クセの強いカメラと個性的な球場で見届けた“偉業” 『SIGMA dp0 Quattro』にマダックスを添えて

 リアルサウンドテック編集部による連載「エンタメとテクノロジーの隙間から」。ガジェットやテクノロジー、ゲームにYouTubeやTikTokまで、ありとあらゆる「エンタメ×テクノロジー」に囲まれて過ごす編集部のスタッフが、リレー形式で毎週その身に起こったことや最近見て・試してよかったモノ・コトについて気軽に記していく。第35回は欲しいガジェットをAmazonプライムデーまでカートに入れたままにする戦略をとっていたら、『アメトーーク!』の「家電芸人」の影響で品切れになり、膝から崩れ落ちた編集長の中村がお届けします。

 すっかり暑くなった今日この頃。少し遡って6月16日、炎天下のなかで特別な体験をしてきました。

 特別な場所には特別な電車で向かえ。そんなことを誰かに言われたことがあるような気がするのですが、誰だかは覚えていません。「とびきりいい靴をはくの/いい靴をはいてるとその靴がいい所へ連れて行ってくれる」と言っていたのは『花より団子』の東堂静で、筆者はその影響を大いに受けてスニーカーを買い漁り、豆苗を食べる日々を送った経験があります。

西武特急「Laview(ラビュー)」

 この日乗った特別な電車は、西武池袋線の西武001系電車こと特急「Laview(ラビュー)」。この「Laview」というのは造語で、「L :贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間」「a: 矢(arrow)のような速達性」「view: 大きな窓から移りゆく眺望(view)」という言葉を組み合わせたものだそうです。子どもたちがリビングのテレビで都合200回は再生している鈴川絢子さんのYouTube動画のおかげで、暗記して言えるようになりました。

 そんな子どもたちの影響で時たま特急電車に乗るのですが、この「Laview」は建築家の妹島和世さんが基本デザインを監修しており、電車に疎い筆者でも「かっこいい!」と思える見た目が特徴的。とにかくデカい窓にゆっくりと座れる黄色の座席など、名前にもあるラグジュアリーさで快適な旅を過ごそうかと思ったら……すぐに到着しました。池袋から目的の所沢駅へはわずか20分。手元の原稿は200字しか進んでおらず、コーヒーは半分以上残ったままです。このまま西武秩父駅まで行ってしまおうかしらと思いましたが、時間も迫ってきているので所沢駅へと降り立ちました。

 実は筆者、所沢駅には10年ほど前に住んでいたことがあるのですが、その頃と今ではまったく駅の様相が違います。西武鉄道による再開発が進み、駅ビルが超進化。駅舎も含めて大幅な改装・建築を施し、約18,500㎡の巨大商業施設『グランエミオ所沢』が2021年に完成。今年秋には西口に店舗面積約43,000㎡というさらに巨大な商業施設『エミテラス所沢』が開業します。

 ああ、もう自分の知っている所沢は無くなってしまったのか、と肩を落としながら駅のエスカレーターを降り、所用の前にランチを取るためにプロぺ通りへ向かうと、そこにはファストフード店に手芸屋、ゲーセン、パチ屋が所狭しと並ぶ光景が。かつての混沌(カオス)がまだ残っていることに安心した筆者は武蔵野うどんを平らげ、もう一度電車に乗るのでした。

 西武狭山線への直通電車に乗って、いよいよ目的地である「ベルーナドーム」へ到着。ピンときていない方に向けて、念のため「西武ドーム」と言い直しておきましょう。この構造と歴史は少し特殊で、筆者はそのエピソードが大好きなのですが、ここで語りだすと止まらないので割愛。当日はプロ野球日本生命セ・パ交流戦 2024『西武ライオンズ 対 横浜DeNAベイスターズ』の第3戦が行われていました。

 そういえば、この日の写真はすべて筆者が好んで使っているカメラ『SIGMA dp0 Quattro』で撮影しています。14mm F4レンズ(35mm判換算で21mm相当の画角)を採用し、高い光学性能と91度の広い画角の超広角レンズを持ちながら、歪曲収差は1%以下。ただしレンズは交換不能でズーム機能も使えない、というかなりクセの強いカメラ。形が特殊なため、通常のカメラケースに収まらないこともまた「既存の枠組みにとらわれないぜ!」という意気込みを感じて好きなのですが、カバンにも収納しづらいので、たまに1人でキレることもある愛すべきガジェットです。

 クセの強いカメラ、特殊な球場、そして隣には個性的な編集スタッフ(一緒に野球を観にきました)。これが揃ったからには、さぞすごい試合が観れるに違いない。そんな期待で胸を膨らませて入場ゲートをくぐったのですが、一つ大きな不安がありました。それは今年の埼玉西武ライオンズの成績です。

 大砲・山川穂高選手のFA移籍はあったものの、圧倒的な先発陣を擁したチームということで善戦を期待していた今シーズンでしたが、序盤から圧倒的な打撃不振に加え、エース・高橋光成が不調、平良海馬が怪我で離脱と誤算が相次ぎ、生え抜きのスーパースター・松井稼頭央監督は成績不振もあってシーズン途中で休養。渡辺久信GMが監督代行を務めて2カード目のゲームということもあり、どこかスタンドのファンも緊張感があるように見えました。この日のスタメンも1番に育成から昇格したばかりの奥村光一、4番にヤクルトからトレード移籍してきた元山飛優が入るなど、首脳陣の苦労が伝わってきます。先発ピッチャーは西武がプロスペクトの渡邉勇太朗投手、DeNAは昨年のドラフト5位ルーキーの石田裕太郎投手というフレッシュな2人でした。

 ベルーナドームは屋外型のドーム球場ということもあり、火を使った料理が提供されるので、個人的にはドーム球場の中で一番スタジアムグルメが美味しい球場という印象があります。今回はバックネット裏に近い席ということもあり、筆者はプレイボール前に“おかわり君”こと中村剛也選手のプロデュースグルメである「おかわり焼き」を買って記念撮影……をしている間に、DeNAが桑原将志選手のヒットと期待のドラ1ルーキー・度会隆輝選手のタイムリーとわずか10球で先制。早すぎる。

 これは点の取り合いになるかとワクワクしながら席に戻って以降は、互いに攻め手を欠くイニングが続き、5回までは1-0と重い展開に。しかし6回にDeNAがタイラー・オースティン選手のホームランで追加点を奪うと、佐野恵太選手のタイムリーでさらにもう1点を追加。9回には度会選手の犠牲フライとオースティン選手のタイムリーでさらに2点を奪い、結果的には0-5でDeNAの勝利となりました。結果だけをみるとただ残念な試合に思えるのですが、この日はすごい記録も達成されました。

 DeNAの石田裕太郎投手が9回95球での完封、つまり“マダックス”を達成したのです。

 新人投手のマダックス達成はドラフト制以降16人目で、DeNAでは2008年の小林太志投手以来の達成となりました。「ハマのエクスプレス」……。

試合後にはグラウンドウォークも開催。ベースランニングをする人たちの姿も見られました

 負けた試合も、記録が達成されると「あの試合を見に行ったんだ」とどこか誇らしくなるものです。あれから1ヶ月、西武ライオンズは変わらず最下位にいますが、打線は徐々に上昇傾向にありますし、先日は巨人から松原聖弥選手が、ソフトバンクから野村大樹選手がトレードで加入しました。ここからシーズンが終わるまで、どのような希望を見せてくれるのか、まだ見ぬ若手の活躍にも期待しつつ(個人的に楽しみだった村田怜音選手は左膝後十字靭帯損傷で今シーズン絶望的……)、残りの数ヶ月を楽しみたいと思います。

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