米カリフォルニアで「ゲーム保護法案」が前進 運営型ゲームの“終わり方”をめぐる論争と日本の事情とは

 ソーシャルゲームやFPSゲームなど、運営型のゲーム(ライブサービスゲーム)が当たり前になっている現在。ある日突然サービス終了を告げられ、自分の持っていたデータが無意味なものになる……という可能性が日常に入り込むようになった。こうしたゲームのあり方が、海外では激しい論争の的になっているようだ。

海外で進む、ゲームを「守る」ための法整備

 たとえば5月半ばには、米国のカリフォルニア州で「Protect Our Games Act(ゲーム保護法案)」と呼ばれる法案が大きな話題を呼んでいる。

 これはゲームをサービス終了させる事業者に対して、ゲームを引き続きプレイできる独立した環境の用意や、それができなかった場合のユーザーへの返金の義務付けなどを要求するもの。5月14日に州下院の歳出委員会を通過したのち、5月27日には州下院の本会議で賛成多数により可決。現在は州上院へと送付され、6月に委員会での審議が予定されている。

 またこれ以前から、ヨーロッパでは「ストップ・キリング・ゲームズ」という運動が熱狂的な盛り上がりを見せていた。直訳すると、「ゲームを殺すのをやめろ運動」。サービス終了でゲームが死を迎えることに対して、消費者として批判の声を上げ、法整備を進めよう……というのが基本的な主張だ。

 この運動が広まったのは、『ザ クルー』というオンラインレースゲームがきっかけ。同ゲームは2024年3月に全プラットフォームでのサービスを終了させたのだが、終了後にゲームがプレイ不可になる形での幕引きだった。これに対して米国のYouTuberであるRoss Scott氏が声を上げたところ、ネット上で賛同者が相次ぐことになった。

 大規模な署名運動が展開された結果、4月16日には欧州議会の公聴会で、5月21日には欧州議会の本会議で取り上げられることに。消費者保護の視点から法整備が議論されており、もし実現すればEU圏内で展開されている日本や中国のゲームも対象になる見込みだ。

ゲームは“所有物”か“利用許諾”か――業界からの慎重論

 こうした運動の背景にあるのは、一度購入したゲームが企業側の都合によって遊べなくなることを理不尽だと感じる人々の感情だ。法制化にあたっては基本的に有料ゲームのみが対象とされているものの、基本プレイ無料ゲームに関しても保護を求めるユーザーは多い。

 一方で、運動の主張がそのまま通ることに対しては、業界や開発者の側からも少なからぬ慎重論が上がっている。運営型ゲームは継続的なサーバー費用や運営体制を前提に成り立っており、採算が合わなくなったタイトルを永久に維持し続けるのは事業として現実的ではない、というのが基本的な立場だ。

 実際、サーバー側で進行を管理するライブサービスゲームを終了後にオフラインや私的サーバーで再現するのは技術的にも容易でなく、すべてのタイトルに同じ対応を求めるのは現実的でないとの指摘もある。終了後にコピーの破棄を求める規約自体も決して特殊なものではなく、『FINAL FANTASY VII REMAKE』をはじめ多くのEULA(使用許諾契約)に存在しており、ゲームを“所有物”ではなく“利用許諾”として扱うこと自体が業界の広い商慣行でもある。

『NieR Re[in]carnation』私設サーバー論争 “文化の保護”か“海賊版”か?

 実際に今年4月には、2024年にサービス終了となった『NieR Re[in]carnation』をめぐる論争がSNS上を騒がせた。熱心な海外ファンが同作のプライベートサーバーを公開する形で、プレイの継続を可能にしたことで、激しい賛否を呼んだのだ。擁護派からは法的には問題がないという意見や、文化的な財産を守るためには仕方ないという意見が出た一方、「海賊版と同じなのではないか?」という批判も相次いだ。

 こうした展開からは、海外で消費者の権利尊重やゲームの文化的価値を重んじる声が強いことがうかがえる。もっとも、前述の通り海外でも賛否は激しく割れており、「消費者の権利か、開発者・事業者の自由か」で世論が一枚岩になっているわけではない。

日本で「ストップ・キリング・ゲームズ」への共感が広がりにくい理由

 また、日本で「ストップ・キリング・ゲームズ」への共感が大きく広がっていない背景には、価値観の違いだけでなく、市場構造の違いもありそうだ。運動が主な対象とするのは買い切り型の有料ゲームだが、日本市場の主力は基本プレイ無料のスマホゲームやMMOで、「購入」という形を取らないため、現状では運動の射程に入りにくい。こうした事情が、この問題を“自分ごと”として捉えにくくしている一因と見ることもできる。

 とはいえ日本でも、運営型ゲームをめぐる法整備が進んでいく可能性は大いにあるだろう。とくに“ガチャ”が実装されているソーシャルゲームなどでは、数万円、数十万円と課金するユーザーも少なくない。それほどの大金をつぎ込んだゲームが、サービス終了により跡形もなくなってしまうことについて、疑問を持つ人も多いはずだ。一方で、過度な義務付けがかえって新規タイトルの開発や挑戦的な運営を萎縮させかねない、というバランスの問題も無視はできない。

サービス終了後の“理想形”と、これからのユーザーと運営の関係

 なかにはサービス終了後、オフライン版といった形でゲームプレイが可能な環境を残すゲームも存在する。たとえば2022年にサービス終了となった『東方ダンマクカグラ』は、オフライン版として『東方ダンマクカグラ ファンタジア・ロスト』をリリース。オフライン版の開発費にはクラウドファンディングで集めた資金が使われ、新規楽曲の実装やDLCの配信なども行われた。サービス終了したオンラインゲームの、理想的なあり方の1つと言えるかもしれない。ただし、開発費を別途募らなければならなかったことからもわかるように、こうした対応には相応のコストと体力を要する。すべての運営元が同じことを実現できるわけではない点も、あわせて押さえておきたい。

 ヨーロッパや米国で法制化に向けた議論が進むなかで、日本でもあらためてこの問題が脚光を浴びるはず。消費者の権利保護と、事業者が持続的にゲームを生み出せる環境の両立は容易ではないが、運営とユーザーのよりよい関係性が模索されていくことを祈りたい。

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