ソロ活動20周年・ベストアルバム3部作インタビュー(後編)
TOWA TEIが語るポップの定義「ほんの一瞬でもテイ・トウワっぽさが耳に残るようにしたい」
「<テイ・トウワ印>を押せそうなものが、手際よくできるようになってきた」
ーーそれがテイさんのポップの定義。
テイ・トウワ:うん。“ポップ・アップ”というか。昔そういうのを(海外では)ファンクって言ってたらしいですね。耳にひっかかること。
ーーその「ひっかかるポイント」は、別にメロディでもいいしリズムでもいいしフレーズでもいいし音色でもいい、なんでもいい。
テイ・トウワ:そうです。そのセットというかミックスというか。ダブ処理かもしれない。でもダブ処理にしても、その元となる音楽が良質じゃないとつまらないですよね。
ーーリミックスがいくら良くても原曲がつまらないと意味がない、のと同じですね。
テイ・トウワ:そうそう。昔はよく頼まれましたよ。箸も棒にもかからないようなつまらない曲を、どうにかしてリミックスでクラブ・チャートに入れてくれ、って(笑)。お金ならいくらでも出しますから、って(笑)。こりゃできないよ無理ですよ、みたいな(笑)。
ーー昔エイフェックス・ツインにインタビューした時、リミックスを引き受ける時の基準は何か尋ねたら、良い曲はいじらない方がいいからやらない、ダメな曲をリミックスで聴けるものにするのが面白いんだ、みたいなことを言ってました。
テイ・トウワ:ああ、それもあるかもしれないなあ。
ーーま、それはたぶん冗談で言ってたと思うんですけど(笑)。
テイ・トウワ:でも、やっぱりマルチ開けた時に“ひでえなあ”っていうのは関わりたくないですよ(笑)。関わりを持ちたくない。苦手な人と仕事したくないって心理と同じですよ。音の場合顕著で、空気の振動ですからね。ヴァイブですからね。”なんでもいいから金なら出すんで、とにかく売れるものにしてくれ”みたいな悪いヴァイブに関わったらまずいんですよ。
ーーなんでもかんでもやってる人っていますけどね。
テイ・トウワ:そういうのって…なんか患ったりするんじゃないですか(笑)。
ーー確かにそれで才能が浪費されていくっていうのはあるかも。
テイ・トウワ:だから…ブームになっちゃうとみんな持ち上げるし、猫も杓子も。誰々ミックス誰々プロデュースがもてはやされて、あっという間に飽きられて忘れられちゃう。最近はそういう感じのヴァイブは世の中からなくなったんで良かったですけどね。誰がリミックスしようが誰がプロデュースしようが、そもそもCD売れねえや、みたいな(笑)。そんな時代になってるんで。
ーーさっきテイさんは、自分が自然に作ると暗いものになる、とおっしゃってましたよね。それと、耳に残るようなポップなものを、という考えはどうやって折り合いをつけてるんでしょうか。
テイ・トウワ:ソロになってから20年やってきて7枚のアルバムを出してきて、それとは別にSweet Robots名義で出しましたよね。あれを出したとき、本名のテイ・トウワ名義から離れて自由にやりたいという気持ちがあったんです。この気持ちの変化に今までのファンはついてこられないかもな、っていう時にSweet Robotsの名前を使ったんですけど、今やどれも一緒というか。全部テイ・トウワでいい気がするんですよ。ただ人に聞かせるものだし耳に入れるものだから、音響公害にはしたくないというか.
ーーつまりナチュラルに出来てくるものは、そのままでは人に聞かせるようなものにはならないということですか。
テイ・トウワ:いや、今はなりますよ(笑)。20年もやってると、ある程度はね。最近ようやく自信が持てたというか。僕は何もないところから次々と新しいものを作れるような才能はないから、作曲にしてもリミックスひとつにしても長い時間をかけてやってたんですけど、最近は短い時間でできるようになってきた。自分なりの<テイ・トウワ印>を押せそうなものが、手際よくできるようになってきたんですよ。それは長く経験を積んで続けてきたことで出来てきた自信だと思いますね。
ーーツボがわかってきた、ということですか。
テイ・トウワ:わかったようでいて、そのツボを繰り返したくないから、時間がかかるんですけどね。まったく同じことはやりたくないから。でもまあ…なんとかここまでやれてきて。感謝の気持ちで一杯なんですけど、これからはよりわがままになって、より仕事を選んでいこうかと。
ーーでも今回のベスト盤を聞かせていただいて、古いものも新しいものもまったく違和感がないですね。曲順は時系列逆に並んでますけど、まったく気にならなかった。一貫したものがあるんだなと。
テイ・トウワ:嬉しいなあ。僕もそう思ったんで、そうしました。もともとDJなんでね、曲順考え出したらキリがないというか、どうにでもなっちゃうんですよ。で、どうせなら新しいものから順に並べていこうと。でも最後の「甘い生活」(『Future Listening!』収録)が終わって、ループ再生でまた最初の「Apple」(『LUCKY』2013年収録)にいくところは違和感なく聴けるように、とは考えましたね。
ーーなるほど。ループ再生のことまで考えて。
テイ・トウワ:考えてますよ(笑)。ふふふ。…てことにしといてください(笑)。
(取材・文=小野島 大)
■リリース情報
『94-14』
発売:2014年9月3日
価格:¥2,800(税抜)
Artwork:Barry MacGee
〈収録曲〉
1.Apple
with Ringo Sheena
2.Radio
with Yukihiro Takahashi & Tina Tamashiro
3.The Burning Plain
with Yukihiro Takahashi & Kiko Mizuhara
4.Marvelous
with Yurico
5.Mind Wall
with Miho Hatori
6.A.O.R.
with Lina Ohta
7.Taste of You
with Taprikk Sweezee
8.Sometime Samurai
with Kylie Minogue
9.Milky Way
with Yukalicious, Joi Cardwell & Ryuichi Sakamoto
10.Latte & Macaron
11.Mars
with Ikuko Harada(Clammbon)
12.Butterfly
with Ayumi Tanabe & Vivien Sessoms
13.Let Me Know
with Chara
14.Happy
with Vivien Sessoms, Bahamadia & Bebel Gilberto
15.Time After Time
with Amel Larrieux & Vivien Sessoms
16Luv Connection
with Joi Cardwell & Vivien Sessoms
17.Technova
with Bebel Gilberto
18.Amai Seikatsu
with Maki Nomiya
『94-14 COVERS』
発売:2014年9月3日
価格:¥2,600(税抜)
Artwork:TOMOO GOKITA
〈収録曲〉
1.Last Century Modern ~ Technova(94-14)
with INO hidefumi[* New Recordings]
2.Hold Me Tighter In The Rain
with Vivien Sessoms[* New Recordings]
3.Mars(94-14)
with Aoi Teshima & Ikuko Harada[* New Recordings]
4.Siesta(94-14)
[* New Recordings]
5.Get Myself Together
with Taprikk Sweezee
6.Free
with Rozz, Vivian Sessoms & Juiceman
7.My Sharona
with Tycoon Tosh & Buffalo Daughter
8.Last Century Modern(94-14)
[* New Recordings]
9.Funkin' For Jamaica
with Joanne, Les Nubians, Wizdom Life & Tom Browne
10.Forget Me Nots
with Joi Cardwell & Vivien Sessoms
11.Batucada
with Bebel Gilberto
12.Private Eyes(94-14)
with Bebel Gilberto[* New Recordings]
■20TH ANNIV. SPECIAL SITE
http://wmg.jp/towatei20th/