『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』でも不変 “史上最強ゴール”だった「ゴールポール」

「ゴールポール」は史上最強のゴールであり、『スーパーマリオブラザーズ』の遊びの象徴だ

 もともと『スーパーマリオブラザーズ』とは、”ジャンプに始まり、ジャンプに終わる”アクションゲームである。

 敵を避ける、踏みつけて倒す、障害物を乗り越える、隠されたアイテムを見つけ出す、コインを回収する。それらの目的を果たすには、必ずジャンプしなければならない。もちろん、ゴールするときにもジャンプは必要。単に前に進むだけでは終わらないのだ。

『スーパーマリオワールド』(『スーパーファミコン Nintendo Switch Online』より)

 過去の2Dマリオシリーズには、「スーパーマリオランド」シリーズに『スーパーマリオワールド』など、ジャンプの必要もなくゴールできる作品が存在する。だが、どちらもジャンプせずにクリアしてみると結構味気ない。『スーパーマリオワールド』が特に分かりやすいが、ジャンプしてバーにタッチすれば「ゴールスター」獲得を伝える花火音が鳴り響く一方、無視してそのまま横に進もうとするとコインが1枚手に入って終わりという物寂しい演出になるのだ。気持ちよく終わりたいなら、ジャンプしてバーに飛びつくことが推奨される。「スーパーマリオランド」シリーズにしたって同じだ。ジャンプしてミニゲームに挑めれば、その後の冒険が楽になるメリットがあるからだ。

 それを思うと、ジャンプすることが絶対条件の「ゴールポール」は圧倒的に強く、”ジャンプに始まり、ジャンプに終わる”という「スーパーマリオブラザーズ」シリーズらしいゴールと言える。同時に「ゴールポール」にはそんな遊びの特徴と醍醐味が凝縮されている。それこそが、飛びついた高さに応じて得られるボーナスが変動する要素だ。高いスコアが得られたり、残機が増えたりなど、どこに飛びついたかでゴールポールはそれにふさわしい結果を返してくる。それがプレイヤーに対し、高みを目指したいという挑戦意欲を刺激すると同時に、うまくいかなかった際の「悔しい!」という感情を呼び起こす。そして、悔しいからこそ「今度こそ高いところへと飛びつく!」という再チャレンジ欲も刺激され、クリアしたコースに再び挑んではゲーム内の世界へとのめり込んでいく。

 こうしたプレイヤーが再びゲームに挑みたくなる機構が「ゴールポール」にはあり、“ジャンプに始まり、ジャンプに終わる”『スーパーマリオブラザーズ』ならではの特徴と遊びが凝縮されているのだ。だからこそ、この「ゴールポール」というのは『スーパーマリオブラザーズ』ならではの遊びとして圧倒的に強い。

 2009年の『New スーパーマリオブラザーズWii』発売当時の「社長が訊く」において、マリオ生みの親の宮本氏は「なぜお客さんはもう1回やろうとするのか?」という疑問に対し、それは「悔しい」からであり、その悔しさはどんな構造から生まれるのかを考えたという。

『ドンキーコング』(『アーケードアーカイブス ドンキーコング』より)

 それがマリオが「ジャンプマン」としてデビューした『ドンキーコング』へとつながったとのことだが、その話を思うと、「ゴールポール」にはそう言ったゲームを何回も遊んでしまう根源的な魅力が詰まっている。

 過去の2Dマリオシリーズのゴールにも面白いものはあった。しかし、これほどまでに挑戦意欲を刺激し、マリオならではの遊びが込められていると思えば、「ゴールポール」は強い。圧倒的と言わんばかりに強くて面白く、気持ちを熱くさせる。そりゃ、ほかのゴールが登場しなくなり、いろいろ変えてきた新作でも変わらないのは当然だと納得してしまうほどだ。

 なので、結論としては「ゴールポール」は2Dマリオシリーズ史上最強のゴールだということである。変わらなかったのも無理はない。「ゴールポール」は”ジャンプに始まり、ジャンプに終わる”『スーパーマリオブラザーズ』を体現する遊びだからだ。

 おそらくだが、この最強のゴールは今後の2Dマリオにおいても変わることなく継続し、新しい要素とともに刺激的な挑戦をプレイヤーに要求し続けるのだろう。今回の『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』でも、新要素「ワンダー」と新たな仕掛けに乗じた、ポールの頂点を目指す遊びが突き詰められている。

 また、「ゴールポール」そのものが吹っ飛んでしまったりなど、意表を突く仕掛けも盛りだくさんで、お約束を思わぬ形で崩し、プレイヤーを虜にする開発スタッフのサービス精神が炸裂している。そして、近年のシリーズでおなじみのポールの頂点に飛びついて、黄金の旗(ゴールドフラッグ)を掲げるというやり込み要素も健在であり、一度クリアしてもまだまだ遊べる魅力がある。

 変わらなかったとはいえ、この面白さを超えるものは考えるほど難しそうだし、それがこれからも引き継がれていくことは純粋に楽しみなことである。何年たっても面白くて強すぎるゴールポールの魅力というものを、いろいろな変化のある本作であらためて感じてみてはいかがだろうか。新要素のワンダーも魅力的だが、そんな変わらぬ強すぎる遊びを再確認してみるのも一興だ。

 そんなわけで……全コースのゴールドフラッグ獲得目指して周回してきます。

© Nintendo

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