100万台の先にあるもの アイオーデータの「GigaCrystaが歩んだ」、ゲーマーと共にある10年

 一般公開も始まる東京ゲームショウ2026(TGS2026)。注目ブースのひとつがアイオーデータで、ひときわ目を引くのがゲーミングモニター「GigaCrysta(ギガクリスタ)」だ。10年以上にわたって展開され、累計販売台数は100万台を突破。いまや同社を代表するゲーミングデバイスのひとつとなっている。ただ、その歩みを「ゲーミングモニターの市場拡大」という言葉だけで片付けるのは少し違う。GigaCrystaが歩んできた10年は、ゲームを取り巻くコミュニティそのものが変化してきた10年でもあるからだ。

 一般公開に先立って開催されたビジネスデイでは同ブースで「GigaCrysta 100万台 × Fighters Crossover 10周年 ゲーミングコミュニティの変遷とこれから」と題した鼎談も行われた。登壇したのは、格闘ゲームコミュニティ「Fighters Crossover(FC)」を主宰するかげっち氏、日経Gaming編集長の平野亜矢氏、そしてアイオーデータ販売推進部長の西田谷直弘氏だ。メーカー、コミュニティ、メディアという異なる立場から、過去10年を振り返りながら、これからのゲームシーンについて語り合った。

ブームと停滞を越えた10年

格闘ゲームコミュニティ「Fighters Crossover(FC)」を主宰するかげっち氏(右)、日経Gaming編集長の平野亜矢氏(中央)、アイオーデータ販売推進部長の西田谷直弘氏(左)

 現在ではeスポーツという言葉が一般にも定着したが、この10年が一直線の成長だったわけではない。2018年前後にはeスポーツブームが起こり、多くの企業がゲーム市場に参入した。一方、その後のコロナ禍によってリアルイベントは大きな制約を受け、一度は勢いが止まることになる。そして『ストリートファイター6』の登場などをきっかけに、再びコミュニティが活気を取り戻していった。

 この変化を長く現場で見てきたのが、FCを運営するかげっち氏だ。かげっち氏は「かげっち」名義で約30年にわたってゲームシーンに関わり、FCも10周年を迎える。現在では全国39都道府県、51エリアにコミュニティが広がり、Discordには約9650人が参加する規模にまで成長した。直近3年間だけでも約2000回のイベントを開催しているという。

 その歩みのなかで、アイオーデータもコミュニティとの距離を縮めてきた。イベントへの機材協力を継続し、これまでに延べ5000台以上を貸し出してきたという。単に製品を提供するだけではなく、イベントの現場にメーカー自身が足を運び、プレイヤーと同じ場所でゲームを楽しむ。その積み重ねが、今回の100万台という数字の背景にもある。

 西田谷氏は、メーカーとコミュニティの関係について「支援する、協賛するというよりも、一緒に盛り上がるという感覚が大事」と話す。FCの全国大会では深夜まで参加することもあるという。製品を売る側と使う側という線引きを越え、同じゲームを楽しむ側としてコミュニティに入っていく姿勢である。

「外から」ではなく「中に入る」

 では、企業とゲームコミュニティはどのような関係を築くべきなのか。ここで興味深いのが、メディア側からの指摘だ。

 日経Gamingの平野氏は、ゲームシーンを継続的に追うメディアがまだ少ないことを指摘する。その時々のブームを取り上げる記事はあっても、過去から現在までを「線」として捉えなければ、以前から存在していたコミュニティが、まるで新しく生まれたもののように見えてしまう。さらに企業とコミュニティの関係について、平野氏は「うまくいっている企業は外側からアプローチするのではなく、自分たちもコミュニティの一員として中に入っていく」と語る。

 これはゲーミング市場に限った話ではないだろう。コミュニティに対して広告や協賛という外側からのアプローチだけを行うのか、それとも実際にその場へ足を運び、何が語られ、何が求められているのかを知ろうとするのか。その違いは、時間が経つほど大きくなる。

 かげっち氏も「コミュニティはメーカーも含めて、関係する人全員」と考える。メーカーとプレイヤーを分けるのではなく、「一緒にゲームを楽しむ」ことがコミュニティの本質だという。

 実際、FCは単純に大会を開催するだけではない。地域ごとの事情に合わせて開催方法を変え、「自分がいなくても回る仕組み」を目指して全国へ広げてきたという。2027年3月7日には浅草橋ヒューリックホールで10周年全国大会を開催予定で、2026年11月21日から全国各地で予選がスタートするという。

 また、アイオーデータの西田谷氏は石川の本社食堂を開放して社員と地域の参加者が一緒にゲームを楽しむ「わちゃわちゃ」を開催している。ここには、企業が「ゲームイベントを支援する」という一方向の関係とは異なる風景がある。社員も参加者も同じゲームをプレイし、食事をしながら交流する。こうした小さな接点が、コミュニティを長く続ける力になっている。

リアルだから生まれる次の一手

 10年前と現在では、ゲームを取り巻く環境も大きく変わった。オンラインで対戦でき、配信もでき、コミュニケーションもDiscordなどで完結できる。だからこそ、鼎談では「リアルイベント」の価値も改めて語られた。

 オンラインで完結できる時代だからこそ、実際に顔を合わせる意味がある。そこではプレイヤー同士だけでなく、メーカーの担当者や開発者とも直接話ができる。製品を使っていて感じたこと、こうしてほしいという要望、あるいは「こんなものがあったら面白い」という夢のようなアイデアまで、直接伝えられる。

 GigaCrystaが100万台を突破したことも、こうしたコミュニティとの接点と無関係ではない。ゲーミングモニターは、スペック表だけでは語り切れない製品でもある。どんなゲームを、どのようにプレイするのか。どんな環境で使われるのか。そしてユーザーが何を不満に感じ、何を望んでいるのか。そうした声が、次の製品を考えるヒントになる。

 西田谷氏は、アイオーデータのスタンスを「生産者の見えるディスプレイメーカー」と表現する。製品を作って終わりではなく、ユーザーと直接向き合いながら、次の製品へつなげていく。その姿勢こそが、10年以上にわたってGigaCrystaを展開してきた理由のひとつなのだろう。

 そして、ゲームシーンそのものも、海外の成功モデルをそのまま持ち込むのではなく、日本の文化や社会環境に合った形を模索する段階に入っている。ゲームに使える時間やお金に余裕がなく、新しいタイトルへ挑戦しにくいという課題もある。それでも、急激なブームではなく、コミュニティと企業が少しずつ関係を築きながら成長していく。10年を経験した今だからこそ見えてきた方向性でもある。

100万台の先にあるコミュニティ

アイオーデータ第1事業部 企画1課リーダーの張微娟氏。彼女もGigaCrystaの開発者のひとりでTGSにも参加している。

 「ゲームが好き」と公言できる社会になったこと。それ自体が、この10年で起きた大きな変化のひとつだろう。かつては一部の趣味として見られていたゲームが、いまでは競技、エンターテインメント、コミュニケーション、そしてビジネスとしても認識されるようになった。

 その変化のなかでGigaCrystaは、単なる「ゲーミングモニター」という製品カテゴリーを超え、ユーザーとともに歩んできた。100万台という数字は、その結果を示すひとつの指標だが、本当に重要なのは、その100万台がどのような場所で使われ、どれだけのプレイヤーのゲーム体験を支えてきたかということなのかもしれない。

今回のTGSで参考出展されている「LCD-GDQ271ULAQ 」シリーズの27型最新機。320Hzの速さとMini LEDの美しさを両立 WOHD広色域対応モニターで、開発担当の張氏も「是非、ご体験頂きたい欲しいマシンです」と太鼓判。

 だからこそ、TGS2026のアイオーデータブースも、単なる製品展示の場ではない。西田谷氏が来場者に伝えたいのは、スペック表を見て終わるのではなく、実際にメーカーと話してほしいということだ。

 「このTGS2026のアイオーデータのブースは、まさにコミュニティの場だと思っています。製品を見ていただくだけではなく、ぜひ私たちに語りかけてほしい。実は開発者もたくさん来ています。『こんなものがあったらいい』『こんなことができたらいい』という、夢のような話でも構いません。皆さんの声が次の10年のGigaCrystaにつながりますし、実際に製品にも反映されていきます」

 100万台を売ったから終わりではない。むしろ100万台という節目は、次の10年へ向かうスタート地点でもある。ゲームをする人、ゲームを作る人、製品を作る人、そしてそれを伝える人。その境界を越えて同じ場所で語り合う。GigaCrystaが歩んできた10年が示しているのは、ゲーミングデバイスの進化だけではなく、「ユーザーとともに製品を育てる」というコミュニティの可能性なのだ。その価値は是非、現地で体感して欲しい。

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