『ドラクエモンスターズ3』発売間近 シナリオ/システムにファンが求める要素は?
「ドラゴンクエストモンスターズ」(以下、「ドラクエモンスターズ」)シリーズから、最新作『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』(以下、『ドラクエモンスターズ3』)が12月1日に発売となる。
「ドラゴンクエスト」から派生した人気シリーズでありながら、長らく新作が発表されていなかった「ドラクエモンスターズ」。25周年のアニバーサリーイヤーにリリースを迎える同タイトルは、ファンの期待に応えられるだろうか。『ドラクエモンスターズ3』に求められる要素を、シナリオとシステムの2点から考察する。
スピンオフからシリーズ化。誕生から25周年を迎える「ドラクエモンスターズ」
「ドラクエモンスターズ」シリーズは、「ドラゴンクエスト」から派生した、モンスターたちが主役のRPGだ。プレイヤーは、作品ごとに異なる主人公キャラクターを操作しながら、おなじみのモンスターたちを仲間に加え、育成することで、モンスターマスター大会での優勝や、探していたものの発見といった目的の達成を目指す。
「ドラクエモンスターズ」は当初、本編とは別の「スピンオフ」という位置づけだったが、広く好評を博したことからシリーズ化。第1作『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』の発売(1998年)から現在までの約25年間で、ナンバリングや完全版、移植、リメイクなど、数々の作品が発表されてきた。2023年5月には、『ドラクエモンスターズ3』の存在が明らかに。シリーズから新作が発表されるのは久しぶり(同系列のナンバリングとしては、2001年発売の第2作『ドラゴンクエストモンスターズ2 マルタのふしぎな鍵 ルカの旅立ち/イルの冒険』以来、22年ぶり。シリーズ全体としても、2016年発売の『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3』以来、7年ぶり)であったことなどから、ファンたちは大いに沸いた。同タイトルがいかにシリーズの伝統を踏襲し、どのような新要素を盛り込んでいるのか、注目が集まっている現状だ。
『ドラクエモンスターズ3』は、2023年12月1日発売予定。対応プラットフォームはNintendo Switchのみで、価格は、通常版が税込7,678円、マスターズ版が税込11,198円、超マスターズ版が税込14,003円(※)となっている。
※マスターズ版および超マスターズ版には、ゲーム内アイテムや複数の衣装、追加ダンジョンがダウンロードコンテンツとして付属する。超マスターズ版はパッケージのみの展開。マスターズ版の特典のほか、「モンスター配合帳」や「わたぼうデザインのクッションブランケット」が同梱される。
ピサロを主人公に据えたことで上がった、シナリオに対するファンのハードル
『ドラクエモンスターズ3』では、本編のナンバリング第4作『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(以下、『ドラクエ4』)に敵として登場したピサロを主人公に据えている。
『ドラクエ4』はシリーズのなかでも、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下、『ドラクエ3』)『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(以下、『ドラクエ5』)らと並び、特に人気の高い作品だ。システム面では、職業や転職の概念が登場した『ドラクエ3』、初めてモンスターを仲間することが可能となった『ドラクエ5』と比較し、クラシカルな設計となっているが、一方のシナリオ面では、群像劇風に章立てで描かれたストーリー展開が、シリーズ屈指とも言える評価を獲得している。
その魅力を支えるひとつの要素が、敵役であるピサロの存在だ。魔族の王である彼は、エルフ族に生まれた最愛の人・ロザリーが人間に冷遇され、最後には殺されてしまったことから、怒りを爆発させ「進化の秘法」に手を伸ばす。これにより、ピサロは強い力を手にすることになったが、同時に自我が崩壊。ロザリーと過ごした日々の記憶も失い、1体の魔物として勇者たちの前に立ちはだかるのだった。
『ドラクエ4』のオリジナル版が発売されたのは、1990年のこと。対応ハードは、ファミリーコンピュータである。当時は、現代のようにゲームを自由に表現することが、技術的にも、容量的にも、難しかった時代。ボスとはいえ、1人の敵キャラクターがこれほどのパーソナリティを持っていること自体が珍しかった。
もちろん『ドラクエ4』がこれまで何度もリメイクされたことで、表現が補完されてきた部分もあるだろう。しかし、(原作に含まれていた)必ずしも勧善懲悪ではないストーリーは、同作の魅力の根幹であると言って差し支えない要素であるはずだ。この点を支えているのが、ピサロの存在だった。
そのおかげもあり、彼は敵役としては異例の人気を獲得するようになり、のちに発売されたリメイクでは(賛否はともかくとして)最終盤に仲間に加わる仕様が追加された。『ドラクエモンスターズ3』において、本来は敵だったピサロが主人公に据えられた背景には、このように築かれてきた彼の人気や、パーソナリティのドラマ性による影響があったに違いない。だからこそ、「ドラゴンクエスト」ファンが『ドラクエモンスターズ3』に期待するのは、そうした彼、さらにはロザリーを含めた彼ら2人のバックグラウンドに負けない、シナリオの良さなのではないだろうか。
体験版をプレイするかぎり、同タイトルには、(『ドラクエ4』に詳しく描かれていなかった)ピサロとロザリーの出会い、惹かれ合うまでの経緯、ともに過ごす様子などが、「ドラクエモンスターズ」というシリーズのフィルターを通して描かれていた。彼ら2人が手を取り合いながら進める冒険のなかで、どのように物語が展開し、どう『ドラクエ4』の世界へとつながっていくのか。その点が気になっているファンはきっと多いだろう。これはピサロを主人公に据えたからこそ、『ドラクエモンスターズ3』が背負うことになった期待とも言えるかもしれない。
なお、同タイトルのシナリオは、『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』などの物語を手掛け、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』ではディレクターを、『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』(Ver.1)ではディレクター/メインシナリオライターを務めた、株式会社ストーリーノート・藤澤仁氏が担当している。2023年9月に配信された公式番組 「ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅 おしえてアゲ★ナイト」では、プロデューサーの横田賢人氏が「今までのモンスターズよりお話の比重が少し高くなっている」と、『ドラクエモンスターズ3』のシナリオについて言及した。