加藤シゲアキが作家・監督として語った“クリエイティブとの関わり方” 『Adobe MAX Japan 2025』登壇セッションレポート
2025年2月13日、東京ビッグサイトで行われた『Adobe MAX Japan 2025』のセッションに加藤シゲアキ氏が登壇した。セッションタイトルは「短編映画『SUNA』制作に見る、加藤シゲアキの挑戦と哲学」。加藤氏が監督・出演した5月公開予定の短編映画『SUNA』の制作を通して、同氏のクリエイティブへの哲学を伺うと言った内容だ。聞き手はアドビ株式会社のマーケティングマネージャー・田中玲子氏。
本稿ではセッションの様子を伝え、後半では加藤氏との対面インタビューの様子を掲載する。インタビューではクリエイティブの原点や生成AIに対する葛藤など、貴重なお話を伺うことができた。
加藤氏は2003年からアイドルグループ・NEWSのメンバーとして活動するほか、2012年には小説も出版し、2021年・2023年には直木三十五賞候補に選出されるなど作家としての顔も持つ。フィルムカメラでの撮影や映像編集も手掛けており、マルチなクリエイターとして活躍する。
自身の創作活動の原点を振り返り、「幼少期からものづくりが好きであり、最初の夢は発明家だった」という加藤氏。5歳の頃に描いた絵本を紹介し、子どもの頃から物語を作ることに魅力を感じていたと話した。また、コロナ禍では絵本を制作してYouTubeでの読み聞かせを行うなど、新たな創作活動にも挑戦した。
アドビのクリエイティブツールに関しては、小説執筆や映像制作のために『Adobe Premiere Pro』や『Adobe Lightroom』を活用していると語る。
また加藤氏は、映像やデザインを理解することで、より良い舞台、ひいては作品作りに貢献できると考えている。ライブ演出やMV制作にも関わるなかで、クリエイターとの円滑なやり取りのためにデザインや映像編集の知識を深めたという。自ら制作を手がけることで、より具体的な指示を出せるようになり、完成度の高い作品を作れるということだ。自身が出演するライブの映像演出において歌詞の表示方法に注目、視覚的なアクセシビリティを考慮し、バリアフリーの観点から歌詞の表示方法を最適化する取り組みを行ったこともあると話した。
小説執筆については、ストーリーの組み立て方やアイデアの発想が語られた。他の創作のアイデアは移動中などに湧くことが多いのに対し、小説は個人的な取り組みの面が強く、自分と対話している時にアイデアが生まれてくるのだという。また、「創作活動をしているときほど、小説のアイデアがどんどん湧いてくる」とも話した。
長編と短編では執筆方法が異なり、長編ではキャラクターと“共に物語を進める”ことが多く、短編では構成をしっかりと決めることが重要だと説明する。たとえばミステリー作品ではプロットを事前に緻密に組み立てる必要があり、その点で短編映画の脚本と似た部分があるとも語る。
今回制作した短編映画『SUNA』についても詳しく語った。この作品は、愛知県・東海市と協力して進めたプロジェクトであり、加藤氏自らが監督・脚本を務めた。映画のテーマは「砂」をめぐる事件と怪奇現象であり、ホラーやサスペンスの要素を取り入れたエンターテイメント作品になっている。
加藤氏は制作の最初の背景について作品が「15分未満でなければいけなかった」という制約があったことを振り返りつつ、「短編映画でも2時間映画に匹敵するような濃密な物語を作りたかった」と、その中でしっかりと起承転結を持たせた物語を作ることを目指したと話した。作品の手応えについて尋ねられた加藤氏は「ぜひ本作で短編映画の自由度、面白さを体験して欲しい」と意気込んだ。
セッションの最後には、クリエイティブに挑戦したい人々へのメッセージも。加藤氏は、現代はデジタルツールの普及により、誰でも創作に取り組める時代になったが、その分個性を磨くことが重要であると強調。継続的に努力し、試行錯誤を重ねることで、より良い作品を生み出せると述べた。また加藤氏自身の展望については、多様な創作活動を通じて得た経験を活かし、今後も新たな表現方法に挑戦し続けたいと語った。