eスポーツ×ストリーマー戦略の最適解? 『Riot Games ONE 2023』に見る演出の重要性
「eスポーツ」×「ストリーマー」イベント成功のポイント
今回は、特にファン目線での企画が多かった「The k4sen」に注目した。筆者が(超個人的に)感じたポイントを記述する。
ライバル同士の直接対決 :「ファンが見たいもの」を見せる
今回の「The K4sen」では「ファンが見たいもの」を実現するための工夫が多くあったように思える。
『League of Legends』に明るくない方向けに少し説明をすると、このゲームは5人vs5人のチーム戦であり、各人が5つのロール(TOP、JG、MID、ADC、SUP)から1つを担当する。
ロールごとに、やるべきことは異なり、それぞれ特化した練習をすることになる。つまり、事前に準備しておく必要があるということだ。
誰がどのロールをやっても自由なので、それぞれが普段から練習しているロールをやれば良いはずなのだが、「The k4sen」では明らかに「魅せること」に特化したロール選択になっていた。
特に注目なのが、TOPにうるかと葛葉が配置されたことだ。
TOPというロールは(試合序盤から中盤に掛けて)チームとの連携が少なく、試合全体としては注目度が下がりがちなポジションである。しかし裏を返せば、ガチンコの1vs1の戦いが実現しやすいともいえる。
「ロールの特性を逆手に取った」というのは言い過ぎかもしれないが、結果的にVTuber同士(うるかは元プロeスポーツ選手だが)の直接対決をたっぷりと見られた。これはファンにとっては大きな見どころであり、見たかったコンテンツの1つだろう。
同じようにMIDでは、k4senとSHAKAによるリーダー同士の直接対決となっていた。
MIDはTOPと異なり、序盤から試合全体に与える影響が大きく、MID同士の勝敗がそのまま試合結果に直結するともいわれている。
会場にも、k4senとSHAKAを目当てにしたファンは多く、最も注目される2名に最重要ロールを担当させたのは、良い判断だったといえるだろう。『League of Legends』というゲームの構造を上手く利用した仕掛けといえる。
らいじんのガチ切れ演出:「分かる人には分かる」の追求
Day1の「The K4sen」のエンディングトークにて、特別な演出があった。
勝敗がついたあとのトーク中に、敗者チーム陣営の1人であるらいじんがキレて、ステージから降りてしまったのだ。
いまやキレ芸が持ち味となっているらいじんではあるものの、会場内は放送事故とも取れる雰囲気に。演出なのか、ガチなのか、微妙に判断がつかない最中、ステージが暗転。
その後、大型スクリーンに映し出されたのは、らいじんとしゃるるがやり取りをする映像(※事前に収録されたもの)。
らいじんは映像内で「時を戻す」スキルを発動して、先ほどの“負け”試合をなかったことにしたのだ。
すべては後日(Day2)の「The K4sen」につなげるための演出だった。
「ただの茶番」と一蹴するのは簡単だが、この演出はストリーマーの個性を活かしただけでなく、イベント全体の日程を上手く利用したものだった。
というのも、今回の『Riot Games ONE 2023』は2日間実施される。つまり「The K4sen」も2回行われるのだが、どちらか1日だけに来場するファンもいることになる。
今回の演出は、それぞれの試合を「新鮮な気持ち」で見てもらうための工夫であり、ファンサービスだったのだろう。
『League of Legends』に詳しくない人からすると、唐突な演出に思えるかもしれないが、このゲームには「時を戻す」能力をもつキャラクターが存在しており、ファンにとっては「ああ、エコーのクロノブレイクね」と一瞬で理解できる。
さらにマニアックなことに、スクリーンに映し出された映像は、エコーの紹介トレーラー動画をオマージュしたものだった。
まさに「わかる人だけにわかる」演出だったといえる。
最後に
「ただ単に人気コンテンツと人気ストリーマーを集めればよいわけではない」
主催であるRiot Gamesはそれを分かっているのだろう。今回の『Riot Games ONE 2023』からは「ゲームが好きであればあるほど楽しめるイベントを作る」という意気込みを感じた。
ますます進化を続ける『Riot Games ONE 2023』。今回見逃してしまった人も、次回はぜひ現地に足を運んでほしい。
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