円堂都司昭の新曲「GOLDEN GIRL」レビュー

いきものがかり新曲はなぜ「君」が主人公なのか “歌の共有”めざす創作スタンスを分析

 また、「熱情のスペクトラム」(水野作。一人称は「僕」)はアニメ「七つの大罪」のテーマ曲ということでドラマチックな歌謡ロックに仕上げた一方、「涙がきえるなら」(吉岡・山下作詞、吉岡・水野作曲。一人称は「僕」)は、「NEWS23」というニュース番組のエンディング・テーマにふさわしく優しく包容力のあるバラードになっており、両A面で別の顔をみせた。「熱情のスペクトラム」を聴くと、特に声を作っているわけではないものの、吉岡の歌う「僕は~」から、女性声優の演じる少年のような勇気と躍動が感じられた。

 そして、「君」を見守り応援する「GOLDEN GIRL」である。今回のシングルには、カップリングでDREAMS COME TRUE「未来予想図II」のカヴァーが収録されている(このカヴァーはトリビュート盤『私とドリカム-DREAMS COME TRUE 25th ANNIVERSARY BEST COVERS』にも収録されていた)。それを聴くと、女性性や個人性が濃厚な吉田美和のオリジナルに対し、吉岡聖恵は自分の情念をぶつけるのではなく、もっとニュートラルな歌の共有を志向している印象を受ける。2人のヴォーカリストとしての体質の違いが感じられて面白い。

 いきものがかりは、『I』で再確認した彼らのやりかたによる、みんなが共有できる歌をその後も着実に作り続けてきた。12月24日には一連のシングル曲を収録したニュー・アルバム『FUN! FUN! FANFARE!』が発表され、2015年にはメジャーデビュー10年目幕開けの全国ツアーが行われる。今後、3人がさらに歌の世界をどのように広げていくのか、興味はつきない。

■円堂都司昭
文芸・音楽評論家。著書に『エンタメ小説進化論』(講談社)、『ディズニーの隣の風景』(原書房)、『ソーシャル化する音楽』(青土社)など。

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