初アプデで好調維持の『The First Descendant』 運営型ゲームの最適解は“ユーザーフレンドリー”か

 7月31日、『The First Descendant』で第1弾となるアップデートが配信となった。

 サービス開始から1か月が経過してなお、多くのプレイヤーに遊ばれ続けている同タイトル。本稿では、『The First Descendant』における調整/アップデートの方向性から、ライブサービスゲーム(※)運営の最適解を考えていく。

※基本プレイ無料・アイテム課金型のマネタイズモデルを持ち、長期の運営を続けることで収益の最大化をねらうゲームタイトルの総称。

ユーザーに望まれた要素が追加された第1弾のアップデート

The First Descendant│First Update│New Descendants and a Boss (Luna, Ultimate Valby, Gluttony)

 今回配信となった第1弾のアップデートには、ひとつのエンドコンテンツと、2人の新規キャラクターが目玉として盛り込まれた。どちらともが現在進行形で『The First Descendant』を遊んでいる層には強く望まれていた要素である。実際にゲーム内ではパッチが配信された直後から、ボス攻略やキャラ作成に勤しむプレイヤーの姿が見受けられる。あわせて、専用のビルドや既存キャラクターとのシナジーに対する考察も進んでいる現状がある。

 コミュニティの反応は概ね好評。リリースから1か月ほどで迎えた第1弾のアップデートは、成功と評価できるのではないだろうか。基本プレイ無料・アイテム課金型のタイトルのなかには、アップデートの方向性が理解を得られなかったことで求心力を失っていくものが少なくない。その意味において、『The First Descendant』は第一関門を突破したと考えることもできる。

 一方で、運営にとっては、運用フェイズへと差し掛かっていくこれからが、本当の意味での正念場であると言える。今後も追加されるであろうエンドコンテンツや、キャラクターや武器のバランス調整といった大きな変更点が明暗をわけるターニングポイントとなっていくはずだ。第2弾以降のアップデートでも今回と同じような評価を得られるかに注目していきたい。

健闘を支える、ユーザーとの二人三脚での運営体制

The First Descendant│Official Launch Date Reveal│Summer Game Fest 2024

 7月初頭のサービス開始時には、多くのプレイヤーが流入したことで話題を集めた『The First Descendant』。「トレンド化は一時的なものになる」という見方も少なからずあるなか、現時点では当初の想定を上回る粘り腰を発揮している。Steamプラットフォームで提供されているタイトルのプレイ状況などをまとめたデータベース・SteamDBによると、直近の同時接続数は安定して10万人前後で推移。記事執筆時点では、多数の人気タイトルがひしめくプレイヤー数ランキングで14位にランクインしている。新規IPがリリース時の勢いを一定程度維持し、いまだ上位にとどまっている状況は、「大健闘」と呼ぶにふさわしいものなのではないだろうか。サービス開始直後に記録した26万強という数字には遠く及ばないが、少なくとも流行に誘われたプレイヤーのみで達成できる数字でないのは間違いない。

 そうした奮闘ぶりを支えているのが、開発/発売元であるNEXONのプレイヤーに寄り添った運営だ。MOとハックアンドスラッシュ、トレジャーハンティングの性質を併せもつ『The First Descendant』においてはリリース直後から、ゲーム内で不足しやすい通貨/素材の効率の良い狩り場が有志によって発見されてきた。そのなかには、運営の意図しないプレイヤーの行動、システムの挙動が前提となっていたものもある。基本プレイ無料・アイテム課金型のマネタイズモデルを持つ同タイトルにとって、そのようなファーミングを許容することは、コンテンツの寿命を短くすることにもつながる。だからこそ、数々のライブサービスゲームの前例にならうのであれば、「報酬をしぼる」という対応が(少なくともプレイヤー側の考える)既定路線だったように思う。

 しかしながら、運営はこれまで、週に一度ほどのペースで実施されているホットフィックスのなかで、単純にそうした場をゲームから締め出すのではなく、その他を上方修正する形でバランスを整えている。たとえば、Hotfix 1.0.4(7月24日配信)における「戦略監視所」のクールタイム短縮や、特殊作戦での「ヴォイドのかけら」のドロップ追加/「手配書」の高価値化はその一例だ。

 当初、プレイヤーたちはパッチの配信によって、“聖地”となっている効率の良い狩り場が失われてしまうと考えていた。そのため、“奪う”のではなく“与える”という行動に出た運営の対応には称賛の声が上がっている。今後もこうした調整の方向性は続くようで、Hotfix 1.0.5(7月31日に上述のアップデートとともに配信)には、こちらもプレイヤーたちから要望の大きかった「利用価値が失われたアイテムの資源化」や「モジュールソケットを再設定できる仕組みの導入」についてが明記された。

 『The First Descendant』が依然として広く遊ばれている背景には、“ユーザーとの二人三脚”を前提にした、好感の持てる運営体制の存在があるのではないか。現在の立ち位置は決して偶発的なものではなく、意図された運営のホスピタリティの賜物であると言えるのかもしれない。

明暗がわかれつつあるライブサービスゲーム市場。「ユーザーフレンドリー」が復調のキーワードに

The First Descendant│Meet Luna│Character Gameplay Trailer

 他方、こうしたNEXONの姿勢からは、ライブサービスゲームの運営における最適解のようなものも見えてくる。先にも述べたように、同分野のタイトルでは従来、「ユーザーに歩み寄った調整/アップデートは控える」という対応が一般的だったように思う。その背景にあるのはおそらく、長期の運営と収益の最大化を目標とする運営側の思惑だろう。コンテンツを消費するスピードを遅らせることで、ライブサービスゲームは制作にかかるコストとのバランスをとってきた面がある。これは昨今のモバイルゲームの台頭とも切り離せない、同分野ならではの象徴的な構造である。

 その一方で、そうした対応はプレイヤーに遊びにくい環境をもたらしてきた。長期の運営と収益の最大化に代表される諸々の事情を度外視し、ユーザーフレンドリーな環境を構築していれば、より長くプレイヤーを囲い込めたタイトルもなかにはあったのではないか。もちろん、そのような前提が理想論であるのは百も承知である。しかしながら、このようにして繰り返されてきた慣例的な対応、特に両者の利益をめぐる均衡点の設定が最善であったかと言われれば、そこには議論の余地があるはずだ。

 「できるかぎりユーザーに歩み寄る」というNEXONの姿勢によって、両者のあいだには良好な関係性が生まれつつある。より広い意味でのユーザーエクスペリエンスに目を向けてコミュニティを形成していくことが、これからのライブサービスゲームには求められていくのではないだろうか。

 まだまだ課題を多く抱える『The First Descendant』だが、リリースからの1か月を踏まえると、先の展開に大きな期待も感じさせられる。昨今はビッグタイトルのサービス終了が話題を集めやすいライブサービスゲーム界隈。復調のカギは、ユーザーフレンドリーな運営体制にこそあるのかもしれない。

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