『フリースタイル日本統一』#13ーー“名パンチライン”誕生も最強の前では為す術なし

FORK、K-rushを相手に理路整然なラップを披露「俺23年ぐらいやっての2年前」

 前回の【#12】に引き続き、TEAM埼玉(K-rush×TKda黒ぶち×崇勲×晋平太)とTEAM神奈川(FORK×句潤×SANTAWORLDVIEW×輪入道)が対戦中。3ラウンドを終えて、戦況はほぼ互角。ここでいよいよ、TEAM神奈川から大黒柱であるFORK(ICE BAHN)が初陣を飾った。

 2023年のラストオンエアから、FORKの登場を待ち望んでいた視聴者も多かったはず。期待感を膨らませての年跨ぎとなったが、こちらを待たせてくればくるほど、FORKは何倍にだって気持ちのよい極上のライムを届けてくる。現に、このバトルでも片手では足りず、諸手を上げて“天晴れ”とのけぞってしまうような名ラインを落としまくってくれた。

FORK:やっと出番が来たな また地上波でやれるなんてな アンテナ高く嗅ぎつけた奴ら これが答えだぜ 目に焼き付けな やる以上は頂点を目指す 有頂天じゃねぇ 無条件に勝つ自信がある 句読点なんてシカトする プノンペンぐらいまで吹っ飛ぶ 部門別に見ても俺がトップしてる

K-rush:だけど先攻 渡して何 言うかと思ったら テレビの犬になってやがったよ

FORK:初めまして テレビの犬 2021年KOK獲っている それが証拠

K-rush:今出したのがバックボーン 2021年のチャンプ?今 23年ですけど

FORK:23年 2年前 俺23年ぐらいやっての2年前 結機近くない?ダメかなこれ言っちゃ

 先攻はFORK、ビートはWILYWNKA「Kill Me」。初陣記念に、1stバースは丸々引用させてもらった。自身所属のクルー=ICE BAHNが掲げる“ライム至上主義”。その看板に恥じぬべく、〈嗅ぎつけた〉や〈頂点〉などの言葉を始まりに、5文字以上の高難度なライムを涼しい顔で踏み倒すFORK。特に後者は、無条件 → 句読点 → プノンペンで終わりそうなところを、最後に〈部門別〉でもうひと押ししてくるのが恐ろしい。

 FORKのラップ特有のこの感覚。決して言葉を詰めるのではなく、まるで平泳ぎのように流れるような余裕さ。違う角度から言語化を図るならば、まるで傷口に塩を塗り込むように、ライムを叩き込むのではなく、鼓膜にじっとりと塗り込まれるような感覚に近い。

 また、理路整然な語り口も、彼の冷静さを際立たせるところ。少し話は逸れるが、かつて『フリースタイルダンジョン』にて、T-Pablow(BAD HOP)が呂布カルマと対戦した際、当時21歳だったT-Pablowより、呂布カルマの方が12歳上だったことから、逆に自身より12歳下の9歳に向かって「言葉の重みがねぇ」とは言わないと指摘をしていた。当たり前すぎるからだ。フリースタイルバトルの最中、即興でラップの言葉を生み出しながら、同時に平時であれば簡単ながらも、ラップ中には難易度が高く感じるだろう計算をする、二軸の頭脳を使っていた場面。あの場面が思い出された。

 今回のFORKでいえば、番組収録をした2023年の2年前に取った杵柄をいつまで誇らしくするのだと主張されたが、たった2、3年のキャリアしかないラッパーが数年前の過去にすがっているのでは決してなく、〈23年ぐらいやっての2年前〉と、ベテランの目線で見ればついこの間のトピックだと正論であしらう。熱さで押したK-rushのラップに対して、冷静な視点がますます印象付けられた上に、〈23年ぐらいやって〉の部分も前述したような流れるような聞き心地で、親が子どもに説くような説得力すら見出せてしまう。

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