「剥き出しの感情に、パワーをもらえる」 MEGUMIが語る『ラヴ上等』の舞台裏

 Netflixで配信中の恋愛リアリティショー『ラヴ上等』が、国境を越えて熱狂を生んでいる。ヤンキーという極めてドメスティックなカルチャーを題材にしながら、10代から60代まで幅広い世代の心をつかみ、海外からも大きな反響を集めているのだ。

 仕掛け人であるMEGUMIは、この番組をプロデューサーとMCという二つの立場から見つめてきた。剥き出しの感情をさらけ出す出演者たち、その覚悟に寄り添うスタッフたち、そして深化を続けるシーズン2の舞台裏。ヒットの理由から、番組を通じて得た気づきまで、MEGUMIにたっぷりと語ってもらった。(伊藤美咲)

「おもしろいと思ってもらえるか、まったく理解されないか、究極の二択だと思っていました」

ーー今、『ラヴ上等』は日本だけでなく海外、特にアジア圏からも大きな人気を集めています。こうした反響の大きさは、どこまで予想されていましたか?

MEGUMI:全く予想していませんでした。シーズン1は開発に3年半ほど時間をかけていて、途中からは本当におもしろいのかが見えなくなる瞬間もありました。それでも、最初に「おもしろい」と思って立ち上げたときの気持ちを手放さないようにと、美術も音楽もキャストも、作りたいものを一つひとつ形にしていったんです。

 今までにないものになるという確信はありましたが、反響は出してみなければわからない。その恐怖心はずっと消えませんでした。海外の反応については、なおさら予想していなくて。ヤクザや歌舞伎を題材にした作品はこれまでもありましたが、ヤンキーはかなりドメスティックなカルチャーで、海外での認知もほとんどない。おもしろいと思ってもらえるか、まったく理解されないか、究極の二択だと思っていました。

ーー実際に配信が始まると、初期から話題を集め、シーズン2の制作にも至りました。ヒットの最大の要因は、どのようなところにあるとお考えですか?

MEGUMI:日本では10代から60代まで幅広い世代が見てくださっていて、世代ごとに響くポイントが違うのがおもしろいところです。10代の子たちは、SNSで自分の意見を言うことに恐怖心がある時代だからこそ、怖がらずに発言するヤンキーの子たちに憧れを抱く。30代、40代には懐かしい感覚があり、50代、60代には「自分もこう生きてきた」という重ね合わせがある。

 共通しているのは、剥き出しの感情に触れることで、大きなパワーをもらえるという点だと思います。本音と建前を使い分け、周りの目を気にしながら発言しなければいけない今の世の中を、多くの方がどこか息苦しく感じている。ヤンキーの子たちは、そうしたものを壊すように感情をむき出しにして生きている。そこが響いたのではないかと感じました。

 海外の方には、知らない世界を覗いてみたい気持ちが強くあるようです。ギャングとも違う、アウトローでありながら可愛らしい一面や涙もろい一面もある。これまで見たことのないジャンルの人間に気づけば心を打たれていた、という反応だったようです。

ーー当初、番組制作が難航した部分もあったそうですが、それでも諦めずに進められた原動力やモチベーションはどのようなところにありましたか?

MEGUMI:『ラヴ上等』に限らず、やりきれなかった経験は自分の人生にずっと残ってしまうんですよね。相手の事情でどうしようもない場合は仕方がないのですが、「これができなかった」「もっとこうすればよかった」と思う余地は、なるべく残したくない。それは自分次第だと思っているんです。

 自分が動けば、ある程度の形にはなる。これは絶対に抗えない事実だと思っています。だからこそ、できなかったときに悔しいし、やらなかった自分がすごく嫌なんですよね。ある程度のことに関しては、なるべくやらずに終わらせることのないよう、やりきると決めています。

感情をむき出しにする出演者たちと同じだけの覚悟を持つ

ーー番組プロデューサーとMC、両方の立場から番組に携わったことで気づいたことを教えてください。

MEGUMI:参加者の皆さんは、いわゆる芸能人ではない方たちですよね。そうした方たちが自分の感情を剥き出しにして作品に出るのは、相当な覚悟が必要だと思います。だからこそ、自分自身も同じだけの覚悟を持つことが、いかに大切かだと実感しました。

 スタッフの皆さんの存在も大きいですね。ドラマや映画とはまた違って、一人ひとりに寄り添いながら、まるで家族のように同じ空間で生活する。朝から寝るまでそばにいて、本人たちをケアしながら一緒に過ごしてくれる。参加者たちが卒業するときには、スタッフが泣いていることもあります。そうした人と人との絆があってこそ、この作品ができている。リアリティならではの関係の濃さを強く感じましたね。

 MCという立場では、AwichさんやTakaくん、永野さんが、それぞれの視点でどう感じ、どう言葉にしてくださるかを、スタジオで初めて聞くことになります。「そう思うんだ」「そういう考え方もあるんだ」と、議論が生まれる。それはきっと、お茶の間でも同じように繰り広げられているのだろうと思います。いろんな段階を踏みながら、この恋愛リアリティショーのさまざまな側面を見せてもらっている。大変ではありますが、本当に貴重な経験をさせてもらっていると感じます。

ーーシーズン2の制作にあたり、エグゼクティブプロデューサーの太田大さんとはどのような話し合いをされましたか? シーズン1からブラッシュアップした点や変更した点があれば教えてください。

MEGUMI:シーズン1は、やってみなければ分からない部分が大きくて。「とにかく頑張って作ってみましょう」という思いで進めていました。それを踏まえて、反省点や「もう少しこうすればよかった」と思う部分もあり、そこがシーズン2での変更点になっています。

 具体的には、参加者たちのもっと深い部分を描きたいという思いがありました。なぜ彼らがアウトローの道を選んだのか、なぜまだそこに居続けているのか。彼らが抱える傷や、本当の意味での魅力を、もう一段深く描くのが今回のテーマです。そのために「道徳の時間」のような場を設けて、みんなの前で自分の想いを吐露してもらう。ヤンキーの子たちには、弱さを見せた人を絶対的に助けるという価値観があるので、そこで絆がより深まる。これは、シーズン1を作り終えた後、真っ先にみんなで話し合ったことでした。

 企画を作る上で、2期の構想やサプライズの仕掛けなどは太田さんのアイデアです。シーズン2の準備段階で、その企画を初めて聞いたときは、「これはみんな驚くだろうな」と思いました。

ーーたいちゃんが留年になったのも大きな驚きでしたが、留年制度自体もあらかじめ考えられていたものなのでしょうか?

MEGUMI:誰か一人に残ってもらうこと自体は考えていたのですが、たいちゃんに決まったのは当日でした。卒業式の時点で、誰がやりきれなかったかをみんなで緊急会議で話して、その場で判断しました。本人にも直接伝えたところ、「やる」と言ってくれたので残ってもらうことになったんです。

ーー参加者の皆さんと接する際に気をつけていたことはありますか?

MEGUMI:撮影が始まる前に一人ひとりとお話しする機会を設けていただき、「嬉しいことも悲しいことも、ダサいところも弱いところも強いところも、全部出してほしい」と伝えました。その分、自分たちは絶対に裏切らないし、何かあれば必ずスタッフに言ってほしい、そこは守るから安心してほしい、と。同じ船に乗る仲間であり、しかもメインで戦ってくれる存在なので、その船頭に立つような気持ちで接していますね。

 私はずっと現場にいるわけではないので、時々顔を出して、「どう?頑張ってる?」というふうに声をかけながらコミュニケーションを取っていました。告白のシーンに立ち会ったときは、「自分はきっと振られるとわかっているけれど、自分を変えるために告白します」と言ってくれる子も少なくありませんでした。そうした言葉をかけてくれるのは、ある意味信頼してくれているからこそなのかな、と感じています。

ーー卒業式などを見守る中で、特に成長を感じた方はいらっしゃいますか?

MEGUMI:まりりんとシャランは印象的でしたね。二人とも最初はすごく弱くて、周りに決めてもらうようなタイプの子だったんです。壮絶な経験をしてきているからこそ、恋愛に対してネガティブなイメージを抱えたまま挑んでいるところもあって。それでも、終盤に向かうにつれて自分の意志で行動しようとする姿が見えてきたんです。覚悟を決めた女性の顔は、こんなにも美しいものなのかと思いながら、私自身も目を潤ませて見届けていました。

ーーシーズン2では新たにAwichさんとTakaさんがMCとして参加されましたが、収録を振り返って印象的だったことはありますか?

MEGUMI:Awichさんは「参加者たちがここまで剥き出しに見せてくれているのだから、自分も同じくらい出さなければいけない」と言って、かなり踏み込んだ内容を話してくれるんです。「そこまで言ってしまっていいのだろうか」と思うほどの覚悟を持って臨んでくれたので、本当に感謝しています。

 彼女は心理学やジャーナリングのような自分と向き合うワークにも詳しくて、よく勉強されている方なんです。そうした観点から番組を見てくれたことで、「この子はこういう感じに見えるけれど、実はこう思っているんだ」という新たな発見が生まれ、番組により深みが出たと感じています。

 Takaくんは何でもできる人で、口も達者だし頭もいい。そのぶん、(参加者が)怒られたときにキョトンとしている姿の裏側にある本音を、ユーモラスに可愛らしく引き出してくれる感じがありました。「男の子ってこんなに可愛いんだ」と思えるように導いてくれる、そんな存在でしたね。それはそれでとても楽しく、勉強になりました。

 お二人とも、音楽を作りリリックを書き、言葉を歌に乗せることを生業にされている方たちなので、言葉の力そのものにすごく感動させられました。

『ラヴ上等』から学んだのは「素直が一番」であること

ーーシーズン2を通して、MEGUMIさんが一番心を揺さぶられたシーンがあれば教えてください。

MEGUMI:親子にまつわるエピソード、特にるるがお母さんと電話で話すシーンは、何度見ても泣いてしまいます。るるもお母さんのことを嫌いだった時期があったし、お母さんも事情があってるるを十分に大事にできなかった時期があった。そうした何とも言えない複雑な感情が、るるの「親子っていいな」という、あのケロッとした一言に混じり合っている。それがすごくエモいというか、深いというか。親子の素晴らしさを改めて強く感じましたね。

ーー『ラヴ上等』を手がけたことで、ご自身の価値観に何か変化はありましたか?

MEGUMI:「素直が一番」だと感じるようになりました。男の子は特にプライドがあるから、弱さを見せるのを嫌がるものだと思うんです。それでも、「実は友達がいなくなっちゃってさ」と素直に打ち明けてくれる姿には、思わず抱きしめたくなるような気持ちになります。

 恋愛がうまくいかないのは、そういう素直さを出せないからなんですよね。「こう思われたい」と頭で一生懸命考えて、駆け引きをしながら相手に気に入られようとする。でも、そうではないところにこそ、一番の魅力がある。ダメだったらもう会わないというのが普通の生き方だと思うんですけど、それでも「これは伝える」と自分に素直でいることを決めている人は、本当に美しいと思います。好きな人に好きだと伝える、好きな人に対して素直な振る舞いをする。それってとても素晴らしいことで、同時に、素直でいることがいかに難しいかを実感しました。

ーー最後に、『ラヴ上等』がMEGUMIさんにとってどのような作品になったのかお聞かせください。

MEGUMI:人間の一番の姿というのは、人間らしくあることなんだと、強烈に学ばせてもらいましたね。ここまで多くの方に熱狂的に見ていただいて、参加者自身の言葉まで覚えていただけることは、なかなか経験できることではありません。彼らの生の言葉が人の心を動かし、国境を越えて届いたんだと感じています。

 もちろん撮影中には、こんなにあるものかと思うくらい、さまざまなトラブルもありました。それでもスタッフや参加者の子たちが一緒に乗り越えてくれたからこそ、届いた作品なんだと思います。本当に、生涯忘れられないくらい多くのことを学ばせてもらった作品になりました。

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