『プロセカ』の物語は、より大きな世界を舞台に続いていく――『プロジェクトセカイ 4th Anniversary感謝祭』レポート

 スマートフォン向けリズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、『プロセカ』)が、2024年9月30日にリリース4周年を迎えた。それに先駆けた9月28日、横浜BUNTAIにて「プロジェクトセカイ 4th Anniversary感謝祭」が行われた。

 イベントでは、キャスト陣からのメッセージの展示やパネル展示が行われたほか、トークショー、朗読劇、ミニライブから成る公演も行われた。本稿では、昼公演の模様をレポートする。

バラエティ豊かな楽曲に見る、ボカロカルチャーの“懐の深さ”

 3周年から4周年への橋渡しをするかのように、公演は3周年アニバーサリーソング「NEO」(作詞・作曲:じん)をバックにした映像から始まった。キャラクター一人ひとりが4周年を迎えたことへの感謝を伝えるムービーが流れたのち、この日の出演者全員が登場。4周年への感謝やこの日の公演に向けた思い、キャラクターのコール&レスポンスを使った挨拶で早速会場を盛り上げる。

 このイベントのために描き下ろされた朗読劇では、野口瑠璃子(星乃一歌役)、中島由貴(日野森志歩役)、本泉莉奈(日野森雫役)、今井文也(東雲彰人役)、伊東健人(青柳 冬弥役)、土岐隼一(神代類役)、田辺留依(朝比奈まふゆ役)、鈴木みのり(東雲絵名役)が登場。さらに回想シーンとして挟まれた映像では、イベントへの参加が叶わなかった宵崎奏(CV:楠木ともり)、望月穂波(CV:上田麗奈)も登場した。感謝の気持ちを伝えることをテーマにアドリブも交えながら行われた朗読劇は、生パフォーマンスだからこそ演者の身体を使った表現なども垣間見ることができ、臨場感とユーモアのある演技に客席からは時おり歓声も飛び交っていた。

 続くトークショーには、礒部花凜(天馬咲希役)、小倉唯(花里みのり役)、吉岡茉祐(桐谷遥役)、秋奈(小豆沢こはね役)、鷲見友美ジェナ(白石杏役)、廣瀬大介(天馬司役)、Machico(草薙寧々役)、佐藤日向(暁山瑞希役)が登場。3周年を迎えたタイミングで進級したキャラクターたちのさらなる成長を振り返るとともに、3DMVの好きなシーンなどをたっぷりと語り合う。

 そしていよいよ公演はミニライブへ。

Vivid BAD SQUAD

 ステージ2階から登場したVivid BAD SQUADの秋奈、鷲見友美ジェナ、今井文也、伊東健人の4人は「シャンティ」(作詞・作曲:wotaku)を披露。時おり向かい合いながらクールに歌い上げると、25時、ナイトコードへ。の面々へとバトンタッチ。田辺留依、鈴木みのり、佐藤日向が登場すると「エンヴィーベイビー」(作詞・作曲:Kanaria)へ。毒っ気のある楽曲の中に潜むキュートなラインでの3人それぞれの決めポーズが熱狂的な歓声を呼ぶ。MORE MORE JUMP!の小倉唯、吉岡茉祐、本泉莉奈による「メランコリック」(作詞・作曲:Junky)では、それまでとはがらりと雰囲気を変え、かわいらしい空気に包まれた。ユニットごとに1曲ずつメドレー形式で楽曲が披露されていくことで、これまで5つのユニットが歌ってきた楽曲の方向性の違いが浮彫りになると同時に、これほどバラエティに富んだ楽曲たちが生み出されてきたボーカロイドカルチャーの懐の深さも感じさせる。

 また、それぞれのユニットのイメージに合った衣装も見どころ。ユニットのコンセプトに沿った衣装があることによって、より声優とキャラクターのイメージが重なり、フィクションとノンフィクションが溶け合うような没入感を醸し出していた。

MORE MORE JUMP!

 「グッバイ宣言」(作詞・作曲:Chinozo)を披露したワンダーランズ×ショウタイムの廣瀬大介、Machico、土岐隼一は、ヘッドセットマイクを着用して登場。男女ボーカルで広い音域のハーモニーを聴かせながら、ボーカロイドシーンを越えて話題になったサビの振り付けを踊って盛り上げる。『プロセカ』唯一のバンドユニット、Leo/needは「東京テディベア」(作詞・作曲:Neru)を披露。原曲もベースラインの映える楽曲だが、メドレーの中で聴くととりわけバンド感の際立つサウンドで、ユニットごとの方向性を際立たせた。

ワンダーランズ×ショウタイム

4周年アニバーサリーソング「熱風」はこれからのアンセムに

 ここまでは『プロセカ』のオリジナルキャラクターを演じる声優のみでライブを繰り広げてきたが、ミニライブ後半ではバーチャル・シンガーとともに、ゲーム内イベントの書き下ろし楽曲を披露する。

25時、ナイトコードへ。

 ニーゴのメンバーと鏡音リンは「エンパープル」(作詞・作曲:はるまきごはん)を披露。ステージ後方の大型スクリーンに登場する形で姿を見せたバーチャル・シンガーは、ステージを大きく左右に動きながら、ダイナミックなパフォーマンスを見せていた。プロセカのユニットの中でもとりわけ強い孤独感を抱いているメンバーの多いニーゴのパフォーマンスは、リンのいる二次元と、声優陣の踊る三次元の距離感を意識的に遠くしていたように思う。一方、ワンダショと巡音ルカによる「Mr. Showtime」(作詞・作曲:ひとしずく×やま△)では、次元を超えてアイコンタクトを取ったりフォーメーションを作ったりと、ショーユニットならではの息ぴったりのステージを見せた。

Leo/need

 KAITOとともに「虚ろを扇ぐ」(作詞・作曲:獅子志司)を歌ったビビバスは、ストリートユニットだけあって、フェイクのアレンジや向かい合って歌うパフォーマンスで特にライブ感が光る。鏡音リンとモモジャンによる「天使のクローバー」(作詞・作曲:DIVELA)ではコール&レスポンスも行われ、一気にアイドルイベントの賑やかな雰囲気に。そして手拍子とともに、初音ミクとレオニによる「てらてら」(作詞・作曲:和田たけあき)へと続いていく。

 キャラクターの思いを汲みながら楽曲を書き下ろすボカロP、キャラクターを近くで感じ声を吹き込む声優たち、そして彼女たちの物語を見守るプレイヤー。どの存在が欠けてもキャラクターたちの物語は成立せず、皆で群像劇を作り上げてきたのだと思わせるような一体感が会場には満ちていた。

 アンコールでは、鏡音リン、レンによる「バグ」(作詞・作曲:かいりきベア)、MEIKO、KAITOによる「ニジイロストーリーズ」(作詞・作曲:OSTER project)、初音ミク、巡音ルカによる「君の夜をくれ」(作詞・作曲:古川本舗)と、バーチャル・シンガーのみでのパフォーマンスも繰り広げられた。

 イベントを締めくくるのは、出演者全員と初音ミクによる4周年アニバーサリーソング「熱風」(作詞・作曲:kemu)だ。4周年を迎えるまでに、ビビバスは大きな壁を越えその先の景色を模索するようになり、レオニはプロデビューを果たした。キャラクター自身の悩みや葛藤を中心に描かれていた『プロセカ』の物語は、その側面も残しつつ、4年の時を経てより大きな世界を舞台にした物語へと変化している。そんないまだからこそ、サウンドがスケールの大きさを思わせ、これまで歩んできた過去とこれから歩む未来どちらにも目を向ける「熱風」は、これまでも十分に成長を見せてきた彼女たちが、さらなる広大な世界へと足を踏み入れるためのアンセムになるはずだ。

 4周年までの感謝を共有し、「熱風」で今後の歩みへの期待を高め、幕を閉じた感謝祭。それぞれのキャラクターがこれまで以上に成長を遂げ、見渡す世界の大きさも変わっているであろう5周年を迎えるときは、どんな景色をファンと共有するのだろうか。気が早いかもしれないが、そのときがいまから楽しみでならない。

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