“ビジュアルだけ”ではない『Stellar Blade』に感じた新時代の幕開けと、SHIFT UP次作への期待感

　4月26日、『Stellar Blade（ステラーブレイド）』が発売となった。

　さまざまな観点から界隈を賑わせている同タイトル。集まる評価から、ゲームカルチャーに持つ意味を考えていく。

キム・ヒョンテ率いるSHIFT UPがCS機で放つアクションアドベンチャー『Stellar Blade』

　『Stellar Blade』は、キム・ヒョンテ率いる韓国のゲームスタジオ・SHIFT UPが開発を手掛けるアクションアドベンチャーだ。舞台となるのは、凶悪なクリーチャー「NA:tive（ネイティブ）」の侵略によって荒廃した地球。残された人類が安全のために避難した宇宙コロニーの部隊に所属する主人公のイヴは、地球に取り残された生存者のアダム、かつて地球に派遣された空挺隊員であるリリーなどとともに、地球の救出を目指していく。

　特徴となっているのは、美麗なグラフィックのなかで繰り広げられるスピード感のあるアクションと、ソウルライクのサブジャンルにも分類される高難易度。現行機だからこそもたらせるゲーム体験が同タイトルの最大の魅力だ。アメリカの批評サイト・Metacriticにおけるユーザーレビューでは、10点満点中の9.3という高い評価を獲得。この結果により、「（現時点で）最もユーザー評価が高いPlayStation 5向けゲーム」の座に君臨している。

　『Stellar Blade』は、2021年9月に配信されたPlayStationプラットフォームの新作情報番組「PlayStation Showcase」のなかで存在が明かされた。当初は『Project Eve』という名で紹介されていたが、2022年9月に現在のタイトル名へと改称されている。

　PlayStation 5の独占展開で、価格は8,980円（税込）。2024年屈指の注目タイトルがようやく発売日を迎えた。

『勝利の女神:NIKKE』から『Stellar Blade』へと渡されたバトン。今後のSHIFT UP作品に注目

　はたして『Stellar Blade』はビジュアル先行で作られた“イロモノ的作品”なのだろうか。さまざまな国産アクションアドベンチャー／アクションRPGの佳作と比較されやすい同タイトルだが、実際にプレイしてみると、それらのエッセンスを高次元で調和させるというジャンルに対する開発の咀嚼度の高さが目立っていた。

　遊びごたえのあるゲームシステム、美しく爽快感のあるアクション、ポストアポカリプスという人気の舞台設定のなかで描かれる濃密なストーリー、現世代機のスペックを生かした美麗なグラフィック、表現される世界への没入度を高めてくれる演出／音楽など、良い部分は数多くある。無論、なかには物足りなさを感じる部分もあったが、全体としては集まる評価に恥じない出来となっていた。

　世の中にはビジュアル先行で作られた結果、実をともなわず、“イロモノ”の域を出なかったタイトルも少なくない。そのなかにあって『Stellar Blade』がユーザーに与えるインプレッションは、新規IPとして充分な水準にあったと言えるのではないか。このようなゲーム制作への向き合い方は、SHIFT UPが『勝利の女神:NIKKE』で見せてくれたものでもある。

　SHIFT UPにとって『Stellar Blade』は、CS機向けに開発した初めてのタイトルだ。通算でも全4作とポートフォリオが少ないうえ、『勝利の女神:NIKKE』を含む過去の3作はいずれも、モバイルプラットフォームを中心に展開されてきた。今後、同スタジオが家庭用プラットフォームを主戦場にしていくのであれば、『Stellar Blade』が界隈にもたらしているインパクトはそのまま、未来への期待値となっていくのではないか。現在、SHIFT UPは公式サイトにて、新規タイトルの開発人員を募集している。

　コジマプロダクションやヴァニラウェアがゲームカルチャーにおけるひとつのブランドとなりつつあるように、この先の5年ないしは10年で、SHIFT UPも同じような存在となっていくのかもしれない。『Stellar Blade』のインプレッションからは、新しい時代が幕開ける息吹を確かに感じることができた。

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