海外ツアー経験豊かなミュージシャン/ライターが解説
日本と海外のライブハウスはどう違う? セキュリティ、ドリンク、未成年対応などの最新事情
喫煙事情
近年では日本のライブハウスでも分煙が進んでいるが、小さなライブハウスとなればそうは行かない。アシアは喫煙文化がまだまだ根付いているので、そう簡単に全面禁煙にするのは難しいだろう。
海外で分煙は当たり前で、アメリカやオーストラリアでは基本的に室内で煙草を吸える場所はほとんどない。アメリカでは州の法律で屋内は全面禁煙と言う州もある。オーストラリアは煙草が1箱約二千円と高価なためか、煙草を吸う人口も少ないように感じる。
反対にアルコールは外で飲むと罰せられるので、ビール片手に外をブラブラなんてことをすると逮捕になる場合もある。
ライブハウスとなると、そこで苦労する場合が多く、煙草を吸いに外へ出たいが、ビール片手に外には出られない。小さな場所の場合は、そこはきちんと分けるように頑張るしかないのが実情だ。
中規模から大規模な場所の場合、広い庭のような屋外の場所があり、そこでは煙草を吸いながら酒が飲める。テーブルやイスがあり、ライブの合間などの時間は、こういった場所に居る事が多くなる。
今は無きニューヨークの有名ライブハウスCBGBでは、バックステージ専門のセキュリティが居て、楽屋で隠れて煙草を吸うとセキュリティが飛んで来て注意される。それほど厳しくなっていた。
海外セキュリティ事情
海外でライブが行われる場所では、ほとんどの場合セキュリティで雇われた警備員がおり、屈強な男性がトラブルに対して睨みを効かせている。アメリカは銃社会なので、危険極まりない場所もたくさんある。
中には危険な観客が集まりそうなライブの場合、警官が会場内に居ることさえある。IDチェックにしろ、盛り上がった上でのトラブルにしろ、専門家が居るので下手なことは出来ない上に安心感がある。
こうした万全のセキュリティがあれば、少なくともライブ中のトラブルを避けることが出来る。日本でも海外アーティストのライブや大きなイベントの場合にはセキュリティが居るが、日本のセキュリティの場合は観客の自由が無くなる場合が多い。
ただセキュリティを雇えば良いということではなく、ライブという空間を大切に出来るセキュリティが居れば、ライブはさらに良いものになるだろう。
こうした海外事情を見て、日本のライブハウスでも取り入れるべき点は多数あると思う。日本のライブハウスは世界に誇れる素晴らしさを持っている。アンプやドラムセットなどの機材があらかじめ設備されているのは世界でも稀だ。音響設備やミキサーの能力も平均的に高いので、海外から来るアーティスト達が日本のライブハウスの素晴らしさをよく話している。
ライブハウスとは自由な空間だ。日頃の煩わしさから抜け出し楽しめるライブハウスは、夢のような場所。海外の良い部分を取り入れ、日本独自のライブハウス文化をより高めて行くことにより、世界に誇れる音楽文化が出来るのではないだろうか?
■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。
FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST