市川哲史の「すべての音楽はリスナーのもの」第2回

SMAPの新作アルバムが示した「底力」 アイドルの概念を一変させた5人はどこに向かう?

 というわけでTVにせよSMAPにせよ、なんだろうこの圧倒的な<どうも長い間本当にお疲れさまでした>感は。
 ばははは。だがしかし。

 今年の『27時間テレビ』冒頭における「生前葬」という名のSMAP公開取材は、もうセルフレクイエムかと思った。<乃木坂泥酔全裸徘徊事件>やら<渋谷駐禁車内立て籠もり事件>やら<森くん元気?>やら<解散の危機>やら、これまで決して公の場で語らなかった封印ネタの数々を活字でもラジオでもネットでもなく、よりにもよって沈みゆくTVで公開するもんだから、「ああ、SMAPがTVと心中するのも象徴的で悪くないなあ」と納得までしてしまった私だ。

 ところがおよそ1ヶ月が過ぎて新作『Mr.S』を聴き、どうやらまだSMAP自身に終わる気はないのが見えてきた。意地なのか気まぐれなのかわからないが、やる気である。

 今回のコンセプトである、《SAITEI DE SAIKOO NO OTOKO》。なぜ無駄にローマ字表記なのか理解しかねるが、これまでのスタイルブック的なコンセプトと較べれば明らかに<ひとの形>をしている。21枚目にして初の生身感、かもしれない。すると前述したバンド色が濃い作家陣の起用も、その延長線上のように思えてくるのだ。

 いいじゃない等身大の、もとい歳相応のSMAP。未だかつて誰も見たことのない<現役アイドルの一生>を、お互い果てるまで堪能させてもらおうじゃないか。地上最強だったアイドルの底力を信じて、私は伝えよう――。

「SMAP細胞はありまぁす♡」と。

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)

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