小説家・古宮九時が語る“FF14愛”「創作者の憧れの形」 光の戦士と運営の絆は“唯一無二”

 スクウェア・エニックスが開発・運営するオンラインRPG『FINAL FANTASY XIV』(以下、FF14)は、さまざまな分野の著名人がプレイしていることを公言し、“愛”を明かしている。そのなかでも、小説家の古宮九時氏はSNSにおいて日々のFF14ライフを発信し、ゲーム内では読者とも交流を重ねるなど、日常に深く根ざしたプレイを続けている。そんな古宮氏に、ここまでエオルゼアの世界に浸るようになった理由や、小説家目線でのストーリーの魅力、10周年を迎えた運営・開発陣への想いなど、存分に語ってもらった。(片村光博)

※本稿は『FF14』メインストーリーに関するネタバレを含みます。

いまの『FF14』はプレイすることへの恐怖心が取り除かれている

――『FF14』愛あふれる古宮さんですが、まずは『FF14』との出会い、日常的にプレイするに至った経緯を教えてください。

古宮九時(以下、古宮):実は私、『FF14』を“2回”始めているんです。最初は吉田直樹さん(『FF14』プロデューサー兼ディレクター)が新生(※)させてから半年ほどたったときに一度、1人で始めました。ただ、その頃は現在のように親切な作りではなく、「自分1人でなんでもやらなきゃ」「迷惑をかけないようにしなきゃ」という思いが強かったんです。装備を強化するマテリアも自分で装着する必要があるけど、そのためにはクラフター職を育てないといけなくて、でもレイドコンテンツは「マテリアないなら来ないで」のような雰囲気があり……。そんなことがあって1人でのプレイに限界を感じ、ちょっと疲れてしまい、『FF14』から離れていたんです。

 しかし2020年ごろになり、TRPGのゲームデザイナーで、いまはシナリオや世界観のディレクションで人気ゲームに関わっている矢野俊策さんが、拡張パックの『漆黒のヴィランズ』を激賞していたんです。すごくヒットした作品について、ネタかぶり防止のためにも「作家は一通り摂取すべき」という考え方があったこともあり、このタイミングで「一度途中でやめちゃったけど、矢野さんがそこまで『すごい』と言うならやってみよう」と思い、プレイを再開しました。6年の時を経ての復帰ですね。

 当時の私は、まだ以前の“ギスギス”が続いていると思っていて、SNSで『怖いよ』『怒られないかな』と言いながらプレイしていたら、読者さんのなかに「一緒に行くよ」と言ってくださる方がチラホラといらっしゃって。そうした方たちと一緒にクリアしていくうちに、だんだんと怖さがなくなっていき、『漆黒』をクリアして本当にすごくおもしろかったんです。その頃には、今度は私の様子を見て「じゃあ自分も」と言って始めたほかの読者さんが追いついてきて、いまでは彼らと友人になって、毎日だらだらと過ごすようになりました。

※問題点の多かった『FINAL FANTASY XIV』を一度クローズし、吉田氏の指揮のもとで『FINAL FANTASY XIV: 新生エオルゼア』としてあらためてリリースされた経緯がある。

――『FF14』が人の縁をつなぐ、すごく良いエピソードですね。実際、特に『紅蓮のリベレーター』あたりから、『FF14』のユーザーフレンドリーな面がどんどん強くなり、ゲーム内でトラブルが起こることもかなり減ったように感じます。

古宮:とにかくプレイヤーの方々が親切になっていましたね。以前は予習もなしにコンテンツに飛び込むと、怒られることもあったんです。「分かってないですね、解散しましょう」みたいに……。まあ、心が傷つくわけで。いまでもそういうことに遭遇する方はゼロじゃないと思いますが、初心者に対してすごく温かくなっていると感じます。初心者と冒険するメリットを運営が与えてくださっていますし、初心者を助けること自体を楽しみにしている方もいます。

 もちろん、それと同時に1人でもプレイできる環境を整えてくださっていて、どうしても1人がいいという人は、 ダンジョンも1人で行けるようになりましたよね。マテリアもNPCが装着してくれるようになったし、本当に人と接したくない人は接触を減らすことができる。どちらも選べるようになって、日々、UIが改善されてどんどん親切になっていっているというのは、普通のゲームだとちょっと及ばない歴史があるゲームだからこそだなと思っています。

 あとは、いまだとYouTubeで攻略動画を出してくださっているプレイヤーもすごく多くて、 挑戦するのが怖い人は予習できるというのも大きいですよね。昔は本当に手探りで、“先輩方”が文字で書かれた説明を見ても、なにも分からないという状態だったので……(笑)。なにより「恐怖心を取り除く」ということを、プレイヤーと運営が一丸となってやってくださっている結果だと思います。

――いまではすっかり『FF14』が日常になっているかと思いますが、普段はエオルゼアでどんな過ごされた方をしているのですか?

古宮:担当さんが同席しているなかで言うのはドキドキなんですけど(笑)、私は専業作家なので、原稿作業をしているときはログインしっぱなしなんです。家の中でただずっと立っていて、ちょっと詰まったなというときにパーティー募集を見て、平日の日中や深夜などに募集をかけている初心者さんのパーティーに参加したりするのが、1人でプレイしているときの過ごし方です。夜になるとフレンドが仕事から帰ってきて、「今日疲れたね」「また明日ね」って言葉をかわします。別にどこに一緒に行くわけでもなく、ポツポツ会話をして解散していく。この近すぎず遠すぎない距離が、もう日常に組み込まれている感じですね。

――なにをするでもなく『FF14』の世界に入っておく、という感覚はよく理解できます。

古宮:世界観が綺麗で、景色が綺麗で……どこに行ってもなにをしていても楽しいというのはありますね。あと、自分のキャラを着せ替えたり。 私は自分のキャラに着ぐるみを着せていることが多いんです。メタバースじゃないですけど、もう1つの日常みたいな感じで、気分を切り替えたいときに動いて、街を見に行ったりする。そこでプレイヤーの皆さんがリアルタイムでいろいろなことをやっているのを見るのが、すごく楽しいと感じています。

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