暗号解読にセーブデータ読み込み、ゲーム内時間活用も 「メタルギア」シリーズの仰天ギミック

 『メタルギア ソリッド: マスターコレクション Vol.1』(以下、Vol.1)が、10月24日にコナミデジタルエンタテイメントから発売となった。本作は潜入をテーマにした「メタルギア」シリーズのうち、MSX2版の『メタルギア』と『メタルギア2 ソリッドスネーク』(以下、MG2)を始め、PSの『メタルギア ソリッド』(以下、MGS1)、PS2の『メタルギア ソリッド2 サンズ・オブ・リバティ』と『メタルギア ソリッド3 スネークイーター』(以下、MGS3)の5作品を収録したタイトルだ。ほかにも、バンドデシネやサウンドトラック、海外版限定だった『スネークズリベンジ』も付いてくるなど、ファンにはたまらない仕様になっている。

 本稿では、『Vol.1』の収録タイトルである『MG2』、『MGS1』、『MGS3』から、とくに印象的なネタを紹介しよう。

タップ・コードの図をもとに送信者の言葉を解読せよ

 『MG2』では“タップ・コード”という暗号を解読するシーンがある。タップ・コードは、かつて北ベトナムの捕虜収容所で用いられたという通信方法で、タップ、つまり叩いた音を使って英数字のやり取りを行う。

 英数字の判別には、Kを除いたAからZまでのアルファベットと、1~9までの数字が載っている図を使う。英数字は横書きで、5文字ごとに改行されている。

 送信側は音を2回にわけて送ってくるのだが、最初の音の回数で縦列が、少し間を置いた後の2度目に聞こえる音の回数で横列が確定し、そこで初めてひとつ目の英数字が分かる。たとえば、最初の音が2回、2回目の音が3回の場合、送られてきた文字はHという具合だ。

 作中では一定の周期で音が鳴っている場所があり、本作の説明書に記載されたタップ・コードの図を用いて内容を解読するというギミックだった。現実とゲームをつなぐ試みは「メタルギア」シリーズではおなじみだが、すでにこのときからあったわけだ。

読まれるのはプレイスタイルにセーブデータ、それにコントローラー入力

 『MGS1』では、シャドーモセス島に潜入したソリッド・スネークの前に立ちはだかる敵として、サイコ・マンティスという敵が出てくる。特殊部隊FOXHOUNDの一員で、人の心を読むリーディング能力や、周囲の物体を自在に動かす念能力を持つ。いわば超能力者だ。

 戦う前のやり取りで、サイコ・マンティスは超能力を疑うソリッド・スネークに対し、これまでの本人の潜入方法(つまりプレイヤーのプレイスタイル)を分析してくる。何度も敵を倒していると、戦闘が得意だなと言われたり、セーブ回数が多いと慎重な性格と言われることも。

 さらにダメ押しとして、今度はプレイステーションのメモリーカードにプレイヤーが保存しているセーブデータを分析してくる。このとき、「ときめきメモリアル」などの一部タイトルのセーブデータがあると、サイコ・マンティスから「ときメモが好きなようだな」と見抜かれてしまう。ちなみに、今回発売される『Vol.1』では、仮想セーブデータを作ることでこのギミックを再現できる。

 戦闘中には、サイコ・マンティスはリーディング能力を使ってこちらの行動を先読みしてくる。コントローラーの入力を感知して即座に対応されてしまうというからくりなのだが、これは無線でキャンベル大佐の指示を仰ぐことで解決できる。セーブデータと同様、こちらのギミックも『Vol.1』で再現されているので、本作を遊ぶ人はぜひ試してみてほしい。

ゲーム内時間の経過具合が戦いの勝敗に影響する

 冷戦時代の1964年を舞台にした『MGS3』では、師匠であるザ・ボスの暗殺、核搭載戦車シャゴホッドの破壊を試みるネイキッド・スネークの前に、第二次世界大戦で連合軍を勝利に導いたコブラ部隊が立ちふさがる。ザ・ボスを頂点とする特殊部隊で、そのなかのひとりにジ・エンドという老兵がいる。作中で言及されているだけでも、少なくとも年齢は100歳越え。つまりソ連がまだロシア帝国だった時代の人間だ。

 ジ・エンドとの戦いは、複数のマップを跨いだ狙撃戦。戦うフィールド自体が広大であるのに加え、ジ・エンドは迷彩服を着込んでいるので見つけにくい。どうにかして見つけても、閃光手りゅう弾でこちらの目を潰してすぐに撤退してしまう。

 また、こちらを発見すると麻酔弾で攻撃を仕掛けてくる。麻酔弾はスネークのスタミナを奪う効果があり、ナイフで摘出しないと体力がみるみる減っていく。どこから撃たれるか分からないというプレッシャーのなか、相手に気取られる前に狙撃するか、あるいは近距離から攻撃しなければならないという、作中でも屈指の強敵だ。

 そんなジ・エンドだが、じつは戦わずに勝つ方法がある。ボス戦が始まって『MGS3』のプレイ自体を8日以上放置すると、彼は老衰で死んでしまう。こちらから手を出す必要はないので、つまりは不戦勝に近い。現実で8日放置するのが普通だが、当時はPS2の内部時計を進めて8日経過したことにするという裏技もあった。

 ジ・エンドは自身の特殊能力である光合成を使ってエネルギーを摂取するいっぽう、普段のほとんどを寝て過ごすことで寿命を温存してきた。スネークを「最後の獲物」として表現するセリフがあるので、ジ・エンドには自分の限界を承知で戦ったという背景がある。持久戦に持ち込んで相手の老衰を狙うのは、もちろん戦法としては正しいし、楽に勝てるので弾やアイテムも節約できるものの、老兵の最後の戦いを搦め手で終わらせるのは寂しい気もする。こちらは『Vol.1』で再現されているかは不明だが、気になる人は試してもいいかもしれない。

 「メタルギア」シリーズはどれも名作だが、近年は遊ぶ手段も減っていた。そうした現状があるなかでの『Vol.1』の発売は、ファンが当時を懐かしむ以上に、新しい層が「メタルギア」を遊ぶきっかけになるというより大きな意義がある。“1”とあるからには続編もほぼ確定しているわけで、ほかのシリーズ作品が収められた“2”にも期待したいところだ。

©2023 Konami Digital Entertainment

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