SNSで1467万回再生された“弁天様”が話題に 注目のメディアアーティスト・志茂浩和が開催する個展『弁天舎ブックフェア展』レポート

神々しい存在感がSNSで話題になった『弁天様』

 そして1番奥に進むと、圧倒的な存在感を放っている“何か”がいる。この作品がきっかけで来場した人も多いだろう。作品名は『弁天様』。4本の手を動かしながら、我々を不思議な空間に招いているようだ。

 志茂氏は、弁天様の背景についても語ってくれた。

 「最初は、神格化されたAI教祖に姿を与えたらどうなるのかと考えたんです。昨年の個展ではそういった作品名で展示していたのですが、それだとなかなか覚えづらかったんです。その後SNSでみんなが存在を知ってくれるようになり、いよいよ名前を改めなければと思い、4本の手を持つ神様が実際にいないか探したんです。すると、インドのサラスヴァティーという神様がいることを知りました。その神様は、日本の弁天様の由来なんだそうです。サラスヴァティーという名前よりは弁天様の方がみんな覚えてくれるのではないかと考え、弁天様と名付けました」

 「『Fakebook』も最初は私の名前で背表紙を書いていたのですが、20冊を超えたあたりから違和感を感じ始め、この本を出版している社名が欲しいと思いました。そういった流れで弁天舎が誕生したんです」

 志茂氏に話をお伺いして、ようやく架空の出版社「弁天舎」の全貌が掴めてきたように感じる。

志茂浩和

 志茂氏は、弁天舎の歴史について来場者に解説を行っていた。弁天舎が設立されたのは、江戸時代末期の1860年。そこから200年後の2060年まで、歴史がすでに存在している。1人の絵師から生まれた印刷会社は、現代を超え、ロボットが勢力を増した未来にはどうなっているのか。弁天舎の歴史に興味が湧いたら、ぜひ『弁天舎二百年史』を購入してみて欲しい。

 『弁天舎二百年史』は、実際に現代に起きている社会問題にも触れつつ、志茂氏の考えが織り込まれた一つの作品となっている。もしかしたら現実になるかもしれないという、フィクションとリアルとSFの狭間を楽しんでほしい。

 架空の出版社である“弁天舎”。不思議な魅力に包まれたその会社は、またどこかで我々の前に姿を現してくれるだろう。

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