迫力な音の塊となり、おどろおどろしい音像となって武道館中を包み込んだ。不穏な空気すら感じさせるスローな演奏の中で延々と絶叫する宮本。これまで楽曲にポップネスを与えるヴェール的な役割を果たしてきたストリングスの新しい使い方、そしてすべてはハッキリと聴き取れなかったものの、宮本らしい内省的な思想を突き詰めたような歌詞の世界が結びついたプログレッシヴな楽曲に圧倒されてしまった。『生活』(1990年の4thアルバム)meets『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』(2010年の20thアルバム)といった感触だろうか。

 こうした曲が生まれた背景には休養明け以降の宮本のボーカルの調子の良さも影響しているのではないだろうか。この日も声の出かたは絶好調だっただけに、より声の伸びを活かしたこれまでにない楽曲がどんどん生み出されているのかもしれない。旧来の叩きつけるようなギター・ロックとストリングスが融合した楽曲で新しい世界を垣間見せてくれたエレカシ。今年リリースが期待される2012年以来のオリジナル・スタジオアルバムでどんな楽曲を聴かせてくれるのか、今から待ち遠しい。

(文=岡本貴之/写真=岡田貴之)

■セットリスト
2015年1月4日(日)@日本武道館

・第一部
1.夢のちまた
2.DEAD OR LIVE
3.ココロのままに
4.今はここが真ん中さ!
5.悲しみの果て
6.デーデ
7.おかみさん
8.風に吹かれて
9.精神暗黒街
10.ジョニーの彷徨
11.真冬のロマンチック
12.リッスントゥザミュージック
13.昔の侍
14.普通の日々
15.明日への記憶
16.あなたへ
17.赤い薔薇
18.今宵の月のように
19.I don’t know たゆまずに
20.赤き空よ!
21.ズレてる方がいい
22.俺たちの明日

第2部

23.大地のシンフォニー
24.Destiny
25.桜の花、舞い上がる道を
26.(仮)なからん(新曲)
27.(仮)雨の日も(新曲)
28.明日を行け
29.新しい季節へキミと
30.FLYER
31.ガストロンジャー
32.ファイティングマン

アンコール
33.平成理想主義
34.笑顔の未来へ
35.ハナウタ ~遠い昔からの物語~
36.涙

Wアンコール
37.待つ男

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