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2ndフルアルバム『ママゴト』インタビュー

Sugar’s Campaignが考える、AIに対抗する音楽「知性を超えるために知性のない時代に立ち返る」

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 それぞれがトラックメイカーとしても活躍するSeihoとAvec Avecによるユニット、Sugar’s Campaign。彼らが通算2作目となるフルアルバム『ママゴト』を完成させた。

 80年代シティ・ポップを基調にして世の中の「あるある」を集めた前作『FRIENDS』に対して、今回のテーマはそれぞれが運命的な役割を引き受ける「家族」という共同体について。制作前に合宿を通して「正面からポップに向き合おう/ポップスとしての役割を引き受けよう」と決意した彼らは、Akioやmomo、IZUMIといった従来のキャストに加え、井上苑子ら新たな面々を招集。J-POPの黄金期=90年代J-POPの意匠にも通じるような、より王道のポップ・ミュージックを手にしている。そんな新作での変化について、2人に訊いた。

 なお、8月25日、26日にはリリース・パーティー『あしたの食卓』の開催も決定。デビュー作『FRIENDS』に際しては全編を通して「デビュー20周年」を模したユニークなライブを行なった彼ら。今回のリリパにまつわるヒントも、本文中から探し出していただきたい。(杉山仁)

「意図的に偶然性を発生させる」(Seiho)

――今回は制作前に2人で合宿に行っていましたね。これは自身を舞台監督に見立てて「音楽を作る前に世界観やコンセプトを話し合う」という意味で、とてもSugar’s Campaignらしい在り方だと思いました。そこではどんな話をしていたんですか?

Avec Avec:猿の話ですね(笑)。

――猿の話?

Seiho:(笑)いや、でもこの話は長いからなぁ。まず説明すると、そもそも僕らが合宿に行ったのは、「真面目にやろう」ということだったんですよ。

Avec Avec:僕らってちょっと斜に構えたりするところがあるんで、今回は「ポップスとは何か」みたいなことにちゃんと向き合いたい、という気持ちがあって。

Seiho:そのためにどうするかを、合宿で話し合ったんです。それで……これは出来上がってから気づいたことでもあるんですけど、今回は「意図的に偶然性を発生させる」ようにしていったというか。そういう思いが強かったと思いますね。

Avec Avec:たとえば、今って世の中を見ても、音楽を聴いても、色んなものがひとつのゴールに向かって最適化されすぎているように感じるんですよ。悪く言うとポピュリズムという意味になりますけど、世の中にひとつゴールがあって、それにみんなで向かっていくみたいな雰囲気があると思ってて。そうすると、音楽も技術が上がってウェルメイドにはなるけど、みんな音が似てくる。そういう最適化って長いスパン、100年、200年で考えたときに、文化としては残っていきにくいんじゃないかと思うんです。それを残すためには、もっと偶然から生まれるバグみたいなものが必要なんじゃないかと思ったんですよ。

――ああ、なるほど。

Seiho:特にSugar’sはお互いのことを分かり合ってる関係性ということもあって、普通に作っても「何となくSugar’sっぽい曲」が出来てしまう。それで、合宿中に外的要因を入れたり、僕が突然ご飯を作りはじめたり……。

Avec Avec:とにかく色んなことを試してみたんです。

――じゃあ、バグを発生させるためにやったことが、「ご飯を作る」?(笑)。

2人:(爆笑)。

Seiho:僕らとしては、「料理は他者にふるまうもの」という考え方だったんですよ。他にもakioやmomoちゃんに合宿に来てもらって、みんなで朝まで話したりもしましたね。

――その結果、何か見えてきたものはありましたか。

Seiho:特になかったです(笑)。

Avec Avec:(笑)。まぁ、言葉では言い表わせないものだったんですよ。これが猿の話にも関係してくるんですけど、やっぱり人間って言葉を重要視する生き物じゃないですか。たとえば、本当は単純ではない感情を限定して、「嬉しい」「悲しい」という言葉に集約してしまう。一方、猿や原人は言葉がない代わりに、全体性でコミュニケーションを取っている/いたと思うんです。音楽だって、全体性を表現できるものですよね。たとえば、ここで面白い話をしても、バックで感動的な音楽が流れていたら、全体の意味は変わってくる。それと一緒で、「猿はすごいな」っていう話になって(笑)。

Seiho:あと、このまま行くと僕らは、音楽を作っても絶対AI(人工知能)に負けると思うんですよ。AIは膨大な情報を集めて、そこから全体性を表現するような音楽を作れるようになると思う。そういう意味で、これに立ち向かうには、バグしかないと思ったんです。今回は知性を超えるために、知性がなかった時代に立ち返ったというか。だから『ママゴト』には、猿の曲(「レストラン-熱帯猿-」)とAIの曲(「HAPPY END」)が入ってるんですよ(笑)。

――前作以降、それぞれソロ活動もしていましたよね。その経験が新作に還元された部分もあったと思いますか?

Avec Avec:僕は結構あったと思いますね。これから自分のソロ作品も作ろうと思いますけど、僕の場合ここ数年は外仕事が多かったんで、そこには当然制約がある。それもあって、J-POPの形式を再認識することが多かったんです。「Aメロ」「Bメロ」「サビ」みたいな構造について考えることで、逆にそうではないものはどうしたら作れるかを考えることになったというか。たとえば、洋楽はバースの連なりで出来ていることも多いですけど、今回の5曲目「ただいま。」にもサビがないんです。これは「いいAメロ」と「いいBメロ」があれば、それだけでもいいんじゃないか、という発想で出来た曲なんで。

――確かにAvec Avecさんのソロ仕事は、さかいゆうさんやchayさん、牧野由依さんとの仕事にしても、J-POPについて考えられるようなものが多かったかもしれないですね。

Avec Avec:そうなんですよ。これはすごく勉強になったし、本当によかったです。

――Seihoさんは、Avec Avecさんのソロ活動をどんな風に見てました?

Seiho:Takuma(Avec Avec)はソロの方が冒険しないといけないことが多いと思うんですよ。だから、「傷を作って帰ってくる」みたいな感じがある。一方、僕のソロは基本的に自分の責任なんで、どこまでも遠くに行ってしまえるというか。だからSugar’sに帰ってきたときに、僕は「あそこにめっちゃデカい魚がいたぞ」って言える。「宝箱を見つけられる」タイプというか。一方、Takumaは宝箱を見つけるのは得意じゃないけど、僕が見つけた宝箱かもしれないものを開ける「カギは持ってる」みたいな雰囲気で。これは毎回そうなんですけど、それが2人でSugar’s Campaignをやる意味にもなってると思うんですよね。

――Seihoさんのソロ活動としては、自身の最新アルバムやフジロックへの出演、矢野顕子さんや三浦大知さんの楽曲プロデュースなどがありました。

Avec Avec:僕と比べると、Seihoって「作品がSeihoそのもの」みたいな感じですよね。ソロでやってることが素に近いから、全然会ってなくても、作品を聴いたら「今はこういう感じか」って分かる。(2人が知り合った)大学の頃からずっと変わらないものがあって、そこに今何を考えてるのかがプラスされてるんで、すごくわかりやすい(笑)。

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