『Weekly Virtual News』(2023年2月27日号)

ゲーマーに『PlayStation VR2』はハマるか? 「バーチャルマーケット」のリアルイベントやcluster結婚式など、新たな試みにも注目

 2月22日、『PlayStation VR2』がついに発売された。初代『PlayStation VR』が2016年10月発売だったので、およそ6年越しの新型機種となる。

迫力あふれる新世界に飛び込もう | PS VR2

 評判はおおむね上々の様子だ。『Horizon Call of the Mountain』で体験できる雄大な世界や、『グランツーリスモ7』のレーシング体験に対して、特に好評の声を聞く。VR専用タイトルではなく、「大作ゲームのVRモード」という切り口は、「ゲームの世界に入り込む」というゲーマーのプリミティブな欲求に最も深く突き刺さるのではと、個人的には感じている。これまでのVRデバイスとは異なる訴求ルートである、ということだ。

 筆者も以前、『PlayStation VR2』の実機を体験したことがあるが、デバイスそのものも初代から順当進化しているのはたしかだ。アイトラッキング(視線追跡)による「フォービエイテッドレンダリング」(※視野の中心を高画質に、外側を低画質に描画する技術)採用や、握り込みやすいコントローラー、コントローラーとヘッドセット本体への振動機構など、没入度と最適化の向上のためにブラッシュアップされている。

 セットアップが簡単になったのも大きい。ヘッドセットと『PlayStation 5』をケーブル1本でつなぐだけだ。価格こそ懸念点だったが、上記のような魅力に惹かれて手に取る人は多いだろう。ゲーミングPCと対応ヘッドセットを合わせて買うよりも、『PlayStation 5』と『PlayStation VR2』をセットで買った方が安価だ。

Horizon Call of the Mountain - Ozzy Osbourne vs. Stormbird | PS VR2 Games

 余談だが、ミュージシャンのオジー・オズボーンが『PlayStation VR2』を体験するという、珍妙なPVが登場している。直近のオジー・オズボーンはメタバースプラットフォームの『Decentraland』にも出演しており、”新しいもの”好きである可能性もあるが、御年74歳の彼のような世代でも楽しめるポップなデバイスとして売り込むつもりなのかもしれない。なににせよ、初代が世に出たときのような「VRの熱気」がまた訪れるだろうか。

 入口に近い『PlayStation VR2』の話題と合わせて、VRの深い領域にも目を向けている。先週はちょうど、VRイベント『バーチャルマーケット2023 Summer』の開催が発表された。いまや老舗VRイベントの「バーチャルマーケット」だが、今回はリアルイベントの併開催という新たな試みが行われる。

 リアルイベントは、会期終盤の7月29日と7月30日に、秋葉原にて開催が予定されている。メタバース体験コーナーなど、様々な催しが企画されたイベントとなるようだ。主催のHIKKYは、昨年末の記者会見で「現実にも進出する」という方向性を打ち出している。ユーザーのオフ会が現実の酒場で行われるように、メタバースを「バーチャルの内側」で閉じないようにする動きも、今年は増えていくだろう。

 国産メタバースの『cluster』では、CEOの加藤直人氏の結婚式が開催された。同氏はマイクロソフトの千代田まどか (ちょまど)氏との入籍を先日発表したばかり。その二人の結婚式を『cluster』上でもやろうという試みである。

 「メタバース空間での婚礼イベント」は、これまでもエンドユーザーレベルで開催された話を聞く。その上でこの結婚式は「誰でも参加OK」となっていたのが特徴的といえるだろう。オンラインで、誰もがどこからでも参列可能な結婚式というのはなかなかにおもしろい。同時に、結婚というプライベートな祝賀を、パブリックなイベントに昇華できるというのは、「場」として機能するメタバースの持つ可能性の一端かもしれない。

 より定着しつつあるメタバースの活用として、アート鑑賞がある。絵画や彫像といった現実でもおなじみな芸術作品や、3Dイラストやインタラクティブなインスタレーションなど、様々なアート展示の場として事例が増えつつある。

 その最新事例のひとつとして、イラストと“イラストの世界観”を同時体験できるVRChatワールド「Exhibition˸ EXFLAT」を紹介したい。イラストレーターのshi-ro氏の個展であり、同氏が2020年から2022年にかけて描いた連作イラストが展示されている。

 注目すべきは、それぞれのイラストの展示空間が、イラストの背景世界そのものである点だ。美術館を描くイラストならば美術館が、アトリエを描くイラストならばアトリエが、そのまま立体となって再現されており、イラストを鑑賞しながらイラストの中の世界に入っていく体験ができる。“この絵が切り取った1シーン”をVRで目の当たりにすると、自分もその絵の世界の住人になれたような感触が味わえるはずだ。

 そして展示作品は、絵を描くことに人生を捧げた、二人の女性の生き様を追いかける内容になっている。イラスト鑑賞と、架空の人物の生涯を追体験する没入コンテンツが共存した、興味深い展示手法である。アート展示・鑑賞の新たな形として、ぜひいろいろな人に体験してほしいところだ。

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