発表時に賛否両論、実装後も続く議論。『Pokémon GO』“リモートレイドパスの値上げ”の是非は

『Pokémon GO』リモートレイドパス

 『Pokémon GO』の「リモートレイドパス」値上げが話題を呼んでいる。

 いったいなぜ運営はコミュニティに親しまれていたゲーム内アイテムの価格を上げるに至ったのか。その背景に迫るとともに、値上げ、さらにはそれに対する批判の是非を考える。

炎上する「リモートレイドパス」の値上げ。騒動の経緯は?

 事の発端は3月30日、公式が発表したアップデート情報。【『Pokémon GO』の「リモートレイド」に関する最新情報】と題されたリリースのなかで、「リモートレイドパス」の値上げや、システムへの調整などが明かされた。

 「リモートレイドパス」とは、『Pokémon GO』における協力プレイシステム「レイドバトル」に遠隔から参加するためのチケットのようなものだ。同タイトルでは本来、ジムのある場所まで足を運び、「通常パス」「プレミアムバトルパス」を使用することで、レイドバトルに参加できた。しかし、2020年以降の新型コロナウイルスの流行にともなう外出制限や自粛により、従来のシステムでの運用が困難に。公式はそうした状況への対策として、 2020年4月に同チケットを実装。現地に行かなくてもレイドバトルに参加できる環境を整え、コロナ禍でもコミュニティの盛り上がりを維持してきた。

 一方、「リモートレイドパス」は、外出制限や自粛を乗り越えた『Pokémon GO』のプレイヤーにとって、自宅からでもレイドバトルに参加できる“便利なアイテム”と化していた実態もある。特に生活圏に存在するジムやプレイヤーが限られる地方在住者にとっては、本来の意図とは異なる部分で救済措置となっていた。

 そのような背景から、一部のファンが今回のアップデートに紛糾。「改悪」といった強い言葉での、運営に対する批判が相次いでいる状況だ。その後、騒動は「署名活動」「ボイコット」「ストライキ」などに発展。4月4日には、『Pokémon GO』のグローバルコミュニティマネージャーであるTyler氏のもとに殺害予告が届いたことを、Twitterにて本人が明かしている。

削除ではなく、値上げ。その理由は「リモートレイドパス」がもたらした“副産物”に

 『Pokémon GO』は2016年、『Ingress』などの位置情報ゲームで知られる米・Niantic社と、「ポケットモンスター」シリーズの権利を持つ株式会社ポケモンの共同開発のもと、Android/iOS向けにリリースされた。コンセプトは、「プレイヤーが家に閉じこもるのではなく、積極的に外出し、それぞれがともに冒険することで、コミュニケーションを深められるゲーム」。同タイトルに盛り込まれたあらゆる遊び心は、この考え方に根ざしている。その意味において、「リモートレイドパス」の実装は本来のゲーム性を逸脱するものであり、社会情勢を考慮した“暫定的な措置”だったと言えるだろう。憶測の域を出ないが、おそらく運営は、いつかはフェードアウトすることを前提として、このシステムを取り入れたのではないだろうか。

 ご存知のとおり、2020年以降、私たちの暮らしを激変させたコロナ禍は、少しずつ収束の気配を見せつつある。日本国内では2023年3月、長く続いてきた外出時におけるマスク着用の原則が緩和され、素顔で街を歩く人を見る機会も多くなった。『Pokémon GO』における「リモートレイドパス」の値上げは、潮時を見据えての行動の一端と考えられはしないだろうか。

 今回のアップデートをめぐるプレイヤーたちの反応のなかには、そうした『Pokémon GO』のスタンスを理解しつつ、「それならば値上げといった中途半端な対応ではなく、いっそリモートレイドパスを削除すればいい」という意見もあった。もしかすると、運営も実装時には、最終的に削除することを考えていたかもしれない。

 しかしながら、コロナ禍における外出制限・自粛への対策として実装された同チケットは、当初は想定されていなかった可能性のある“副産物”を生み出した。それはなにか。物理的な距離を超えたユーザー同士のコミュニケーションだ。『Pokémon GO』が本来のコンセプトどおりにリアルにこだわっていたとしたら、特定の地方に住むプレイヤーとそれ以外、さらには日本国内のプレイヤーと海外のプレイヤーのあいだにはコミュニケーションが生まれなかっただろう。「朝起きて、日中働き、夜眠る」といった日本では多数派であろう生活をしていないプレイヤーも、世界とつながることで自身の活動時間のなかで活性化するレイドバトルに参加できた。そうしたコミュニティの状況が『Pokémon GO』にとって有意義だと判断したからこそ、削除ではなく、値上げという対応になったのではないだろうか。

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