さよならLightningケーブル 数年で”時代遅れ”になったインターフェイスの足跡

 先日発表されたiPhone 15はインターフェイスにUSB-Cを採用、2012年から使われていたLightningインターフェイスと"お別れ"することになった。ここではLightningという規格の足跡と、それに並走して普及していったUSB Type-Cという規格の関わりについて解説する。

日本時間9月13日にiPhone15シリーズの使用が発表され、USB-Cが採用された。

歓迎された「小型・リバーシブル・安全」

 「Lightning」は2012年に発表の『iPhone 5』から採用された規格で、それまでiPhoneが利用していた30ピンの「Dock」を刷新するものだった。DockはiPodとMacを接続するために生まれた規格で、大型で表裏の区別がつきにくいという欠点があったが、Lightningはいずれの問題も解決していた。端子の小型化とリバーシブル接続の実現は、当時のユーザーに好意的に受け入れられた。

 LightningはiPhoneにとって、もう一つ大きな恩恵をもたらした。それは「MFi」の厳格化による社外製品の安全性の担保である。MFiはAppleが実施しているサードパーティ製アクセサリの認証プログラムで、このプログラムに準拠した製品にはAppleの認証を受けているという証明"MFiロゴ"を付与出来る。Dock時代からこの仕組みはあったものの、実際にはAppleの規格を逸脱した社外製サプライが氾濫しており、Lightningはこれに対する抜本的な対策ーー端子部分にチップを内蔵しており、MFiの認証を得られたサードパーティにはこのチップが提供されるーーを取り入れた規格だった。かくして2012年、iPhoneは「安心・安全」で「小型で便利」なインターフェイスを手に入れたのだ。

旧型のiPhoneとLightningケーブル

2年後に現れた大本命「USB Type-C」

 USBはもともとコンピュータにマウスやキーボード、プリンタなどの周辺機器を接続するために策定された規格であるが、取り回しの良さから様々な製品に採用されてきた。このあたりの歴史については割愛するが、海老原 昭氏の執筆した下記の記事が詳しい。

https://realsound.jp/tech/2022/01/post-942938.html

 USBは元来、ホストとデバイスを接続するために生まれた規格であり、これは親機と子機、という関係にも近い。USBケーブルというのはホスト(親機)に刺す端子とデバイス(子機)に刺す端子が別で、給電も一方通行で行われることを想定して作られたものだ。

 しかし、スマートフォンが普及するとこうした原則を適応するには不便で、つまりスマートフォンは充電・通信用にデバイス側の端子を持っているので、同じようにデバイスとして振る舞うカメラやプリンタなどを接続するには、「USB On-The-Go」という仕組みに対応した専用のケーブルを使う必要があった。端子の形もいくつか存在し、加えてこの時期にはデータ通信をオミットした「充電専用USBケーブル」というお行儀の悪いケーブルも流通していた。

 要するにUSBという一つの規格にいろんな用途が求められており、2010年代には大変煩雑な状況が生まれていた。ユーザは多種類のケーブルを使い分けることの煩雑さにうんざりしていた。

 こうした状況を前段として2014年、USB Type-Cが発表された。その仕様は先進的で、端子は小型でリバーシブル接続に対応、そしてホストとデバイスの端子をいずれもUSB Type-Cに置き換えできるという画期的なものだった。またその2年前に策定されていたUSB PD(USBでの大規模な電源供給を実現する規格)にも対応し、すでに幅広く普及していたUSBの利便性を大きく向上することが期待された。「当初の想定活用範囲を越えた大規模な普及に対応する、新たな規格の策定」が実現したのだ。

 USB Type-C策定の翌年である2015年、AppleはUSB Type-Cポートを1機のみ備えるMacBookを発表、翌年2016年にはインターフェイスをUSB Type-C(ThunderBolt 3)に一本化したMacBook Proを発表し、同規格の採用を急速に進めた。他社の例を見るとソニーは2016年、Xperiaのフラッグシップモデル「Xperia XZ」にUSB Type-Cを採用。モバイル、デスクトップを問わずコンピューティングの世界でUSB Type-Cは順調に普及し、2010年代後半にはスマートフォンも、コンピュータも、バッテリも、イヤフォンも、扇風機も1本のケーブルで接続・充電できる時代が到来し、つまりUSB Type-Cは大いに受け入れられた。

Xperia XZ3

 そして数多の周辺機器が「とりあえずUSB Type-Cで繋げば動く」という世界では、USB Type-Cに対応していない機器の不便さが目立つことになる。そう、Lightningだ。誕生から5年ほどの時間でLightningはすでに時代遅れになっており、その後現在に至るまで、Appleの新iPhone発表会が近づくたびに「次こそはUSB Type-C採用か?」と語られるようになってしまったのだ。

 ではなぜ、Appleは2023年まで引っ張ってiPhoneのインターフェイスをLightningに据え置いたのだろうか? そしてなぜ今、Lightningを手放したのだろうか? 次項ではこれを推測してみよう。

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