2人に1人の女性がVR内でセクハラ被害に 米リサーチ会社が公開した現状と対策

VR空間において、ハラスメントは日常茶飯事

 リサーチ会社The Extended MindとVRプラットフォームPlutoによる、VR内で起きているハラスメントに関する共同調査のレポートが4月4日に公開された。

 調査対象となったのは、Oculus Rift、HTC Vive、PlayStation VR、Microsoft Windows Mixed Realityを、日常的に利用している600人以上のユーザーである。回答者が属するジェンダーの内訳は男性422人(70%)女性162人(27%)、トランスジェンダー18人(3%)であった。

 この調査におけるセクハラの定義は「性的な発言を投げかける」「卑猥な画像を見せる」「しつこくつきまとう」「被害者の身体をまさぐる素振りを見せる」などの行為を他のユーザーから受けたことにより、不快な経験をしたことを指す。

 レポートによれば、女性のうち49%が、少なくとも1回はVR内でセクハラの被害に遭っている。男性もまた36%のユーザーがセクハラの被害を報告していた。最も多くの被害を報告しているのはトランスジェンダーの55%で、LGBTに対する偏見が露骨な悪意としてオンライン上に現れていることが明らかになった。

 また、VR空間がレイシズムや性的少数者に対する差別を顕在化させる場になっていることも明らかになった。最も被害を受けているのはトランスジェンダー(29%)、次に男性(28%)であった。女性は17%で他のジェンダーよりも低いように一見見えるが、レイシストがヘイト対象である女性に遭遇した場合、加害の形がセクハラとなるケースが少なくないため、レイシストによる女性へのハラスメントが他のジェンダーに対するものよりも少ないと判断するのは早計であろう。

 このようなハラスメントにより、ゲームやSNSなどのソーシャルVRは1人で気軽に遊んだりオンライン空間で趣味の合う友人を見つける場ではなくなりつつある。「1人でいると、ハラッサーに絡まれるからね」「友達とだけやりとりしている。何をされるか分からないから、知らない人と怖くて交流できないよ」と調査対象となったユーザーたちはコメントしている。

 「よく利用するコンテンツはどのような種類のものですか?」という質問に対しては、70%のユーザーがソロで遊ぶゲームだと回答している。マルチプレイゲームは44%だ。この差がハラスメントによるものであるとするなら、ハラスメントに対する対策を怠ることはVRコンテンツのパブリッシャーにとってアクティブユーザーの獲得における大きな機会損失につながると言えるだろう。

では、どのような対策が考えられるか?

 ゲーム開発者は比較的速い段階からVRハラスメントに対する警鐘をならしていた。すでに既存のオンラインゲーム内ではハラスメントは日常的に起きており、より没入感の高いVRであれば、被害者の心理に与える被害はさらに深刻になると考えられていたからだ。そして、前述のような理由で彼らのビジネスにも深刻な被害を与えかねない。

 VRゲームのディベロッパーMinority Mediaの開発者パトリック・ハリスは、2016年3月にサンフランシスコで開催されたGDC(Game Developers Conference)のセッションで、VR内でのセクハラをその場で実演し(当然ながら被害者役の同意は得ており、実演の後彼はその女性に謝罪をしている)、マルチプレイのVRゲームやソーシャルVRにおけるハラスメント対策に早急に取り組む必要性を訴えた。実演直後、会場は静まりかえったという。

 同氏はVRハラスメントの対策として、加害者をブロックすることや加害者の姿を被害者が見ずに済むようにミュートすること、パーソナルスペースの実装などを挙げた。同時に、加害の状況もふくめて問題のある行動を運営側が記録するシステムの実装が有効であるとも提唱した。

 とはいえ2016年の時点では、それらの対策がどこまで有効かを実証することは、まだできなかった。何しろ当時はVR元年と言われ、ようやく各VRデバイスがユーザーの手に渡り始めた段階であった。しかし2年経った今、彼の提案は、Extended Mindのレポートからも有効であると推測できる。

 「ハラスメント対策としてどのような方法が有効だと思いますか?」という質問に対し、80%のユーザーが「ハラッサーをブロックすること」と回答している。次に多いのは68%のユーザーが支持する「ミュート機能の実装」。63%のユーザーは、「ハラッサーを見えなくすること」、57%のユーザーは「パーソナルスペースに他ユーザーが入れない仕様にすること」がハラスメント対策として有効だと回答している。

 オンラインゲームでハラスメントを受けるだけではなく、その様子が悪意のあるユーザー、もしくは炎上商法目的の配信者によって世界中に向けて配信されるとなれば、被害者にとってこれ以上の屈辱はないだろう。従って各ゲームプラットフォーマーのみならず、動画プラットフォームもハラスメントへの対策を立てる必要があると言える。

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