異例となる“1年間メンテ”発表の『SAOVS』は生まれ変われるか 前例から考える復権の可能性

過去には延期や一時休止から復権した例も 『SAOVS』は生まれ変われるか

 突然の長期メンテナンスを発表し、話題を集めた『SAOVS』。ゲームカルチャーの歴史を振り返ると、過去には似た事例がいくつもある。

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 ひとつは、2010年9月に「ファイナルファンタジー」シリーズ発のMMORPG第2弾としてサービスが開始となった『FINAL FANTASY XIV』(以下、『FF14』)だ。同タイトルは、パッチ1.0とされる最初のバージョンでシステム的欠陥や深刻なバグなどが多数見つかり、月額課金型でありながら、無料期間の延長といった措置がとられた。2012年1月には、タイトルとして初めて有料サービスがスタートしたが、根本的なUXの向上には至らず、同年末で正式サービスを一時的に終了した。その後、2013年8月にパッチ2.0とされる『FF14 新生エオルゼア』が発売に。1年半以上もの期間を空け、サービスが再開された経緯がある。

 運営・ユーザーともに、前作の影を強く意識しながらの新たな船出となったが、以降の快進撃はゲーム好きならば誰もが知るところだろう。パッチ6.0にあたる最新拡張ディスク『暁月のフィナーレ』の発売時には、売れすぎによるサーバー混雑を回避するため、出荷・販売の停止をおこなった近況もある。

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 もうひとつの例として紹介するのは、Cygamesの開発で2021年2月にサービスが開始されたモバイル向け育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)だ。同タイトルは2016年3月、TVアニメやコミックなどと連動したメディアミックスプロジェクトとして始動したものの、当初2018年冬に設定されていたリリース日を延期。未定期間を挟んだのち、2年以上遅れての配信スタートとなった過去を持つ。

 そのあいだには、本来ゲームと連動するはずだったTVアニメが放送され、一定の評価を獲得した。IP全体をメディアミックスプロジェクトとして見れば、一度重要な歯車の動きが止まってしまった、『SAOVS』に類似する例とも考えられるだろう。

 しかしながら、『ウマ娘』も『FF14』と同様に、サービス開始後には一躍、時のタイトルとなった。2022年1月には、モバイルゲーム市場において大ヒットの指標とされる累計収益10億ドルを、国産のタイトルとしてリリースから過去最速の11ヶ月で達成した。

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 無論、このほかにもさまざまなタイトルが、不具合の頻発などの理由からリリースの延期や、サービスの一時休止といった対応をとってきた。すべてを振り返れば、『FF14』『ウマ娘』のように復権した例の方が稀だろう。当初の期待に応えられず、低調な売上推移となったタイトルも珍しくない。再開の目処が立たず、休止期間中にサービス終了となってしまった例もなかにはある。

 『SAOVS』ははたして、どちらの道をたどるのか。現時点で明かされている情報のみから予測を立てるとするならば、その道のりは厳しいものとなるかもしれない。なぜなら、「長期メンテナンス」というフレーズがテコ入れ程度のニュアンスに聞こえるためだ。

 成功例として紹介した『FF14』『ウマ娘』の例はいずれも、サービス・コンテンツの見直し、リリースの長期延期といった抜本対策によって持ち直した面がある。実際に開発チームがおこなった対応は、“整備”の枠に収まるようなものではなかったはずだ。約1年という長い休止期間が明けたとき、ユーザーの気持ちを獲得できるかは、努力の跡が前向きな変化としてうかがえるかにかかっているのではないだろうか。今回の発表のなかで運営は、「問題が発生しやすい設計となっている基盤部分の作り直し」「お客様に長く楽しんでいただける、新規コンテンツの開発」「プレイ体験を損なう箇所や、分かりづらい表示の一部改善」「一部のゲームルールやキャラクター性能の調整」を中心に、改修をおこなうとしている。

 『SAOVS』は約1年後、原作ファンを満足させるゲームタイトルとして生まれ変わることができるか。今後の動向を見守りたい。

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