『P3R』が持つ“リメイク以上”の魅力 3つの新要素と新鮮なプレイ体験に迫る先行レビュー

 2024年2月2日、『ペルソナ3 リロード』(以下、『P3R』)が発売を迎える。

 リアルサウンドテックでは、1月16日にも序盤にあたる箇所の先行レビュー記事を掲載しているが、今回はさらに中盤ほどまでを先立って体験することができた。

 前回の記事では、グラフィック/UIまわりの変化を中心にお届けしたが、今回はこれまでベールに隠されていた3つの新要素へと迫っていく。

主人公たちの前に立ちはだかる敵役の3人組「ストレガ」にまつわる新規エピソード

『ペルソナ3 リロード』PV03

 『ペルソナ3』には、敵役として非常に重要な役割を担う「ストレガ」と呼ばれる3人組が存在する。もともと彼らはオリジナル版でも同様のポジションで活躍しており、キャラクターとしても一定の人気を獲得していた。『P3R』では、このストレガの3人に新たなエピソードが追加されている。

 振り返ってみれば、昔のRPGほど、敵役は絶対悪であることが多く、描かれるのは得てして勧善懲悪の物語ばかりだった。その視点に立つと、敵役にも思い入れられる要素をくわえることが『ペルソナ3』リメイク化に込められた、ある意味で現代的なアプローチであると言えるのかもしれない。オリジナル版を遊んだ経験を持つプレイヤーのなかには、仲間である伊織順平と、ストレガの1人・チドリのあいだにある物語に複雑な感情を抱いた人も多くいるはず。『P3R』では、ジン、タカヤの2人にも相応のバックグランドが与えられている。これにより、主人公たちの事情、ストレガの事情がより対照的なものとなり、物語への没入感がさらに増した。

 詳しい内容については、ぜひ実際のプレイを通じて体感してほしい。“ただの復刻”とは一線を画したプレイ体験がそこにはあるはずだ。

キャラクター間における新規シナリオ(リンクエピソード)の追加

 ふたつめは「キャラクター間における新規シナリオ(リンクエピソード)の追加」だ。これまでに発売されているオリジナル版・移植版・リマスター版では、シナリオの本筋以外の部分に主要キャラクターたちのちょっとした掛け合いが存在していたが、『P3R』では、こうした余談にあたる部分をさらに強化。対象のキャラクターと時間を過ごすことで、主人公との関係性を感じられるミニイベントを見られるようになった。

 たとえば、主人公のクラスメイトであり親友、かつパーティーのムードメーカー的役割も担う伊織順平とのあいだには「いっしょにゲームセンターで遊ぶ」というイベントが存在している。

 これまでの『ペルソナ3』関連の作品では、主人公とは性別が異なる仲間キャラクター(男性主人公であれば、女性の仲間キャラクター。『P3P』の女性主人公であれば、男性の仲間キャラクター)としか、絆を深めるイベントが存在しなかった。今回のアップグレードにより、上述の伊織順平や、真田明彦、コロマル(彼に至っては、人間的な性別のかぎりではないが)、天田乾、荒垣真次郎といった面々とも、相応のイベントが見られるようになった形だ。

 対象となる1人のキャラクターに用意されているリンクエピソードは複数あるため、それらを網羅するという楽しみ方もできる。これもまた、『P3R』ならではの新たな遊び方だと言えるだろう。

 また、上記のほかにも追加のイベントが存在する。「夜の時間を利用し、寮内の仲間とともに過ごせる」というものだ。こちらでも仲間キャラクター全員に固有のシーンが割り振られている。当然そのどれもが、それぞれの個性を表現しつつ、主人公との関係性を感じさせるもの。ひとつを見ればすべてが気になってしまうような出来栄えとなっていた。

 真田明彦とボクシングの試合を観たり、桐条美鶴とティータイムでくつろいだり、ときにはアイギスと屋上の家庭菜園の手入れをすることもある。時間こそ経過してしまうが、(リンクエピソードを含む)これらのイベントを見ることには、特別なアイテムが手に入ったり、主人公や対象キャラクターの能力が上がったりといったメリットもある。過去作品をプレイしたことがある人にほど、ぜひ体験してほしいのがこれら新規シナリオの存在だ。

行動を重ねて溜めるゲージで繰り出す新たな切り札「テウルギア」

 最後は、新たなバトルシステムについて。『P3R』には「テウルギア」と呼ばれる特別なスキルが追加されている。効果は「耐性を無視した特大ダメージ」「大確率で敵がダウン」「味方全体のステータスがアップ」「HP/SPを全回復」など、最大の切り札と呼べるものだ。

 発動に必要なテウルギアゲージ(画像右下・キャラクターの顔アイコンのすぐ右にあるゲージ)は、攻撃やスキルの使用といった一般的なコマンドを繰り返すことで溜められるが、キャラクターの個性に応じて設定された特定の条件をクリアすると、さらに大きく上昇する。たとえば、桐条美鶴であれば、敵にバッドステータスを付与することがトリガーとなっている。そうした行動を戦略に組み込めば、より効率的に大技を繰り出すことも可能だ。

 もちろん発動時の演出も、切り札にふさわしいド派手なものとなっている。こちらもまた、全キャラクターのものを一度は見ておきたい、『P3R』ならではの要素と言えるだろう。

 また、主人公に関しては、この「テウルギア」に「ミックスレイド」という別名がつけられており、(仲間キャラクターの同スキルが固定の効果であるのに対し)これまで手にしてきたペルソナの組み合わせに応じて複数を修得していく。状況にあわせ使い分けることも可能で、そのことが『P3R』中盤以降のバトルにおいては、大きな戦略的な要素ともなっている。「ワイルド」という特別な素養を持つ主人公ならではの仕様と言える、このミックスレイド。当然、それぞれに魅力的な演出も与えられている。こちらもまた、コンプリートを目指してコレクションしたい要素のひとつだ。

 ディレクターとして同タイトルの開発に携わった山口拓也氏は過去のインタビューで、「『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』で導入された“SHOWTIME”が演出面も含めて好評だったため、類似する新しいアクションを追加したいと考えた」「きっかけは、『ペルソナ3』以降のシリーズで搭載してきた“1 MORE”のシステムが、ボス戦においては活かしきれていない部分があると感じていたことだった」と語っている。テウルギアが発動すれば必ず命中すること、SPを消費しないスキルであること、(特にボス戦においては)弱点をつく以外の突破口となりうることが、新たな戦略性を生むはずだと自信を見せていた。実際のプレイから受け取ったインプレッションを踏まえ、そのようなシステムとなっていることは私が保証したい。

 以上のように、大小さまざまな変更点が盛り込まれた至高のリメイク『P3R』は、2024年2月2日の発売を予定している。紹介した要素の詳細や、ほかの部分については、製品版を手に取り、あなたの目で確認してほしい。オリジナル版や移植版、リマスター版をプレイしたことがある人であっても、その変化にきっと驚くだろう。

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