発売4日でスタジオ閉鎖&返金騒動 『The Day Before』から考える“アーリーアクセスの是非”

 “あるタイトル”が界隈の話題をさらっている。

 そのタイトルの名は『The Day Before』。シンガポールに本社を置くゲーム企業・FNTASTICによって開発された、ポストアポカリプスの世界観を舞台とするオープンワールド・MMOサバイバルである。

 同タイトルは12月8日、フリークからの期待を受けるなかでアーリーアクセスが開始されたが、ユーザーから不満の声が集中。Steam上で「圧倒的不評」という最低のレビューランクに位置づけられると同時に、評価ワースト10入りも果たしてしまう。リリースから4日後には開発元が閉鎖を発表するとともに、Steamの製品ページから購入ボタンが削除される事態に。現在は発売を担当したMytonaが返金の対応を行っているところだ。

 なぜ期待作として注目されていたタイトルが、紆余曲折を経て“最悪”とも言える結末を迎えつつあるのか。話題のトピックを入り口に、アーリーアクセス制度の是非を考えていく。

数度の延期を経て、ユーザーの期待は不安に。残念ながら予想的中となってしまった『The Day Before』

The Day Before - Announcement Trailer

 『The Day Before』の存在が明らかとなったのは、2021年1月のこと。その時点で冒頭で紹介した「ポストアポカリプス」「オープンワールド」「MMO」「サバイバル」といった特徴を持つタイトルとなることが公式から発表されていた。その2か月後には、現実と見まがうほどリアルなゲームプレイ映像が公開に。設定、グラフィックともにトレンドを押さえた内容であったことから、同タイトルは感度の高いプレイヤーから注目を集めるようになっていった。

 2021年10月には、PC版の発売日が2022年6月21日に決定し、あらためて期待作のひとつとして数えられるようになったが、その後は幾度となくリリースを延期。最終的には滑り込みような形で2023年内にアーリーアクセスをスタートさせた。こうした動向を受け、『The Day Before』に注目していたユーザーの期待は、少しずつ不安へと変わっていった経緯がある。結果から言えば、そのような不安が的中し“最悪”とも言える結末へとたどり着いたことになる。

 一連の騒動を見て、『サイバーパンク2077』が頭をよぎったフリークも少なくないはず。同作もまた、リリース直後にはその不出来から返金対応に至った過去を持つ。しかしながら、のちのアップデートで期待されていたとおりのクオリティまで持ち直し、現在では「非常に好評」というレビューランクに位置するまでとなった。両者で異なるのは、『The Day Before』がFNTASTICという規模の小さいスタジオによって開発されていた一方で、『サイバーパンク2077』は、『ウィッチャー』シリーズが評価され、資本力や開発力がある程度約束されている気鋭のディベロッパー・CD Projekt Redが手掛けていた点だろう。つまり、おなじような失敗をしてしまったとしても、あとから持ち直すだけの企業体力を後者は持っていたというわけだ。

 Steamの製品ページに寄せられたユーザーの不満はおおむね「事前に公表されていた、もしくはトレーラーから想像したゲーム内容と実際の出来があまりにも乖離している」、または「バグだらけでまともにプレイできない」のどちらかに着地する。悲しいかな現在では、当初に期待を煽ったトレーラーの内容も、「詐欺だった」と言われる始末となっている。

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