「アトリエ」シリーズの原点『マリーのアトリエ』が現代に復刻 リメイク版をいま発売することの意義とは

「アトリエ」シリーズの原点を現代に復刻する意義とは

 広くはRPGに分類される『マリーのアトリエ』だが、一般的な同ジャンルのタイトルとは異なり、ボスを倒すことを最終的なゴールとはしていない。あくまで目的は「高レベルのアイテムを作り出すこと」。そうしたコンセプトを踏まえ、「世界を救うのはもうやめた」という言い得て妙なキャッチコピーも冠された。

 オリジナル版の制作ディレクターを務めた吉池真一氏は、「シミュレーションを土台にRPGの要素を取り入れた作品」と、同タイトルの性質を位置づけている。「ただ敵を倒しレベルを上げるのではなく、調合や採集、討伐といったクエストをおこないながら、錬金術師としてスキルアップを目指していく」そのようなシリーズの特徴ともなっているゲーム性は、第1作『マリーのアトリエ』の時点ですでに確立されていた。

『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』

 また、主人公を取り巻く魅力的なキャラクターたち、彼らによる印象的なイベントシーンなども、第1作から続く「アトリエ」の魅力だ。たとえば、同タイトルにおいて、マリーの師匠という重要な役割を担うイングリドは、温厚かつ聡明な無欠の人間として登場するが、ときに弟子が失敗を犯すと、恐ろしい性格へと豹変する。このようにすべての主要キャラクターには、それぞれに個性的な見た目・性格・生い立ちが用意されている。ストーリーの進行によって主人公との関係性が少しずつ変化していく点もまた、『マリーのアトリエ』、ひいてはすべての「アトリエ」作品に共通する要素と言っていいだろう。

 こうしたエッセンスは、マルチエンディングやスチルによるイベント演出といったアドベンチャー的成分と絡まりあい、シリーズ独自のインプレッションを生み出す。伝統的なRPGのように地道で無骨なものではなく、良い意味でゆるく、人間模様に焦点を当てた「アトリエ」ならではのプレイ感に強く惹かれているファンも多いのではないだろうか。“26年前に発売された古い作品”と侮るなかれ、シリーズの特徴となっている要素の多くは、第1作からの伝統のシステムなのだ。

 そのうえで、現代に『マリーのアトリエ』をリメイクすることの意義を考えるならば、それは「人気シリーズのルーツである作品が、時代を越えてさまざまな人の目に留まること」にほかならない。先にも述べたとおり、オリジナル版の発売からは四半世紀以上もの時が経っている。ゲーム好き、RPG好き、シリーズファンのなかには、発売当時まだ生まれていなかった、もしくは物心がついていなかった層も存在するだろう。

『マリーのアトリエ Remake ~ザールブルグの錬金術士~』

 彼らが“古典”とも言える名作に触れられること、そしてプレイを通じて感性を養っていくことは、これから先のゲーム市場・ゲーム文化の発展と成熟に必要なことである。ゲーム史に名を残していくであろうシリーズの原点を復刻する意味は、この点にこそあるのではないだろうか。

 また、現代は各プレイヤーが実際にソフトを手に取らなかったとしても、ストリーマーの実況・配信を通じて、追体験できる時代である。その意味において、オリジナル版が発売した26年前とは、シーンに対して発売が与える影響も異なるはずだ。

 『マリーのアトリエ Remake』プロデューサーの細井順三氏、ディレクターの勝又祐樹氏は過去のインタビューで、「シリーズの原点としての体験を大切にしながらも、不親切なUI・UXなどを時代に合わせて改善した、意欲的なフルリメイク作品。期待に応えられるタイトルとなった」と回答している。制作陣もまた、「シリーズの原点であること」を意識しながら復刻に臨んだようだ。

 『マリーのアトリエ Remake』は、オリジナル版の評判に恥じないタイトルとなれるか。復刻を意義深いものとできるかは、その出来にかかっているといえる。

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