川崎駅前に新アリーナ、2030年10月開業へ 「世界最先端のエンタメシティ」が始動
1月29日、神奈川県川崎市にて株式会社DeNA(以下、DeNA)と京浜急行電鉄株式会社(以下、京急電鉄)による「Kawasaki Arena-City Project」新パートナーシップ締結発表会が開催された。この日、これまで2030年頃としていた新アリーナの開業時期を「2030年10月」と定め、同年秋のBリーグ開幕に合わせる方針が決定。あわせて、川崎に創業のルーツを持つ味の素株式会社、三菱化工機株式会社の2社が新たにパートナーとして参画することが発表され、新アリーナを中心とした壮大な街づくり構想の全貌が明らかになった。
発表会の冒頭、主催者を代表して登壇したDeNA代表取締役社長兼CEOの岡村信悟氏は、昨今の経済情勢や建設コスト高騰の影響で計画に遅れが生じていることに触れつつ、次のように力強く宣言した。
「プロジェクト自体は2年遅れておりますけれども、そういうことも糧にしながら、例えば予定をしております場所には(暫定活用施設として)『Kawasaki Spark』という新しい公園のような形でご利用いただくなど、とにかく転んでもただでは起きない。それを力にしていくという形でやってまいりました」
岡村氏は、今回のプロジェクトが単なるアリーナ建設にとどまらず、川崎という土地が持つ「イノベーションを生み出す力」を背景にした新たな価値創造への挑戦であると強調。「DeNA自体だけでは何もできません。本日、新しい仲間2社をお迎えして、さらにこれからもたくさんの仲間をお迎えして、市長の下、全体として川崎から世界に発信をしていくアリーナシティプロジェクトをぜひ成功させたい」と、新体制での船出に決意を滲ませた。
プロジェクト推進責任者、DeNAの元沢伸夫氏は、具体的なスケジュールと開発ビジョンを提示した。工事着工は2027年中を予定し、開発エリアはJR川崎駅北口から京急川崎駅周辺、さらにアリーナ裏手の多摩川河川敷までを含む広大な一帯となる。「アリーナという『箱』を作るプロジェクトではありません。アリーナを核とした『街』を作るプロジェクトでございます。ここが世界を含めて昨今、様々なアリーナプロジェクトがございますが決定的に違うポイントでございます」と述べ、150万人都市の駅前かつ羽田空港至近という世界的にも稀有な立地特性を活かし、「ハード(街と調和した開発)」「ソフト(街を賑わせるコンテンツ)」「サステナ(街の基盤整備)」の3要素を融合させる方針を示した。
特にハード面の目玉として、アリーナ屋上に設置される1万人規模の広場「ルーフトップパーク」の計画を披露。「世界初・世界最大級の規模となり、多摩川の景色を楽しめる市民の憩いの場となる」と自信を見せた。
本プロジェクトの中核をなすのが、この日発表された社会実装型サステナビリティプラットフォーム「Kawasaki 2050 Model」だ。2050年のカーボンニュートラルなどの国際目標達成に向け、DeNAと川崎ブレイブサンダースがパートナー企業との共創する仕組みである。元沢氏は「Climate Change(気候変動)」「Nature Positive(自然再興)」「Circular Economy(循環経済)」「Human Empowerment(個性の躍動)」「Well-being(心身の健康)」の5大テーマを掲げ、カーボンネガティブアリーナの実現や、多摩川の生態系改善、廃棄物の90%再資源化といった具体的な数値目標を設定。「ボランティアではなく経済活動として、社会価値と経済価値を両立させる」とし、アリーナを中心とした大規模開発としては世界初となる環境認証「LEED for Communities」の取得を目指す考えも明らかにした。
このビジョンに共鳴し、強力なパートナーとして名乗りを上げたのが、川崎に深いゆかりを持つ2社だ。味の素株式会社からは取締役代表執行役社長最高経営責任者の中村茂雄氏が登壇。100年以上前に川崎工場で創業の礎を築いた歴史を振り返り、「我々にとって川崎は特別な地」と語った。同社はアリーナ屋上の「ルーフトップパーク」のネーミングライツを取得する予定だ。「本プロジェクトは単なる新アリーナの建設にとどまらず、川崎という地域の価値を高め、未来に向けた新しい街の在り方を示すチャレンジングで象徴的な取り組みであると考えております」 と述べた中村氏は、同パークを起点に食とヘルスケアを中心としたウェルビーイング創出の場を提供するとし、川崎ブレイブサンダースと連携してきたフードロス削減活動などの取り組みをさらに進化させていく構想を語った。
また、川崎で創業90周年を迎えた三菱化工機株式会社からは、代表取締役社長執行役員の田中利一氏が登壇。同社の環境技術を活かした「水素由来クリーンエネルギーのサプライチェーン構築」を宣言した。田中氏は、本社工場で製造した水素をアリーナへ運び、燃料電池で電力供給を行う「地産地消モデル」の実証実験を行う計画を披露。「市民の皆さんが生活している街中での水素常設稼働設備の検証・実証をしてまいります」と意気込み、将来的には下水汚泥や食品残渣由来のバイオガス水素の活用も視野に入れていると述べた。
会見には、行政と共同事業者を代表して川崎市の福田紀彦市長と京浜急行電鉄株式会社 取締役社長の川俣幸宏氏も出席し、エールを送った。福田氏は「この数年間、世の中の動きというのは本当に大きな変化があって大変厳しい中、それでも決して歩みは止めていたわけではありません。DeNAさんがしっかりと計画を深度化されてきたこの期間だと思っています」と評価。「世界に最も近い川崎の駅前で、自然と産業が見事に調和した世界最先端のエンターテインメントシティがこの川崎から発信できるというふうに思っていますし、そのこと自体が川崎市民にとっても誇りとなる」と期待を寄せた。
京急電鉄の川俣氏も「京急も創業から127年、川崎がスタートの地。環境配慮に優れた乗り物での来場促進という面でも貢献できる」と述べ、創業の地でのプロジェクト成功に向けた協力を約束した。