「今後も絶対になくならないボーカルテクニック」 亀田誠治とゴスペラーズが“ビブラート”を語る

 音楽プロデューサーの亀田誠治がJ-POPのヒット曲を分析するテレビ番組『亀田音楽専門学校 SEASON 2』(NHK Eテレ)。11月20日放送分では、ゲストのゴスペラーズとともに「揺れる心のビブラート」と題して、ハーモニーをテーマに講義を行った。

 冒頭、亀田は「ビブラート=声を震わせるテクニック」について「声を震わせるだけがビブラートじゃない。音程が外れていない聴こえ方で、声を一定の周期で振るわせることができていないと、ビブラートとは言えない」とした。続けて亀田は、ビブラートは「歌がうまく聴こえるテクニック」の一環だとし、「声の振れ幅が感情の振れ幅として伝わる」と、感情を込めて歌っていることを伝えるための技術の一環だとした。

「ビブラートは日本人独特の湿り気を出すテクニック」

 まず、亀田とゴスペラーズは、様々なJ-POPの名曲を使ってビブラートの魅力を検証。クレイジーケンバンドの「タイガー&ドラゴン」では、横山剣が“深いビブラートと浅いビブラート”を使い分けていること、内山田洋とクール・ファイブの「長崎は今日も雨だった」は“嗚咽のような深いビブラート”が魅力になっていること、JUJUの「やさしさで溢れるように」は“抑制を効かせたビブラート”が要所で使われていると紹介した。
 
 さらに、ゴスペラーズ・北山陽一が坂本九「上を向いて歩こう」について「坂本九さんの声にはビブラートが内蔵されていて、今だと『震え過ぎ』って矯正されていたかもしれないくらいの声質」と語ると、ゴスペラーズ・村上てつやは「ビブラートがないと、あまりにも明るい声すぎただろうし、この震えによって影の部分ができている」と続けた。先達の歌謡曲を振り返った亀田は「ビブラートは演歌や民謡から受け継がれた、日本人独特の湿り気を出すテクニック」と、日本におけるビブラートは海外のものと違った進化を遂げていると明かした。

「ビブラートで感情を表現できるのは声だけではない」

 番組中盤では、亀田が「ビブラートで感情を表現できるのは声だけではなく、楽器も同じこと」とし、椎名林檎の「本能」を題材にイントロのベースでビブラートのあり/なしを表現。弦楽器で弦を揺らしながら弾くこともまたビブラートと呼ばれるものであり、楽曲においても歌と同じく、感情の揺れ動きをわかりやすく伝える効果をもたらしていると語った。

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