BIGMAMA金井政人が語る、音楽とエンターテイメントの未来「僕らは独立遊軍にならなきゃいけない」

150905_bk_5.jpeg

 

「長く続くバンドって、圧倒的に唯一無二」

ーー最近、地方ごとのバンドシーンの特色が少しずつ明らかになってきていると思うんです。特にここ数年は大阪から出てくるバンドに勢いがあったり、各地で違うバンド文化が形成されている。そのあたりはどう感じます?

金井:そのことについては、僕の中で、逆説的に思うことがありますね。東京は常に多数決が行われているような気がするんです。

ーー常に多数決が行われている?

金井:たくさんの人がいいって言ったものが主流になっていく。でも、その多数決は作られた流行かもしれない。「みんな好きでしょ?」ってところに平均化されて納まりがちだと思うんです。比べると、地方のほうがブレーキがないというか、最適化される以前の目立ちたい、尖りたいという欲求が勝ってる気がします。

ーーなるほど。

金井:場所ごとに流行ってる音楽が違うとは思わないんですよ。それぞれの場所でロックが好きな人がいるし、レゲエが好きな人がいるし、クラブミュージックが好きな人がいる。何が元気かは、そこから出てきたアーティストがいるかどうかにつきると思います。人気のあるアーティストが出てきたら、そのバンドを筆頭にしたピラミッドができるんです。

ーーその土地その土地で、先輩後輩の関係が生まれる。

金井:そうですね。そのバンドに憧れたバンドが出てきて、ちゃんと下の世代に繋がっていくと思うんです。各地方ごとに地元を大切にするいいバンドが出てきて、そういう関係が生まれているんだと思いますね。

ーー地方の音楽シーンということでいえば、今は各地のフェスやイベントも増えてきたし、根付いてきていると思います。そのあたりに関してはどういうことを思いますか?

金井:今、日本中のいろんなフェスやイベントに呼んでいただくようになって、そこで思うのは「僕らは独立遊軍にならなきゃいけない」ということなんです。

ーー独立遊軍?

金井:さっき話したピラミッドの構造みたいに、各地で素晴らしいバンドが出てくると、それに憧れるたくさんのバンドが出てくるわけですよね。でも、僕らとしては、誰かとの比較対象になってはダメだなと思ってるんです。やっぱり、長く続くバンドって、圧倒的に唯一無二だと思うんです。僕としても、主観的にも客観的にも唯一無二に見える音楽を鳴らせてないと格好よく思えなくなってきていて。それを自分たちにも強く言い聞かせるようになったのが『Roclassick』を作り始めた時期だったんですね。で、今は2時間のショーを作る時も、イベントに呼んでもらって30〜40分でダイジェストにするときも、ロックバンドとして奇をてらわずに気持ちのいい違和感を作ることを意識して実践できている。だから、サマソニに出た時にも、洋楽のバンドと邦楽のバンドがいる中で、ちゃんと孤立できてる実感があったんですよね。

150905_bk_7.jpeg

 

ーー今、俯瞰で見ても、BIGMAMAというバンドはたしかに独自なことをやっている感じはありますね。

金井:最近、感動ってどうやったら生まれるのかを研究しているんです。どうやったら感情を動かすことができるのか。それをメンバー5人で、誰にも真似できないやり方で音楽にしていくことがBIGMAMAのやることだと思っていて。そうやってアルバムを作って、ツアーをまわって、その中で足りなかったピースとして「MUTOPIA」を作った。自分の中ではBIGMAMAというバンドが完成してきている感じがあるんです。

ーー完成してきているというと?

金井:いろんな道を歩んできて肝が据わったというか、自分たちのバンドとしての欲求がどこに向かってるかわかったという。何万人が押し寄せてもおかしくない音楽を鳴らしていると思うけれど、人を集めるために音楽を作っているというより、いかに純粋な気持ちを突き詰められるか。そこに没頭していることが単純にミュージシャンとして一番楽しいんですよね。

ーーそのための大切な一曲として今回のシングルをリリースしたわけですね。

金井:そうですね。それと同時に、このシングルはいかに今の自分たちがCDで遊べるか、面白いことができるかという試みでもあって。というのも、それこそ、CDに対していまだに期待をしている反面、悲観もあるんです。

ーー悲観もある?

金井:僕は昔レンタルビデオのショップで働いていたことがあったんですけど、当時はひたすらVHSをDVDに変えていく作業をしてたんですよ。ビデオテープがなくなって、同じ作品のDVDが入荷するところに立ち会ってたんですね。今はCDもそうなのかなと思うんです。

ーー定額制のストリーミング配信が普及してきましたからね。

金井:でも、それって、もともと音楽に価値があって、単にプラスチックのケースと円盤というガワが古くなってきただけの話なのかなと思っていて。そう思ったら、「今は今できることを楽しもう」という考え方に切り替わったんですよ。今ならまだ、作品ごとにジャケットを作って、それを全国各地で限定盤として出すということを楽しめる。ひょっとしたらそれは今しかできないかもしれない。そう思ったら、自分でもOKのスイッチが入った、期待もしてるけど、悲観もしてるっていうのはそういう意味なんです。

ーーここからは未来の話をしたいと思うんですが、まず、音楽を巡る環境はどんどん変わっていくと思うんですけれど、そこに対しては金井さんはどう思いますか?

金井:たぶん自分の生きているうちに音楽のあり方は何度か変わると思っていて。でも、スマートフォンやPCで聴くときに、どんなにいい音質でレコーディングしたとしても、どうしてもよさが伝わりきらない瞬間はあって。そういうときに、いかにアナログと向き合っていくかも、アーティストのこれからのバランス感覚としてすごく必要なんじゃないかと思います。デジタルなものが増えてきたら、アナログなものに欲求が戻る瞬間がある。

ーーそうですね。アナログの価値は見直されていくと思います。

金井:楽器を手で触って、実際に音が鳴るということにも体験の価値がありますからね。あと、体験ということで言えば、やっぱりディズニーランドってすごいですよ。僕らが出るフェスって何万人集まったというのがニュースになるわけだけれど、それを毎日やっている。

ーーそうですよね。

金井:何かを体験するっていうことにはすごい価値があるんですよね。僕らも、僕らなりにちゃんとバンドで、音楽でそれを用意したい。そもそも、お金を使って、休みを作って何かを楽しむってことに関しては全部のエンターテイメントがライバルだと思うんです。だから、そういうディズニーランドみたいなものも、自分と関係ない世界の話だと思ってたらダメだなと思いますね。

ーーそこでできることは、まだバンドにもたくさんある。

金井:自分は今の現状に満足していることは一度もないんですけど、少なくとも、どんな未来が待っていようと怖くはないですね。緊張感もあるけど、ちゃんとワクワクとドキドキを用意できてる実感が自分の中にある。僕だけじゃなくて、BIGMAMAの5人でそれをできているんだと思います。

(取材・文=柴那典/撮影=下屋敷和文)

20150902-m.jpg
『MUTOPIA』北海道盤
20150902-u.jpg
『MUTOPIA』東北盤
20150902-t.jpg
『MUTOPIA』関東盤
20150902-o.jpg
『MUTOPIA』中部北陸信越盤
20150902-p.jpg
『MUTOPIA』近畿盤
20150902-i.jpg
『MUTOPIA』中国四国盤
20150902-a.jpg
『MUTOPIA』九州沖縄盤

■リリース情報
『MUTOPIA』
発売:2015年9月2日
価格:¥1,200(税抜)

「MUSIC」と「UTOPIA」をかけあわせた造語の「MUTOPIA」と命名されたシングル『MUTOPIA』は北海道、東北、関東、中部北陸信越、近畿、中国四国、九州沖縄という7つのエリアごとに異なるバージョンで販売、ジャケットのデザインも7つのエリアごとにそれぞれ違うバージョンとなっている。

『MUTOPIA』北海道盤
<収録曲>
1.MUTOPIA
2.SKYFALL
3.MUTOPIA in Hokkaido

『MUTOPIA』東北盤
<収録曲>
1.MUTOPIA
2.SKYFALL
3.MUTOPIA in Tohoku

『MUTOPIA』関東盤
<収録曲>
1.MUTOPIA
2.SKYFALL
3.MUTOPIA for Party People

『MUTOPIA』中部北陸信越盤
<収録曲>
1.MUTOPIA
2.SKYFALL
3.MUTOPIA in Chubu

『MUTOPIA』近畿盤
<収録曲>
1.MUTOPIA
2.SKYFALL
3.MUTOPIA in Kansai

『MUTOPIA』中国四国盤
<収録曲>
1.MUTOPIA
2.SKYFALL
3.MUTOPIA in Chugoku-Shikoku

『MUTOPIA』九州沖縄盤
<収録曲>
1.MUTOPIA
2.SKYFALL
3.MUTOPIA in Kyushu

BIGMAMA オフィシャルWEBサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる