星野源が“歌”で表現する、日常にある幸せ 今夜『Mステ』披露の「くだらないの中に」への期待

 本日2月10日放送の『ミュージックステーション 2時間SP』(テレビ朝日系)で、星野源が「くだらないの中に」「恋」を披露する。デビュー当初からのファンにとっても、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で星野を知ったという人にとっても、この選曲はサプライズだったことだろう。

 星野は「SUN」「恋」といった踊れる音楽を生み出し、自身も“踊るエンターテイナー”というイメージが、この1、2年ほどでぐっと強まった。しかし、彼はソロ活動当初からシンガーソングライターとして、じっくり“歌”を聴かせるという一面も持っている。今回番組で披露する「くだらないの中に」や、過去に『2016 FNS歌謡祭 第2夜』(フジテレビ系)で歌った「くせのうた」は、そういった星野の魅力を楽しむことができる楽曲だ。奥底にある幸せな空気感や、耳馴染みの良いメロディは「SUN」「恋」と共通する部分だが、ゆったりとしたテンポであるため全く異なる印象を抱く。“踊る”曲ではなく、“日常に馴染む”曲、とでも言おうか。こうした温かみのある雰囲気やサウンドの曲は、星野がリーダーを務めていたインストバンド・SAKEROCKの頃から得意としているもの。「くだらないの中に」でも「くせのうた」でも星野は決して声を張り上げて歌うことはせず、ゆっくりと語りかけるように歌う。だからこそ心にすっと染み入っていく。

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 歌詞に目を向けると(これは「恋」にも共通することなのだが)、星野は直接的な言葉で愛を表現しない。<僕は時代のものじゃなくて あなたのものになりたいんだ>(「くだらないの中に」)、<君の癖を知りたいが 引かれそうで悩むのだ>(「くせのうた」)……と、かなり遠回しに“好き”という思いを書いている。しかし、視覚=<赤い夕日が照らすのは>(「くせのうた」)や匂い=<髪の毛の匂いを嗅ぎあって>(「くだらないの中に」)、音=<心が割れる音>(「くだらないの中に」)と五感をフルに使った星野の歌詞は、遠回しな表現でありながら、目の前にその光景が広がるような感覚になる。「<首筋の匂いがパンのよう>(「くだらないの中に」)ってどういうことなんだ?」と引っ掛かりを感じると同時に、<首筋>や<パン>という言葉から、幸せな恋人同士の空気を感じる。そんななんてことない日常を、星野は優しく歌いーーつまり、星野の歌が日常にある幸せに気づかせてくれるのだ。

 今夜の『ミュージックステーション』ではそんな星野の両面が見られるとあって、期待が高まっている。「恋」「SUN」で彼を知ったという人は、語りかけるような優しい“歌”を聴かせる姿にも注目してほしい。

(文=村上夏菜)

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