周央サンゴはにじさんじDNAの“正統後継者”か カオスと偏愛から産まれるバイラル性
周央サンゴのなかに隠れている"にじさんじのDNA"を解読してみる
明るく・可愛く・元気よく、周央サンゴを知るファンはそんなイメージを思い浮かべることが多いはずだ。
しかし、周央サンゴは“にじさんじの正統後継者”と評しても過言ではないほどに尖った「インターネットカルチャーへの偏愛」を持つライバーでもある。
2023年7月3日の雑談配信では、当時Twitterが名称変更するというニュースが駆け巡っていたことを大きく引きずっており、「このTwitterという土地はもう終いじゃ!」「わしらはもうこの土地以外では生きていけぬ」と語りだし、昔のインターネットを回顧する"インターネット老人会の長老"のような内容となった。
日本独特なTwitter文化を中心にした話題となっており、「天空の城ラピュタ」の放送に合わせて「バルス!」投稿でTwitterが重くなった事件、お風呂に入る人を「ほかてら」と送り出して「ほかえり」と迎えるなど、いまほどパブリックなものではなくプライベートな温度感を保っていた時期を振り返っていた。
こういったネットミームを多用するところが所以してか、とくにニコニコ動画との親和性が非常に高いのも、周央サンゴの特筆すべき点だ。
2021年8月後半からはニコニコ動画のランキングにおいて「周央サンゴ」が一つのジャンルとして設けられるほどに、ユーザーからの支持を集めている。
同年には『ネット流行語100 2021』にノミネートされるなど、にじさんじ×ニコニコ動画といえば周央サンゴというほどに認知が広まった。現在でも彼女をネタにした動画はランキング上位に入るのだ。
ほかのにじさんじ所属のメンバーにも見られる傾向であるが、アニメやマンガなどを好み、なおかつ生配信にも興味があるとなると、ニコニコ動画やかつての「2ちゃんねる」を筆頭にしたインターネットカルチャーからの影響が強く残った方が非常に多い。
斜め上の発想で笑わせるさまざまなネットミーム、他者とのコミュニケーションも踏まえたSNSや掲示板のローカル感、そしてそれまでの自分にはなかったクリエイティビティを呼び起こす二次創作文化など、ネットカルチャーの持つ重層的・交差的・拡張的な魅力は多くのひとびとを魅了してきた。
それに魅入られ、吸収してきた人間はVTuberにも多数おり、こと「にじさんじ」は特にこの傾向が強いわけだ。
この点については今後別の記事で記したいと考えているが、にじさんじライバーの間には「自らがネットミームになる・なりたい」というDNAが生まれており、周央サンゴもまたそれを体現するライバーである。
彼女自身も、言動一つ一つがネットミーム化することを意識しているのだろう。配信開始時にリスナーへ語りかける「みなさまぁ~?」の一言は、にじさんじリスナーにとってお馴染みの挨拶としてミーム化しつつある。
かつて自身のゲーム配信の概要欄に「インターネット生まれブルーライト育ち」と記していたが、その言葉はまさに「彼女らしさ」を正確に表現した一文だといえる。
彼女の嗜好性は多岐に渡るが、インターネットカルチャー以外のところでいえばデビュー直後から愛を隠さないのが“サンリオ”への愛情だ。自身のSNS初投稿・初配信では最愛のキャラクター・ポチャッコを紹介し、さまざまなサンリオ作品・商品に精通している、「サンリオマニア」である。
東京都・多摩区にある「サンリオピューロランド」については当然熟知しており、各アトラクションや売店の特徴からパーク内の歩き方、初心者へのオススメまで、まるで観光ガイドのように語れるほどだ。
しかも、サンリオについて語るのは大抵がテーマを定めての配信ではなく、なんでもない会話が弾んで語りだすことがほとんどで、その愛情の深さを感じさせてくれる。
サンリオ社の社員でありVTuberでもある なつめれんげと共演した際には、サンリオの社員である彼にサンリオのアニメについて矢継ぎ早に語り続けたこともある。
暴走気味な愛情を抱えた周央についてはサンリオ側もしっかりとチェックしており、これまで何度かサンリオの協力を得てさまざまな配信やイベント参加といったコラボレーションがなされてきた。
2022年12月には新キャラデビューをかけたコンペ対決に、サンリオ社の代表取締役社長・辻朋邦らを含む社内審査員にまざって、ゲスト審査員として参加。彼女の影響力はもちろんだが、培ってきた知見やセンスを活かしての起用だと推察できる。