『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』でも不変 “史上最強ゴール”だった「ゴールポール」
「ゴールポール」のイメージが強固になった最大のきっかけは3Dマリオの新作?
しかし、2Dマリオシリーズでは「ゴールポール」が定着し、そのイメージが強固なものになっていった。そもそも「ゴールポール」が復活したのは2006年発売の『New スーパーマリオブラザーズ』だった。
ただし、『New スーパーマリオブラザーズ』での復活は、同作が現代の『スーパーマリオブラザーズ』という側面を持っていたことから、いたって自然な流れだったといえる。以降の『New スーパーマリオブラザーズWii』をはじめとする続編でも継続採用されたのも、同じスタイルの新作だから、ということで納得しやすい。
では、イメージを強固にさせた作品はなんだったのかといえば、2011年発売の『スーパーマリオ3Dランド』だろう。
『スーパーマリオ3Dランド』は、2Dマリオの遊びを基本とした3Dマリオの新作として開発され、それまでのスター探しから、ゴール到達を目指すアクションゲームへと大きく路線転換した。このときにゴールとして採用されたのが「ゴールポール」である。
なぜ「ゴールポール」が採用されたのか、詳しい経緯は任天堂の故・岩田聡社長が自ら開発スタッフにプロジェクトの経緯や背景を訊くインタビュー企画「社長が訊く」の『スーパーマリオ3Dランド』開発スタッフ編で言及されている。
いわく、2Dマリオと3Dマリオの間に生じたミッシングリンク、大きな溝を埋めるものとして「ゴールポール」が浮上し、「コースのおわりにあるゴールポールにたどりつく」というゲームにする方向性が決まったと、今回の『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』でもゲームデザインとして参加してしている任天堂の林田宏一氏が発言している。また、マリオ生みの親である任天堂の宮本茂氏も、件のインタビューにおいて「やっぱりマリオといえばゴールポールだよね」と発言したエピソードが語られている。
さらに『スーパーマリオ3D ランド』では、クリアしたときに揚がる旗がゴールポールに飛びついたところの高さになる要素が初めて導入された。これは後に発売された『New スーパーマリオブラザーズ2』と『New スーパーマリオブラザーズU』(デラックス)にも逆輸入されている。そして、『スーパーマリオ3D ランド』はその後、Wii Uで続編『スーパーマリオ3D ワールド』を発売。再び「ゴールポール」を目指す遊びを軸としている。
この2Dマリオ以外の「ゴールポール」の採用例が現れたこと、3Dマリオとのミッシングリンクをなくすための存在として抜擢されたという経緯こそが、結果的にイメージ強化に貢献したように思える。並行して『New スーパーマリオブラザーズ』シリーズ、『スーパーマリオメーカー』といった「ゴールポール」が当たり前となっている新作が相次いで現れたのも、そのことに大きく影響しているだろう(※『スーパーマリオメーカー』は、スキンによっては「ゴールポール」以外のゴールも登場しているが)。
なにより、ミッシングリンクを埋める役割を果たすものとして選ばれた背景には、「右に進んでいけば必ずゴールがある」という事実と安心を実証する存在としての「ゴールポール」の強さが感じられる。
そもそも最初の『スーパーマリオブラザーズ』において、確固たるイメージを作り上げた存在だ。いくつかの寄り道の末、そこに落ち着いていくのは、シリーズが40年近い歴史を重ねつつあることを踏まえれば自然な流れと言えるのかもしれない。『星のカービィ』シリーズや『スーパードンキーコング』シリーズといった、ほかにも第1線を走るステージクリア型のアクションゲームがマリオとは別に成長すると同時に、マリオにできない遊びはそちらに任せるという判断も少なからずあるのだろう。
そうした経緯を踏まえれば、今回の『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』で変わらなかったのもどこか納得できる。それに「ゴールポール」には、マリオというアクションゲームの醍醐味すべてが凝縮された圧倒的な”強さ”が秘められているのだ。