刀ピークリスマスと「ろふまおなんかやめろ」の歴史 ついに使えなくなった年末の“恒例ネタ”を振り返る
にじさんじの人気ユニット「ROF-MAO」から、メンバーであった剣持刀也が“修了”を発表、5月28日をもってユニットを離れることを報告した。動画での発言によると「ROF-MAOと自分の将来を考えた時、それぞれの活動の幅が広がっていく中で、僕のこだわりがそれぞれの妨げにならないようにしたいというのが、ユニットを離れる主な理由です」とのこと。
さらに詳しい理由については、剣持刀也の配信でその思いが詳細に語られているので、是非チェックしてほしい。彼がいかにROF-MAOを愛していて、活躍を願っているか。その気持ちがよくわかるはずだ。
ここで注目したいのが、剣持刀也がとある人物に対して「彼が一番焦ってんじゃないかなってマジで思いますね」という発言をしていることだ。
彼というのは、個人で活動しているVTuber、ピーナッツくんのことだ。なお、剣持刀也は「毎年12月25日にピーナッツくんに『ろふまおなんかやめろ』って言われてきたからやめるわけでもないです」と明言している。
剣持刀也とピーナッツくんといえば、2018年から8年間、毎年12月25日に「刀ピークリスマス」という配信企画を実施していることでお馴染みだ。ピーナッツくんが(一方的に)剣持刀也にあの手この手で愛を囁くという配信で、2025年の配信では同時接続者数234,000人を記録するほどの大人気コンテンツに上り詰めている。
刀ピークリスマスで毎年剣持刀也のために「テーマソング」を作って送っているピーナッツくん。その中で剣持刀也に対して「ROF-MAOをやめろ」といじるネタは、毎回お決まりのネタになっていた。
今回は「刀ピークリスマスのテーマソング」の中で歌われてきた「ROF-MAO」に関連する歴史を追ってみたい。
あらかじめ言っておくと、「刀ピークリスマスのテーマソング」は、2018年の初回から毎回披露されている(2018年版は配信の8分頃から)が、2018年と2019年は特に何かに対して「やめろ」という歌詞はない。
ちなみに、2019年版からは曲の締めにASIAN KUNG-FU GENERATIONの「リライト」のサンプリングが入っており、もうひとつの定番ネタになっている。
にじさんじからの脱退を歌っていた2020年
ROF-MAO結成前の2020年。「刀ピークリスマスのテーマソング」では当然ROF-MAO関連の文言はなかったが、その原型にあたるフレーズがあるので、「ろふまおなんかやめろ」の歴史の入り口として触れておきたい。
2020年版の楽曲では、クリスマスソング定番のちょっと明るくはしゃぐノリのトラックに乗せて、ピーナッツくんがお得意のリリックを披露している。「クリスマスのマッスルドッキング」などのような、おちゃめなノリが強めであることがこの年の特徴だ。
その中で「ガッくんとハピトリ 刀かざにほんまのくずや いっぱいあるやん」と、剣持刀也が参加している様々なユニットの名前を挙げるピーナッツくん。それと比較して「やっぱ刀ピーよ!もしくはピー刀よ!」と、自分たちの組み合わせをプッシュしている。カップリング論争が起きないようにする配慮もこの時期からしっかりとある。
2020年版の特筆すべき点は、「勢いまかせでにじさんじ脱退 いちからもめちゃくちゃショッキング」と、「にじさんじをやめる」ことをネタにしている部分だろう(※「いちから」は現ANYCOLORの旧名)。剣持刀也に対して、所属しているものを辞めて自分のところに来てほしいという思いの丈を伝えるネタが、この時期から既に使用されている。
やめろとはまだ言っていない2021年
2021年の「刀ピークリスマスのテーマソング」は少しアッパーめの曲調になっており、ベッドの中での愛を高らかに歌う楽曲に仕上がっている。特にサビの部分の「もう一泊 もう一泊」は、ピーナッツくんの暴走ではあるものの、その後のシリーズと比較すると、なんだかふたりの幸福が描かれているようで、温かみすら感じられる。
そして、ここで初めて「ROF-MAO」の名前が登場する。「君がロフマオとかまけて どんどん苛立っている」と、素直でかわいい嫉妬心を歌っているのだ。
その後は昨年に続き「やっぱ刀ピーよ もしくはピー刀よ」が入る。まだ「刀ピー」「ピー刀」がROF-MAOより優勢だと、彼が思っているのがよくわかるワンフレーズだ。
以降、彼の愛はさらに暴走を続け、ついに2022年に爆発することになる。
2022年、一気にバズった「刀ピーOVERDOSE」
雰囲気がガラッと変わった2022年のテーマソングは、TikTokやYouTubeで大バズり。記事執筆時点(6月5日)で3912万回も再生されているメガヒットとなった。様々な「踊ってみた」「歌ってみた」動画が、数多くのVTuber・シンガー・ダンサーによってアップされている。
2018年から2021年まではクリスマスソングをパロディ化したようなポップな曲調だったのに対し、2022年版はメロディが重め。歌詞も「血がブワって吹き出して見る天井 一緒に死んでくれますか?」「お揃いのタトゥー掘る近日中に」「ねぇ このまま 殺して?」と、ピーナッツくんの“病み具合”が格段にあがっている。
最も頭に残るのは「刀ピーOVERDOSE」から始まるサビの部分だ。昨年のハッピー感を通り越して、彼は「刀ピー」もしくは「ピー刀」を致死量レベルで過剰摂取しすぎてしまったようだ。キャッチーな「Would you like…Be my own!」の部分がバズを呼んだわけだが、その部分は直訳すると「どうですか、私のものになりませんか?」というヘビーすぎる歌詞だ。今までと比べて、彼の愛がかなりこじれているのがわかる。
そして、ついにここで本稿の主題である「ろふまなんかおやめろ」がフレーズとして登場する。そもそもサムネイルが「(やめろ)」になっているあたり、このパートはかなり思い入れのある、重要なフレーズなのだろう。
昨年(2021年)は嫉妬するだけで済んでいたものの、この年は「ろふまお『なんか』」と語気が強めなところにも注目してほしい。余裕のなさが、リリックから染み出してきている。
なお2023年3月25日に、羽田空港で行われたイベント『Music Unity 2023』にピーナッツくんが出演し、その際にこの「刀ピークリスマスのテーマソング2022」を披露した話を剣持刀也が自身の配信で話している。彼によれば、ピーナッツくんが観客を大いに煽り「ろふまおなんかやめろ」のシュプレヒコールを行ったというのだ。そのくらい、みんなにとって記憶に残るフレーズになっていたのだ。
その話の後に笑いながら剣持刀也が「ぼくははじめからね、いつやめてもいいというテンションでやっているんで、やめろと言われてやめるわけではない」と語っているのは、今の彼の姿勢と一貫しているようで、これも印象的だ。
彼との距離は離れていくばかり 2023年の刀ピークリスマス
2023年は昨年の大バズの影響もあって、今まで以上に多くの人が「刀ピークリスマスのテーマソング2023」を期待していた年になっていた。
疾走感のあるギターが印象的な、比較的明るい曲調にはなっているものの、歌詞を見ていくと、ピーナッツくんの心は少し後ろ向きになっている。ROF-MAOとして活躍し、にじさんじ自体もVTuberシーンの内外で存在感を増していくなかで「君のライブポスター 若い女の子はしゃいで通った 邪魔しちゃいけないんだって」「ぼくだけの存在じゃないことを デカいステージの君を見て思った」と少し距離を置き気味なピーナッツくんの心情が描かれている。ジレンマの中で戦っている様子はいじらしさすらある。
こうなってくると、ふたりが一緒にいられる12月25日の「刀ピークリスマス」のコラボは、まるで織姫と彦星のような(ピーナッツくんからの一方的な)尊さすら感じられる。
昨年が盛り上がりまくっただけに、「興味ないよバズ 欲しいラブ」 というパートには重みがある。「刀ピークリスマスのテーマソング」シリーズはどの作品も人気になってはいるものの、どうバズろうとも、あくまでも剣持刀也という一人の人物にのみ向けた曲なのだ。
この年はかなり早い段階で「にじさんじやめて ていうかろふまおやめて」と言うフレーズが入っている。どちらかというとそこに重点を置いているわけではなく、昨年の「ろふまおなんかやめろ」のサンプリング的な使い方のように感じられる。
むしろその前にある「ぼくをもっと気にかけて」の部分の方が、メッセージとしては真摯かもしれない。どんどん距離が離れていくのを感じたピーナッツくんの、直球な思いが伝わってくる。ややねっとりとした「とうや」という呼びかけは、剣持刀也が愛を公言してはばからない天宮こころのサンプリングを思わせてついつい笑ってしまう部分があるものの、今までの流れを追っていると、二人の間に距離ができたかのようでちょっと切なくみえる歌詞でもある。
なお刀ピークリスマス本編では、ピーナッツくんの友達チャンチョが登場し、剣持刀也の1年後を未来視している。その中でピーナッツくんが1年後の「ROF-MAO」の新メンバーとして参加する、というネタが披露されている。
この話題にあわせて、剣持刀也はROF-MAOスタッフから、ピーナッツくんの曲がバズったことに関連して「なにかしますか?」と言われたことを明かしている。その際「絶対にやめてください! あいつの名前は絶対に使わないでください!」と拒否したそうだ。
禁断を乗り越える、シンフォニックな2024年
ピーナッツくんとたびたびタッグを組んでいるnerdowitchkomugichanをトラックメイカーに迎えた2024年のピーナッツくんの新曲はイントロ部分からインパクト抜群だった。ギリシャ語でのコーラスから入るメロディは、今までと比較にならないくらい壮大で、剣持刀也ですら「今までと全然違う!」「音楽としては面白い」と驚いたほど。
「失脚の天使には後悔を」「天地創造と十字架 この楽園から追放せよ」といった、神話や聖書をモチーフにした歌詞の意味を読解しようとする刀ピーガチ勢もコメント欄やSNSで現れるようになった。「刀ピーが作るのは新時代 ピー刀が作るのはきんぴら」の「きんぴら」の意味を真剣に考えるファンの姿もちらほら見られた。なおピーナッツくんは「刀ピークリスマス」本配信の中で「解釈は色々あるから」「信じたいものを信じていただいて」と語っている。
そしてROF-MAOについては「ろふまおはよやめて」と、脱退を急かすようなフレーズになっている。とはいえ神と人間の話まで持ち出すほど、神話的なまでに愛のスケールが膨らんでいるので、逆に抽象化されていない具体的フレーズが、今年も出てきて安心するレベルだ。
むしろこんなジャンルまで作れるのだと、ラッパーとしてのピーナッツくんの音楽性の高さを突きつける、迫力のある一作に仕上がっている。
続くのか終わるのか? 14分超えの2025年
冒頭で「今日が最後のクリスマスかも」という歌詞が入って、剣持刀也が喜んだ2025年版は、まさかの14分超えの超ロング曲。チルなバラード形式へと変化している。
2018年からスタートした「刀ピークリスマス」を振り返る歌詞は、まるでエンディングテーマのよう。そして何度も入る「ありが刀ピー さよならピー刀」というバースで「これが最後の刀ピークリスマスなのか?」とリスナーを焦らしに焦らしを重ねつつ、結局は終わるのかどうかはわからないまま幕を閉じる。
この年もしっかり、ROF-MAOネタが入っている。「そういえば ろふまおってなに? 正直もうやめてほしいよ」というパートが11分半近くになってやっと入ってくる。これにはコメント欄も「きたー」「ノルマ達成」と、待ってましたと言わんばかりの反応。
それどころか「にじさんじ ANYCOLORやめてほしいよ」とまで追い打ちをかけるのも、今までの刀ピークリスマスを見てきた層なら、むしろフレーズとして出てきてくれてホッとできるものだったはずだ。
まさかこれが、最後のノルマ達成になるとは当時誰が思っただろうか。
ピーナッツくんからの「おつかれ!」
ぽんぽことピーナッツくんによる「ぽこピーのゆめうつつ」の17分30秒以降で、ROF-MAOを本当に修了してしまった剣持刀也について、ピーナッツくんが触れている。ぽんぽこはその報道を聞いたピーナッツくんに対して「焦った?」と笑いながら聞いているものの、ふたりは「おつかれ!」と力強く剣持刀也に対して言葉を投げかけている。
今年の12月25日に、刀ピークリスマスが開催されるかどうかはわからない。少なくとも剣持刀也は早く終わらせたいと配信上では言い続けてきた。しかしピーナッツくんは2025年の本配信ラストで「また来年!」と言っているので、その言葉を信じたい。
次の「刀ピークリスマスのテーマ」では逆に「Cellmatesはやめるな」と歌ってくるだろうか、そして「リライト」のサンプリングはちゃんと入るのか。今年も楽しみに年末を待ちたいと思う。