PC接続解禁で、『PS VR2』は“息を吹き返す”のか? 既存デバイスとの比較や可能性を考える

PC接続時の制限多し 基本性能だけで戦えるか?

 では、PCにつなぐVRヘッドセットとして使えるかと言えば、「中途半端」という評価に帰結するだろう。

 まず、PC接続で『PS VR2』を使う場合、以下の機能が使用できないことが告知されている。

・HDR
・ヘッドセットフィードバック
・視線トラッキング
・アダプティブトリガー
・ハプティックフィードバック(※「SteamVR」の標準的な振動には対応)

 平たく言えば、独自機能のいくつかは使えない。フィンガータッチ、シースルービュー、対応ゲームにおけるフォービエイテッドレンダリングは機能するようだが、持ち味の半数が失われており、デバイスとしての魅力は半減している。

 よって、評価軸は基本性能と、独特な形状の「Senseコントローラー」となる。まず、基本性能をあらためて整理すると、「有機ELで4K相当の高解像度」、「視野角110度」、「本体重量約560g」、「ケーブル一本で動作するインサイド・アウト方式」と、一件すると扱いやすく高性能なVRヘッドセットのように見える。

This is Meta Quest 3

 しかし、これと近似する性能のデバイスがひとつ存在する。『Meta Quest 3』だ。ディスプレイは液晶だが、解像度は片目2064×2208、視野角は水平110度、本体重量は515g。PCとの接続はUSB Type-C一本(または無線)。その上、フルカラーのシースルーにも対応と、あらゆる意味でスキがない。

 なにより、『Meta Quest 3』はヘッドセット単独で動作するのがキモだ。『PS VR2』はPS5かPCがなければ動かせないが、『Meta Quest 3』は買ってスイッチを入れてかぶれば、すぐにVR・MRコンテンツで遊ぶことができる。利便性が高さという点で見たとき、どちらに軍配が上がるかは明白だろう。

Introducing Bigscreen Beyond, the world's smallest VR headset

 視点を変えて、「有機ELで4K相当」という画質特化VRヘッドセットとして観てみた場合も、決して優位ではない。特に、ほぼ同格の性能(マイクロOLED、両眼5120×2560)を持ちながら、重量127gという破格の軽さを誇る『Bigscreen Beyond』の存在が大きい。あちらはSteamVR対応ベースステーションが必須、コントローラーも別途必要なので、環境準備のハードルこそあるものの、重さを感じさせないレベルの軽量さはとてつもない魅力がある。

 本記事を執筆している2024年6月時点でも、これだけ強い競合がそろっている。先日Meta社がVR機器用のOSをサードパーティ向けに開放したことも踏まえて、同格の競合機種は時間を追うごとに増え続けていくだろう。

スペックだけなら“もっと上”がいる

 総じて、PCに接続するVRヘッドセットとして使う上では、基本性能においては「悪くはないが、もっと優秀なものがある」という評価にならざるを得ないだろう。さまざまな企業が参入するVRヘッドセット業界は、それだけ競争が激しい。少なくとも、PCにつなぐためだけに『PS VR2』を買うくらいならば、『Meta Quest 3』を買ったほうがよい。

 いちおう、競合機種と比較した場合、8万円程度で購入できる有機EL採用VRヘッドセットではあり、「やや安価な映像表現重視の一台」という立ち位置なら見出だせるだろう。また、「Senseコントローラー」の使用感が気に入るかどうかも、一つの判断材料になるだろうか。

 とはいえ、これまでは限られたVRゲームのみプレイできた『PS VR2』を、ソーシャルVRなどのVRアプリケーションで使用してみると、意外なマリアージュが生まれる可能性はある。実際の使用感については、その手で触れてたしかめてみたいところだ。

 無論、すでに『PS5』と合わせて所持している人ならば、専用アダプターを購入するメリットは大きい。『PS VR2』専用タイトルとは比較にならない数のゲームやアプリケーションが、PC環境であなたを待っている。触れない理由は存在しないだろう。

 また、『PS5』を所持しているが、『PS VR2』未所持の場合は、VRに関心があるならばアダプターと合わせて購入の余地はある。PC環境に広がるさまざまなVRコンテンツも、『バイオハザード RE:4』など『PS5』と『PS VR2』でのみ体験できるVRゲームも、どちらもまとめてプレイできる環境はなかなかに希少だ。

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