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シネコンは新作だけを上映すべき? 立川シネマシティ「夏の極上爆音上映フェス2017」の挑戦

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 東京は立川にある独立系シネコン、【極上爆音上映】等で知られる“シネマシティ”の企画担当遠山がシネコンの仕事を紹介したり、映画館の未来を提案するこのコラム、第18回は“シネコンは新作だけを上映すべきか?”というテーマで。

 すっかり日本の映画ファンの生活にもなじんだ、と言ってもいいでしょう、動画の定額配信サービス。Netflix、Amazonプライムビデオ、Hulu、dTV等が代表格ですが、映画館で年に数回程度観るくらいの映画ファンであれば、いずれかに加入している率はそこそこ高いのではないでしょうか?

 僕は仕事柄、Netflix、Hulu、Amazonプライムにサービス開始直後から加入しています。最初は「映画館最大の敵」になるかも知れない、という不安もありましたが、しばらく経って落ち着いてみれば、今では「映画を観るのが目的で動画配信サービスに入った人、全員映画館でも映画観る説」を提唱したいくらいの感覚があります。

 ただ、これはあくまでも都市部に住む人間の感覚で、映画館が近隣にない地域の方には当てはまらないかも知れません。

 僕はほぼ毎日、どこかしらのサービスで映画か連続ドラマを観ていますが、その日々の中でしばらく前から「これ、映画館の未来のカタチのひとつになり得るかもな」と感じていることがあります。

 それは「トップページのあり方」です。各社差異はありますが、先ほどの3社はほぼ同じようなユーザーインターフェイスです。最上段に主に新しく追加されたコンテンツが大きめに表示され、それ以下は「新着」「話題」「視聴中」など様々なカテゴリーで分類されています。ここでのポスター画像サイズはすべて共通です。情報に「偏重」がないのです。

 今回、深掘りしたいのは「新着」というところです。ここで重要な点は「新作」ではないということです。例えば執筆時点でのNetflixの「海外映画」というカテゴリーに並んでいる作品を並んでいる先頭からいくつかピックアップしてみましょう。『心のカルテ』(2017)※Netflixオリジナル作品、『パシフィック・リム』(2013)、『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)、『マトリックス』(1999)、『ダークナイト ライジング』(2012)、『フィフス・エレメント』(1997)、『MIB3』(2012)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)などなど。

 80年代90年代の作品も、今年の新作も同じように情報の重みに偏りなく並列されているこのスタイル。まさに「ネット的」な配置です。これが、同じ動画サービスでも1本ごと買い切り/レンタルサイトだとこうはならないでしょう。定額サービスならではの並べ方だと思います。この公開時期を無視した配置には、一般的な「新しいものをより売りたい」というビジネスのルールはありません。もちろんそのサービス内では「新着」=「新作」の順番に並んでいるのかも知れませんが、ユーザーにとってはそうではありません。

 定額サービスは会員をキープすることが収益のすべてであり、会員が新作を観ようが旧作を観ようが、本質的には変わりがありません。だからこういう並べ方ができるのでしょう。

 映画館は、名画座をのぞいて、新作を上映します。ラインナップに並んでいるのは基本的には新しい作品です。ビジネスとしては当然のことですが、しかしこの「当たり前のやり方」は世の中がネット化していく中でいつまで通用するのか、とも感じています。

 もちろん旧作上映がシネコンのメインの収入になる逆転など起こるはずもありませんが、新作しか人を集めることができないわけではないのは確かでしょう。映画は映画館で観るしかなかった時代とは違って、映画館で映画を観ることの趣味性が高まってくればくるほど、上映作品の多様化への要求も高まるはずです。

 動画や音楽の定額配信サービスに見られる、現実の商空間にあるライブラリーではちょっとありえないフラットな商品配置は、しかし僕らの感覚に馴染んできてはいないでしょうか。これはレンタルビデオ店では起こらなかった感覚です。

 YouTubeならもっと極端です。特に10代や20代前半の、幼い頃から動画配信サイトを見ていて、映画や音楽の、新旧の序列があいまいなことが当たり前の世代においては、より一層強いのではないかと思います。

 しかし、よく考えてみれば、これは特に新しいことでも、奇異なことでもないでしょう。とっくの昔からアーカイブに対してかなり自由にアクセス可能だった図書館ではそうなっています。

 例えば中高生に聞いたら、東野圭吾とアーサー・コナン・ドイルのどちらを読んだことがある人が多いでしょう。少年向けの「シャーロック・ホームズ」が多く出ているという強みもあって、ドイル作品は今でもかなり健闘するはずです。もしかしたら上回るかも知れません。「ホームズ」は130年も前に書かれた作品にも関わらずです。

 アーカイブへのアクセス手段が拡張されていけばいくほど、これと似たようなことが映画の世界でも起こっていくのは必然ではないでしょうか?

 もう少し具体的な話題に戻しましょう。

 シネコンで過去作を上映するのは、実はそれほど易しいことではありません。映画館という商売は、自分の店に仕入れた商品を並べる、というよりも、百貨店のようにスペースを貸して、館のルールに従いながらもそれぞれの店がそこで商売をする、という感じに似ています。

 つまり、そこには「棚争い」が発生します。映画館がまったく自由に上映回数やスクリーンサイズ、上映期間を決められるわけではありません。どの配給会社も自社の新作の数字を上げることに必死です。

 そのような棚の争奪戦のところに、劇場側が旧作を上映したいと望んでも、そうカンタンに「わかりました」とならないのは至極当然なことです。まず1つの劇場のために、忙しいさなか上映素材を手配しても、いくらの儲けにもなりません。手間なだけです。それに加えて、そのことで自社の新作の上映回数が減るかもしれません。特に立川シネマシティは何をやらかすかわからない、と思われているかも(笑)。

 しかし10数年前から旧作上映には「デジタルリマスター」という追い風が吹いています。フィルムというのは大変優秀で、手間をかけて高い精度でスキャンしてデータ化し、汚れやゴミを取り除いたり色調を調整したりすると、つい最近撮影したかのような画質を取り戻します。それくらい情報量が多いんですね。

 サウンドも同じようにリマスターし、場合によっては5.1ch化して、まあモノによってはちょっと不自然になることもありますが(笑)、公開当時にはスピーカーの性能からして鳴らせなかったような音で上映できます。これはファンには嬉しい。

 このように付加価値をつけたり、上映のタイミングや、上映の打ち出し方、宣伝方法を工夫することによって、多くの映画ファンに観たいと思ってもらうことは可能です。さらに上映することで新作にもメリットがあるようにできれば、配給会社にも喜んでもらえます。誰かだけでなく、いっそ全員を幸せにする方法を考え抜くことで、実現できることがあります。

      

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