国内外で急上昇する“メタバースの総人口” バーチャル美少女ねむが各種統計データをもとに解説
コロナ禍とVRゴーグルの低価格化を受けて、近年「メタバース」として注目の集まる世界最大のソーシャルVR「VRChat」のユーザー数が急速に拡大している。ソーシャルVRというのは、VRゴーグルで没入しオンラインの三次元仮想空間でアバターの姿でコミュニケーションができるサービスの総称のことだ。
VRChatは年末年始に世界中のユーザーが集まり、瞬間最大同時アクセスが新記録を更新することが通例なのだが、今年はいったいどうなったのだろうか。また、ソーシャルVR全体のユーザー数はどの程度で、そのうち日本人はどれくらいいるのだろうか。
本記事では、メタバース解説書『メタバース進化論(技術評論社)』の著者である「バーチャル美少女ねむ」が各種統計データをまとめて考察していく。
VRChatの瞬間最大同時アクセス、2023元旦に新記録「9.2万人」を突破!
スウェーデンのVRChatユーザーFoorack(風楽)氏が主導し、VRChatのAPI情報を記録しているコミュニティプロジェクト「VRChat API Metrics」のデータによると、年末年始のVRChatの瞬間最大同時アクセスは2023年1月1日14:56に「92,319人」に達した。
2022年の年末年始における記録だった89,300人を上回り、史上最高値を更新した。(Foorack氏にもこちらが最高値である旨を確認していただいた)。また、VRChatはSteam(PCVRとデスクトップ)とQuest単体でのアクセスに対応しているが、そのうちのちょうど半数の49.9%(46,044人)がSteamユーザーによるアクセスだった。
〈出典:昨年2022年の年末年始における瞬間最大同時アクセス数は「89,300」だった。「New World Notes: VRChat User Concurrency Hit Nearly 90,000 Last New Year's Eve!」〉
Quest単体を除き、Steamによるアクセスだけに絞ると、全体の史上最高値更新からわずか5分後、2023年1月1日15:01にこちらも46,663人の史上最高値を達成している。
なお、Steam側の公開している別データ(VRChat - Steam Charts)を見ても、VRChatの瞬間最大同時アクセスが最高値を記録したのが2023年1月1日の「46,509」とほぼ同じ値になっていることから、かなり正確な数字と言えそうだ。
コロナ禍とQuest2登場でVRChatのユーザー数は5倍以上に拡大
過去5年間におけるVRChatの同時アクセス数の推移を見ると、2019年頃は平均1万人程度だったのが、2022年は5~7万人程度と5倍以上に急拡大しているのが見てとれる。背景としては、2020年からのコロナ禍拡大と、2020年10月に発売したVRゴーグル「Meta Quest2」の爆発的な普及が考えられる。図中の青線がQuest単体によるアクセスを含んだもので、Quest2の発売後爆発的に増大し、現在は全体の約半数を占めている。
「Quest2」は「6DoF+PCVR対応のフルのVR体験」が可能な4K解像度の高性能VRゴーグルでありながら、それまでの常識を根底から覆す超低価格でVRを大きく普及させた。Metaは出荷台数を公開していないが、2022年6月時点でなんと「1,500万台」という推計もある。
〈参考:新世代VRゴーグル分類マップ&解説【PICO4・Quest Pro・VIVE XR Elite・MeganeX】〉
なお、2022年は7~8月にかけてSteamによるアクセスのみ大きく数字が落ち込んでいるが、これは7月27日にVRChatがMOD(改造クライアント)撲滅のために「Easy Anti Cheat(EAC)」というセキュリティを導入したことに反対し、一部ユーザーが別のソーシャルVRに移動したことが理由だと考えられる。
〈参考:VRChatのセキュリティアップデートに、一部ユーザーが猛反発 原因はなにか? - MoguLive〉
今回なんとか最高値を更新したものの、昨年と比べて大きく数字が伸びなかったのは、これによるユーザー減少が影響していそうだ。