ターゲットはあえて“絞らない”? 全年齢対象あるある動画が話題の「高木払い」の魅力とは

 「あるあるネタ」に旋風を巻き起こしている、「高木払い」というTikTokerを知っているだろうか。実際に会ったことがなくとも人物が思い浮かび、「こんな人いたかも」と思わせるリアルな「あるあるネタ」動画がInstagramのリールやTikTokで流れてくるので、ネタだけ見覚えがある人は多いかもしれない。

 鉄板ネタとして定着し、レッドオーシャンとも言える「あるあるネタ」。そんななかで彼のあるあるネタは、ほかとはどう一線を画すのか。人気の理由も含めて、本稿で紐解いていく。

 高木払いは、お笑いコンビ『都トム』として活動していた(2024年9月以降はピン芸人)お笑い芸人。TikTokでは25万人フォロワーがおり、総いいね数は約810万いいねを獲得している。(2024年9月2日時点)

 高木払いの動画を見ていくうちに人気を集める二つの理由が浮かび上がってきた。

 まず一つ目の理由として「圧倒的なリアルさ」が挙げられる。動画を見ると、実際に遭遇したことがない人のモノマネでも「たしかにこんな人いたかも」という気持ちにさせるのだ。

加えて、彼自身、奇抜な風体をしていないことにより「一度どこかで出会ったことがありそう……」と感じやすく、リアルさを加速させている。

 実際にTikTokのコメントには「何食ってたらこんな的確なやつ思いつくんだよ」「なんでだろ、居ないけどおるんだよな記憶に」といったネタの解像度を評価するコメントが多く寄せられている。

 人気を集める二つ目の理由は「ターゲットの広さ」だ。TikTokの『あるある動画』は、学生をターゲットにした動画が多い傾向。もちろん、複数のプラットフォームに投稿しているクリエイターもいるため、別の年齢層を狙うクリエイターもいる。しかし、TikTokを主戦場としているクリエイターは、多くのパイを取るためにそういった戦略を取ることが多いように見受けられる。

 しかし、高木払いはTikTokを主戦場にしているのにも関わらず、学生だけでなく、全年齢対象で楽しめる動画が多い印象だ。たとえば、「全てを中止にする『俺は怖い』」というネタ。なにかの話し合いの最中に「いや、でも……俺は怖い!」とシリアスな顔で断言する姿は、会社での打ち合わせはもちろん、学生のサークル内での緊迫した一幕を想起させる。こういった対象を選ばないネタが、高木払いの強みと言えるだろう。

 一方、高木払いと同じ『あるあるネタ』をしている「たつろう」も支持を集めている。たつろうも同じく芸人で、高木払いとの共通点として『細かすぎて伝わらないモノマネ』への出演経験があることが挙げられる。

 両者とも今年の『細かすぎて伝わらないモノマネ2024夏』にも出演を果たした。テレビにも通用する『あるある』ネタで人気を博する両者だが、実はTikTokのコメントには大きな違いがあったのだ。たつろうにも高木払い同様、ネタの解像度の高さに対するコメントが多いものの、高木払いには「こんな人いたかも」というコメントが多いのに対し、たつろうには「これ私かも」といった自分にたつろうを重ねる女子のコメントが多く見られた。一見、両者のターゲットは同じように見えるが、両者の着眼点の違いから支持を集めている層は違うように思われる。

 本稿では、定番ネタである『あるある』ネタ動画で注目を集める高木払いの人気の秘訣に迫った。人気の理由としては、圧倒的な解像度の高さが可能にする、全年齢対象のネタであるからだろう。

 また、『細かすぎて伝わらないモノマネ』の出演者で人気を集めている人はそう多くない。たつろう、高木払いに続き、『リアルすぎるモノマネ』がTikTokに進出することに期待したい。

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