なぜ今「iFLYTEK」なのか AIが浸透する2026年、音声AIのパイオニアが仕掛けるハードウェアへの意欲
リアルサウンドテックでは、iFLYTEK(アイフライテック)について度々取り上げてきた。その理由のひとつとして、AIが注目される現代において、音声認識とAIに強いiFLYTEKの製品をスルーするわけにはいかないからだ。
1999年の創業以来、iFLYTEKは音声認識・音声合成を中心に技術開発を進めてきた。深セン証券取引所に上場し、研究開発投資にも積極的な企業として知られる。音声合成の分野では14年連続国際コンテスト1位のほか、音声翻訳ワークショップや国際音声認識コンテストなどでも高い実績を残している。ディープラーニングが一般化する以前よりこの分野をリードしてきた、音声AIのパイオニアだ。
だが、近年のiFLYTEKはハードウェアが面白い。特に日本のクラウドファンディングサイトMakuakeにて日本上陸を果たした『AINOTE Air 2』は、達成率43185%。続く『AINOTE 2』のクラウドファンディングプロジェクトでは歴代ランキング第3位・達成率93750%(2026年3月現在)という、すさまじい人気と注目を記録した。
なぜ今になって、iFLYTEKがこれほど注目されるようになったのか。その理由は、やはりAIの普及が要因に挙げられるだろう。
オンラインでもオフラインでも戦えるAI
ChatGPTやGrokなど、対話型のAIサービスを使うことは今では珍しくない。音声認識の世界では2010年ごろから深層学習が活用され始めたが、現代ではよりブラッシュアップされ、口語的な会話の認識精度も非常に高くなっている。「AIに話しかける」という行為への慣れと、自然言語的な音声の認識。この両面が伸びたことは、AIボイスレコーダーの流行を後押ししたといえる。
しかし、中身(アルゴリズム)が優れていても、実際に人間が触るのはインターフェース。そこで重要になるのが、ハードウェアデザインだ。
日本でiFLYTEKが認知されるきっかけとなった『AINOTE Air 2』は、優れた音声認識機能と電子ノートを融合させた。この組み合わせは感度の高いビジネスパーソンを唸らせ、高いクラウドファンディング成功率を収めた。ただの電子ノートではなく、録音・文字起こし・OCR(光学的文字認識)・生成AIを活用した機能まで備えている夢のスーパー電子ノートだ。
一方で、オリジンともいえるボイスレコーダー分野でも進化を続けている。小型で持ち運びやすい『VOITER SR302 Pro』、高性能なマイクを備えた『VOITER SR502J』、そして20m離れていても集音可能なフラッグシップ『AI Recorder S6』。これら3機種はオフラインでもリアルタイム文字起こしが可能で、記者やジャーナリストようなプロフェッショナルな職業にとっては心強い存在だろう。
オフラインでの処理を実現するためには、言語モデルの軽量化や最適化が必要。さらに高性能なマイクも欠かせないし、それらを処理するプロセッサーの最適化も必要。ソフトとハードの両面が揃っていなければできないことを、iFLYTEKは実現できているのだ。
AIネイティブ時代の、情報へのアプローチ
AIがビジネスでもプライベートでも欠かせない存在となったことで、個人の人間が扱う情報量はさらに加速している。そのため、従来ではデータに対し「どう自分で記録・記憶するか」というアプローチが求められていたのに対し、クラウドやAIが主流となった現代では「どう情報をアウトソーシングするか」が求められることが多い。
いわばタイパ主義ともいえるが、そうでもしなければ大量の情報をチェックするだけでも時間と思考のリソースを持っていかれてしまう。そこで便利なのが要約機能だが、これこそAIが得意とするところだ。
では、ビジネスにおいてはどのようにしてタイパを追求できるだろうか。会議の議事録作成、手書きメモの電子化、授業内容の振り返りと要約など、日々の雑事を一元化する方法はないものか……。
これらのニーズに応えるのが、iFLYTEKというわけだ。自分よりも効率的に情報を記録し、まとめてくれる。そんなデバイスがあれば、自分はもっと他の業務にリソースを注ぐことができる。あるいは時間を効率的に使うことができる。
それこそ「ChatGPTは自分のことを自分以上に知ってくれている」という認識もあるように、特定の分野では自分よりもAIに任せたほうが良い結果が得られるシーンは少なくない。少なくとも音声認識において、iFLYTEKは世界中から信頼されているといえるだろう。
ハードウェアAIはさらに身近な存在に
2025年末には『AIWATCH』なるスマートウォッチで録音・文字起こし・要約などが可能で、さらに心拍数や歩数測定といったアクティビティログとしての役割もこなせるスグレモノを発表。「会議にボイスレコーダーを持って行くの忘れた!」という人も、腕時計で録音できるなら忘れようがないだろう。
このように、iFLYTEKはまだまだ攻めの姿勢を見せている。業界をリードする音声認識技術を、どんなパッケージにしてユーザーに届けていくか。いまはコア技術を様々なカタチに変えてみて、ユーザーの反応を確認している段階なのだろう。
iFLYTEKの次の一手は、どんなカタチなのか。 次なるデバイスの登場がこれほど待ち遠しいメーカーは、そう多くはない。今後の動向から目を離せないガジェット界の希望の星だ。