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『LIVE YOUR LIFE』インタビュー

岸田教団&THE明星ロケッツと盟友エンジニアが考える、自作機材の利点と“ロックバンドの音像”

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 同人音楽サークル「岸田教団」率いるロックバンド、岸田教団&THE明星ロケッツによるサード・アルバム『LIVE YOUR LIFE』がリリースされる。前作『hack/SLASH』からおよそ3年ぶりとなる本作には、TVアニメ『GATE(ゲート)自衛隊彼の地にて、斯く戦えり』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ「GATE〜それは暁のように〜」など、タイアップ・ソング4曲を含む12曲を収録。エッジの効いたハードなロックサウンドと、リーダー&ベーシスト岸田によるモダンなメロディ、そしてボーカルichigoのキュートでパワフルな歌声が、聴くものを圧倒する。決して甘くない歌詞の世界も聴くたび病みつきになりそうだ。

 そこで今回、すべての楽曲を手がける岸田と、彼の朋友であり「鯛の小骨」というアーティスト名でも活動するマスタリング・エンジニア、守屋忠慶に話を聞いた。アルバムについてはもちろん、自作エフェクターの話や曲作りのノウハウなど、話題は多岐に及んだ。(黒田隆憲)

「最初の段階で完成度がマックスになっているものはだいたい未来がない」

ーー元々二人は、同人音楽サークルで知り合ったんですよね。

岸田:はい。僕が「岸田教団」として、『東方Project』の同人アルバムなどを制作していた頃に出会いました。

守屋:その時に、彼がやっているバンド、岸田教団&THE明星ロケッツの昔の音源を聴かせてもらって。ボーカルのichigoさんが加入して2枚目のアルバムだったのかな。あまりにもマスタリングの音が悪く、思わず「(マスタリングを)やらせてください」と自ら買って出たのがきっかけ(笑)。それ以降はずっと手伝わせてもらっています。

ーーお二人の音楽的ルーツは、割と共通点が多いのでしょうか。

岸田:まずはゲームミュージック系ですね。ギャルゲーがちょっと色気づいた時代というのが、90年代の終わりからゼロ年代の頭くらいにあって。例えばfripSideさんや麻枝准さんの、ハンパない「コムロ感」が大好きだった(笑)。そのあたりの流れが一番熱かった時にユーザーだったのが、僕らの世代。そこに、ジャパニーズインディーロック系を合流したのが僕のルーツですね。

守屋:あとは同世代の、クラブトラックを作っている人たちからの影響も大きそうだよね。身近でプロになった音楽家がすごく多くて。今だと(ゆウゆ)Pさんとか、t+pazoliteさんとか。それと岸田さんが珍しいのは、洋楽からの影響が色濃く、本人もバンド活動をしていたことですね。しかも、自分でエフェクターまで作っちゃうっていう(笑)。同人音楽サークル界隈って、ギターは弾くけどバンドは組まないという人が多いんですよ。

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ーー洋楽はどの辺りを聴いていたのですか?

岸田:元々は、アメリカで売れているバンドが好きでした。例えばRed Hot Chili PeppersやGreen Day、その辺りの影響が一番大きいかな。ちょっと前だとSkrillexにもハマりました。彼の登場によってクラブシーンが加速し、ちょっとロックシーンが取り残されているような状況があったじゃないですか。今じゃもうそんなことないけど。

ーーエフェクターを自作するようになったきっかけは?

岸田:今から11年くらい前かな。ただ、自作に興味を持つようになった理由は、単純に安いっていうこと。あとは、今でこそ市販エフェクターがたくさん市場に出回っていましたけど、当時はブティックブランドも少なく、大手ブランドさんしかない状態。つまり、自作を始めるインセンティブが非常に高かったわけです。「カッコいいファズが欲しかったら、作るしかない」と(笑)。

ーー元々機械いじりが好きだったのですか?

岸田:いや、全然そんなことないです。とりあえずハンダゴテを買ってくるところから始まって。「やればできる精神」ですね(笑)。やってみれば何とかなるんですよ。

ーーとはいえ、作り始めの頃は情報が必要ですよね。どうやって集めたのですか?

岸田:はやぴ〜さん(ギター)が、楽器屋さんのアルバイトをやっていて。そこで、わざわざメーカーさんに出すまでもない修理を受け持っていた経験があった。基本的なハンダづけなら出来る人が身近にいたわけです。「これは、俺でもやれば出来るかもしれない」と。まずは数万円の初期投資を覚悟しつつ(笑)。あ、でもその前にケーブルを自作したり、ギターの電装パーツを替えてみたりというのはやっていましたね。

守屋:ああ、そういえばやってたね(笑)。とにかく、岸田さんのコストパフォーマンスに対するこだわりは、普通の人より強いんです(笑)。例えば、ブティックブランドのメチャクチャ高いエフェクターを買うくらいなら、それを90パーセントくらい再現した自作の方が、断然良いだろうっていう。そこは迷いなく進みますよね。

ーー最初のうちは失敗することも多かった?

岸田:最初に作ったのが、マーシャル The Guv’norモデルだったんですけど、レコーディングで使ってたら急に音が出なくなりました(笑)。まあ、最初からThe Guv’norに挑戦するなんて無謀だったんですけどね。今の技術なら問題なく作れます。

ーーそうやって自分で作るようになって、気がついたことってあります?

岸田:例えば、ものすごく高価なエフェクターを買ってきて、中をパカッと開けたら「あれ?」って思うような機種も結構売っているんだな、と(笑)。それに、エフェクターの音色を聴くと、どんな回路になっているのかが大体分かるようになりました。そうするとおおよその制作費も見当がつきますから、「これで10万円とかヤバくね?」と思うことは少なくない。そうなってくると、ビンテージエフェクターに大枚を叩くようなことは、まず絶対にしなくなりますね。逆に、音を聞いて「おお、これはさぞかし良いパーツを使っているに違いない」と思って中を開けて見たら、何てことないパーツしか搭載されていなかったりすると興奮します(笑)。最近だと、キャロラインやピグトロニクスのペダルは優秀ですよ。

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ーー今回リリースされるニューアルバム『LIVE YOUR LIFE』の中では、どのようなエフェクターを使っていますか?

岸田:Tremulus Lune(4ms)というトレモロをモデルに自作したモノを使っています。あと、はやぴ〜さんが作ったジムダンロップFuzz Faceモデル。元々はアナログマンのSum Faceを改造したエフェクターで、筐体はFuzz Faceなのに、中身が全然違うっていう(笑)。それからS3NのSUPER FLUTTERモデル。これもはやぴ〜さんが作って市販したみたいですが、8個くらいしか作ってなくてすぐ売り切れたそうです。最近は、スタンダードなエフェクターはほぼ自作で、ちょっと変わったエフェクト効果が欲しい時に、市販のエフェクターを買っています。市販品だと、エレクトロハーモニクスのDeluxe Memory ManやRiddleあたり。やっぱりエレハモ系が多いかな。

ーー曲はいつも、どのように作っているのですか?

岸田:DAWソフトは、スタインバーグCubaceを使っています。デモを作るときはまずドラムをMIDIで打ち込んで、そこにギターを入れて、ベースラインとメロディラインをMIDI打ち込んで、歌詞を書いて、それをichigoに渡して終わり(笑)。

ーー(笑)。デモはいつも完成形まで作り込んでいますか?

岸田:ベースラインとドラムパターンはかなり細かく作り込んでいますね。ギターはコードが伝わればいいくらい。つまり、自分でフレーズを考えるのが苦手なメンバーには細かい指示をして、自分でフレーズを考えるのが得意なメンバーには、大雑把なイメージだけ伝えるっていう(笑)。その方が効率いいじゃないですか。

守屋:「効率」っていうのは、岸田さんを読み解くうえで重要なフレーズです(笑)。「今、自分たちはどういう条件を持っていて、そこに働きかけるとどう効果が出るか?」というのをすごく考えている。音作りにもそれは表れていますよね。シンセとかも、「今、EDM的なシンセが効率いい」という判断で入れるときもあるし、逆に「あえて」入れないときもある。その辺は、音楽の破壊力というか、インパクトを高めるということを基準に選んでいるんだろうなと。

岸田:効率の悪いことをやると、疲れるからね(笑)。一つの「労力」に対する「結果」がどうなっているかは常に考えています。

守屋:逆に言えば、結果がでかいと判断すれば、いくらでも労力を払う人でもあるんですよ(笑)。だから、効率がいいことを選んでいるのに、結果的にやってることはスゲエ多い。

岸田:一つ一つは超シンプルなんだけどね。

守屋:僕は、どちらかと言えばコード進行とか凝るタイプだったんですけど、「そういうやり方は、逆にメロディが聞こえにくくなるから良くない」って言われたことがあります(笑)。

岸田:何事もそうなんだけど、「完成品」というのは完成した瞬間に完成しないといけないんですよ。完成しているものって、そこから先に別の要素を足していくと完成度が下がっていくから。最初の段階で完成度がマックスになっているものは、だいたい未来がない。だって、頂点まで来たら、そこから先は落ちていくしかないじゃないですか。なので、なるべく完成度っていうのは最後の行程でマックスに来るようにしないとダメなんですよね。例えばコード進行でも、今この段階で複雑にしてしまうと、次にやれることの幅が狭まっていくんですよ。そうすると、結局「同じように凝った曲」と、やってることが一緒になっちゃう。

ーーああ、なるほど。

岸田:その罠にハマっている人って結構多いと思うんですよね。逆にシンプルすぎると、指針が見えにくくなって、「どう演奏したら良いか?」がわからなくなる。振り幅が大きい分、イメージ通りになりにくいんです。なので、シンプルだからいいとも限らなくて、そのバランスがすごく重要ですよね。そこはいつも意識しています。で、今回の僕らのアルバムは、どちらかというとシンプルな方向に行ってて、その代わり演奏のイメージをバンドで共有できるよう、ものすごく膨大な指示を出しています(笑)。

ーーということは、曲を作っているときには岸田さんの頭の中で、完成形のイメージって出来ているわけですね。

岸田:ええ。というか、頭の中でイメージが固まるまでは、具体的な曲作りは行わないですね。普段はボーッとしていて、イメージが固まった段階で作業に入っていく。それを、デモ音源としてどのくらい具現化するかによって、そのとき自分がシンプルな方向で行きたいのか、複雑な方向で行きたいのかが決まるわけです。複雑なデモを作れば、その分メンバーの自由度が下がっていきますからね。そこは説きふせながら(笑)。

ーーシンプルなデモを渡すときでも膨大な指示はあるし、いずれにしてもメンバーは大変ですよね(笑)。

岸田:確かに(笑)。基本的には、僕のイメージに従ってもらうやり方ですから。

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ーーとなると、曲を作るときには常にテーマというか見立てがあるわけですか?

岸田:そうですね。例えば新曲の「nameless survivor」は、メロディを活かすために他の楽器を思いっきりシンプルにしている。周りのすべての音が、ボーカルのためだけにあるような音作りって、今までやったことがなかったんですよ。何故かというと、ボーカルのichigoさんを、そこまで信用してなかったから(笑)。「こいつに全権を渡してしまうと、イメージ通りの楽曲になる確率が下がる」と思ってたんですよね。でも、今回はついに「やってみようかな」と。

ーーボーカル録りのディレクションも厳しそうですね(笑)。

岸田:指示書が残ってますけど、メチャクチャなことが書いてありますね。「雨に打たれたイケメンの気持ちになってサビを歌って」とか、「ちゃんと歌うな」とか「ボーカリストとして職人的にしっかり歌おうなんて思うな」とか「お前は自分の職務に忠実だからダメなんだ」とか。

全員:(笑)

守屋:普通、「ちゃんと歌うな」なんて言われないですよね。でも、トラックダウンには珍しくichigoさんも同席していましたよね。初めてじゃないですか?

岸田:そうですね、初めてだと思います。

      

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